始まり
俺は田中タイチ、高校卒業したての18歳
4月からまた大学に通う予定だが、まだ3月中旬でやる事が無いから久しぶりに昔やりまくったRPG「ドリームアイランド」をやろうとゲーム機を押入れから出してきて立ち上げた。
「久しぶりだからセーブデータ無いな。最初からやるか!」
独り言を言いながらタイトル画面のスタートボタンを押した。
すると突然、画面から魔法陣の様なのが飛び出してきて俺の体に触れた途端視界が真っ暗になった。
何事かと周りを見渡すと少し離れた場所に光が差し込んでいるのが見える。
とりあえず光に向かって歩いていくと上から光が差し込んだ空間に魔法陣があった。
よく見ると魔法陣は薄らと光っていて赤、青、緑、橙、白、黒と色を変えて光っていた。
そこで思い出す、ゲームの最初に属性を選択するのだが属性が色分けされているのでは無いかと。
だとするならば選択肢は一つ、黒しか無い!
黒の魔法陣に切り替わった時に上に乗ると足元から眩しい光が出た。
「うっ!」
と言い目を閉じた。
少しして目を開けると知らない場所、どこかの町の広場に立っていた。
周りを見渡すと西洋風なレンガの建物が所狭しと建っている。
「ここは…始まりの町?」
そう、ゲームのスタート地点に降り立っていた。
キョロキョロと辺りを見ていると周りの人から
「変わった服装ね〜。」
「何処から来たのかしら?」
と声が聞こえ、不思議そうな視線を感じるので自分を見てみると、上下ジャージ姿のままだった。
あまりにも場違いな服装で視線を集めてたのに気付いて慌てて路地裏に隠れた。
「これゲームの世界に来ちゃってるよな?帰る方法分からないし、町を歩くにも悪目立ちするし、どうしよう…」
ぶつぶつ独り言を言ってると
「おい。」
と肩を叩かれて振り向くと
「俺ん家の裏で何やってんだ!」
2メートルはありそうな坊主頭のガタイの良い40代位のオヤジが居た。
俺「あっ、いゃ、その〜…」
オヤジ「名前は?」
俺「タイチです」
オヤジ「何処から来た?」
俺「千葉からですが…」
オヤジ「チバ?聞いた事無い場所だなぁ?んで、何やってんだ?」
俺「突然ここに来てしまってどうすれば良いか迷ってしまって…」
オヤジ「…」
オヤジは顰めつった顔で黙りこみ、俺を頭から脚先まで睨んだ後しばらくして
オヤジ「とりあえず家に入れ。」
と言い横にあった扉を開けた。
俺「失礼します。」
と言い家に入ると部屋の真ん中に4人掛けのテーブルがあり、脇に調理窯と鍋、包丁等が置いてあった。
オヤジ「とりあえずそこに座れ。俺はドリス、冒険者をやっている。タイチ、お前はどうやってこの町に来たんだ?」
テーブルの椅子を指差して質問された。
俺「違います。突然魔法陣が現れて近くの広場に飛ばされたみたいで…自分でも良くわからないんです。」
勧められた椅子に座りながらそう答えると
ドリス「ふぅ〜ん。だから異世界人なんてジョブなのか。御伽話でしか聞いた事無いジョブだからお前見た時はビックリしたけど、その格好と話を聞いた限り間違いないみたいだな。」
俺「えっ?異世界人?ジョブ?」
慌てて聞き返すと
ドリス「あぁ、俺はスキルで[鑑定(弱)]を持ってるからな!」
俺「スキル?鑑定?あっ!」
そう、この世界はゲームと同じジョブやスキルがある事を思い出し納得した。
ドリスは水の入ったコップを俺の前に置いて向かいの椅子に座りながら
ドリス「こっちに飛ばされたばかりじゃ何にも分からないだろ?」
と、この世界について教えてくれた。
大神ソーマが世界を創造し、母神ユリスが世界に命を与えた。
ソーマが亡くなる直前に子供である6体の神々がこの世界の守護を任された。
火神 カイル
水神 ミーア
風神 フルス
土神 ドミナ
光神 コリン
闇神 ヨリン
残されたユリスはソーマが亡くなると哀しみに耐えきれず世界を破滅させようと暴れ出した。
子供達6体の神々は暴れるユリスを何とか封印することが出来たが、ユリスから放たれる邪気だけは抑える事が出来なかった。
ユリスの邪気は世界に蔓延し、この世界を少しずつ破滅へと進ませていた。
そこで6体の神々は邪気を抑える手段として異空間に邪気を逃した事で今の平和があるとの事。
ただ、異空間とのゲートに異世界人が紛れ込む事があるそうで、数年に一度位、世界の何処かに異世界人が現れるらしい。
殆どの異世界人は現れて直ぐに貴族に引き取られる事が多いので滅多に見かけないが、他国で大商人になっているなんて話もあるそうだ。
また、異世界人は平和の被害者だから無碍に扱わない様に伝承されている。
んで、ドリスが見ず知らずの俺に警戒心無く接してくるのは伝承のお陰でとの事。
そして今いるこの町の名前はアロール、6つの国があるこの世界で一番小さな国、イルムス王国の町。
この世界は6ヶ月で1年だが、1ヶ月が地球の2ヶ月相当になる。ただ、一週間は7日なので日数は地球と同じだ。
今は王国暦220年、桜月との事。
俺「220年?222年じゃ無い?」
ドリス「ああ、220年だぞ。」
ゲームスタートより2年早かったので聞き直してしまった。
そして、ゲームの世界と同じならと思いゲームシステム的な事も確認しようと質問する。
俺「そうなんだ…。ところで、自分のジョブとかはどうやって確認するの?」
ドリス「ん?何かジョブに就いてれば意識すると確認できるはずだが…。」
俺「意識?…おっ!!」
ステータスを意識したら色々出てきた。
名前:タイチ 性別:男 種族:人族 属性:闇
ジョブ:異世界人
レベル:1(1)
力:1
素早さ:1
体力:1
智慧:2
器用:1
運:1
HP:5
MP:1
俺「ん〜。ゲームに無いジョブだし、レベル上限1だし、早々に転職しないとだなぁ。」
ドリス「転職?タイチは何になりたいんだ?」
俺「魔法使いだな!闇属性だし。」
ドリス「何?闇属性で魔法使いだと?そりゃちと厳しいと思うぞ!」
俺「ん??そうなの?」
ドリス「闇の魔法使いはスキルがなぁ…。闇属性なら戦士や軽業師とかの方がお勧めだけどな。」
そう、このゲームの序盤は闇属性だと物理攻撃や斥候系の方が進めやすいのだが転職していくにつれ属性の恩恵が無くなっていくが魔法職は逆なのだ。
闇の魔法職は大器晩成なのである。
ドリスにジョブについて詳しく聞いてみるとゲームにあるジョブと同じの様だが、殆どの人が中級職までしか転職していない。
その上の上級職は御伽話に出てくる位で、最上級職については話にも出てこなかった。
ドリス「とりあえず転職は飯食ってからにするか!」
と言われ、少しすると大きなパンと目玉焼きが出てきた。
全部食べ終わると、ドリスは奥の部屋に行ってガサガサ物音がした後戻ってきて
ドリス「冒険者ギルドに向かうがその服だと異世界人丸わかりだからこの服着ろ!」
と手に持っている服を俺に渡してきた。
俺はお礼を言った後にジャージから冒険者風な服に着替えたが、サイズが合わないから袖や裾を捲って何とか格好を整えるのに時間が掛かった。
ドリス「じゃあ行くか!」
俺「うん、よろしくお願いします。」
と言って家を出てドリスの後について行った。