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勘違いは相乗効果で加速する

(他者視点)


(リヒター公爵)

「ふぅ、、、」

気怠げなため息をついているのはヴィクトリアの父、リヒター公爵である。ヴィクトリアにそっくりな外見をしていて、スッキリした鼻筋に澄んだ青色の瞳をしている。貴族に多い金の髪は黄金のような強い色合いをしていた。まごうことなき美丈夫である。


「またヴィクトリア様ですか?」


宰相をしている父を持ち、父の名声に埋もれるかと思いきや、、、社交界で燦然と輝く功績を十六歳という若さで手にしているヴィクトリアは不思議と父親にとっては悩みの種らしい。


「ヴィクトリア基金が飽和するほど有り余ってな。娘にとっては使えば使うほど金というものは増えるらしい。」


「優れた人材を全国からスカウトしてサポートしたり雇ったりしているんですよね。しかも彼女のお小遣いから始まったとか。」


「優秀な人材とのコネクションを作れと学院に通う六歳の娘にいったら、何故かこのようなことに、、、」


公爵は項垂れていった。

小遣いの金を他者の教育に使うと言われた時は、慈善事業も貴族の役目だと感心しただけだったが、そういう次元にあの娘が収まるはずがなかった。

老若男女、身分問わず、四方八方から優秀な人材を発掘し、育て、彼女自身の子飼いにしているのだ。

どうやったらあんなことできるんだ。



「大きな声では言えませんが、どうして王太子の求婚を断ったんですか?あの時はあまりに貴方が落ち込みすぎて聞けなかったのですけれど、、」


部下はとてもじゃないが尋ねられなかったことを、二年越しに疲れた顔をした上司についに聞いた。


「私が宰相としての三大政策の一つで、若年の女性の婚約と結婚について問題提起していたことを知っているな?」


「もちろんです。私も関わらせていただいたことですから。」


「娘もそれを知っていたし、彼女が六歳で学院に上がるときに私が彼女にこう言ったんだ。

『私はこの政策を成功させるために、私の子供たちには婚約を十八歳まで結ばせない。若年での婚約は、女性の社会進出から破棄されるリスクが高まってるし、出産はある程度の年齢までは控えたほうが良いと思っているからだ。学園に入ると様々な誘い文句があるかもしれないが、時期と相手は私が決める。相手からきたものは断固として断るように。勝手に諾と返事をしないようにしなさい。』

そして彼女は承知しましたと端的に答えてくれた」


「その話の流れヤバそうなんですけど待ってください。」


「まぁここまで聞いたのだから聞け。

彼女は我が家で私たち家族の前で王太子にプロポーズされた時に私の方をチラッと確認したのだ。私は長女に続き、娘がまた嫁に行ってしまうと悲しむ父親の責務として寂しい顔をして上を向いた。彼女は私の方を向いて頷いてからこう返したのだ。

『断固としてお断りします。』と。

その場は凍りついた。そしてその上シスコンの我が長子が訂正できないように重ねてこう言った。

『王太子殿下、リヒター公爵家は宰相の父を筆頭に若年時の婚約と結婚に反対の立場をとっております。条件の良い話があったからといって手のひらを返すわけにはいきません。我が派閥のものに示しがつかず、家の名誉を汚すことになります。それをご承知の上での申し出でしょうか。』

王太子殿下はそのようなつもりはなかった。すまなかったという旨を仰せになり意気消沈してお帰りになった。」


「それで、ヴィクトリア様は?」


「いつも通り静かに自分の部屋に去っていった。」


「みんなの憧れ金の王子様に対してもいつも通りですね。流石みんなの憧れの麗しき女傑ですね。」


「娘の幸せを邪魔したかと私も焦った。そのため彼女に尋ねたのだ。王太子をどう思っているかと。

娘は我が家よりキラキラしてて目に痛いと答えた。王家は目も輝く金色だからな。」


「つまり婉曲的になんとも思ってないと?」


「そうみたいだ。あとは、やはり今王家と繋がるのは時期じゃないと思っていたのだろう。好きでも嫌いでもないと回答することで、二年後に選択肢を残したようだ。」


「相変わらず流石ですね。使用人たちの間で彼女の世話の取り合いもあるとか?」


「困ったことだがな。まぁ仕方ない。娘は天性の人たらしだからな。」


「今度は時期外れの転入生の世話まで買って出たとか。また何かやってくれるでしょうか。」


ワクワクしたような部下の声に、疲弊した宰相はかもな、、と小さく答えた。

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