表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/70

エスコートは誰が?

「ヴィー、お願いがあるのだけど」


朝早く誰も居ない教室でいつものようにヴィクトリアが基金の仕事と勉強をしていると、珍しく早くに教室に来たアレックスに声を掛けられた。

その言葉にヴィクトリアは机から顔を上げて答えた。


「お願いとは、何でしょうか?」


息を呑み、アレックスは勇気を出して聞いた。


「三月の王宮での夜会で良ければ君をエスコートさせてくれないか?」


ヴィクトリアは少し考え込んだ。いつも通りウィリアムと行くつもりだったが、三月になったらもう何が起こっても可笑しくない。

そしてリヒター公爵家はガチガチの王室派だ。

彼の身の安全の為にも、リヒター公爵がアレックスに着いていると示す事は、政治的な災厄だった場合は一定の抑止力にはなるかもしれない。いざとなれば自分も盾にはなるだろう。



「喜んで。盾にはなれると思います」


アレックスは一瞬了承を貰って喜んだが、盾という発言で何か勘違いされていることに感付き訂正しようとしたものの、もうヴィクトリアは机の上の山積みの書類に集中しているようだった。


まぁヴィーらしいかと少し微笑みながらも、ドレスを後日送ると後で伝えようとアレックスは考えた。

そしてポケットの中にあるヴィクトリアから武術大会の時にもらった精緻な加護の紋様が刺繍してあるお守りを握りしめ、アレックスは三月への恐れを飲み込んだ。



ヴィクトリアはお昼にいつも通り外部との打ち合わせを終えた後、横着して普段は通らない中庭を横切って教室に向かうと、周りから見え難い所で再びローラが王弟キールスに言い寄られていた。

暫く見かけないと思ったらまたローラに近づくなんて、やっぱり彼女の素性を知っているのかもしれないとヴィクトリアは強く警戒した。王位を狙って、隣国を取り込もうと思っているのかも知れない。


またローラに声を掛けると、逃げて行くかと思われたキールスがニヤリと不敵な笑みを残して去って行った。

不吉な予感がしたが顔色の悪いローラに声を掛けると、何でもないと言われた為、後で学園長に話を通しておこうと考えながら二人で教室に戻った。


教室に戻ると王室主催のパーティーの話題で賑わっていた。クラスメイト達はヴィクトリアに誰と行くのか聞きたそうにしていたが、ヴィクトリアは気づかずローラの背を気遣うように撫で、席に座らせた。



アレックスにも一応キールスの事を知らせておこうと彼の席に歩み寄ると、教室のザワザワとした喧騒が大きくなる。不思議に思いながら何故かこちらを見て照れているアレックスに話し掛けた。


「少しご相談があるのですが、授業後にお時間ありますか?」


「勿論!!」


「レスターも一緒に」


アレックスは急激にテンションを下げたが、それでもヴィクトリアに呼び出されて嬉しいと見えない尻尾を振った。

周囲はハラハラしながら成り行きを見守った。



放課後になり、いつも通り教室に来たウィリアムも連れて談話室に入り、キールスについて話をした。


すると全員がこの前ローラに声を掛けていたと聞いた時は、あの女好きがまたやっていると軽く見ていたものの、やはり二回目となると怪しく思ったようだった。

特にアレックスは、学園に来る事の少なかったキールスがわざわざ伯爵家の三女に言い寄ることに強い疑心を抱いたようだった。

キールスは元々は婚約者として強力な公爵家の娘であるヴィクトリアを狙っていた。だが次第に自分より遥かに優秀なヴィクトリアを恐れ、敵視するようになった。

そして次点のサルコーニ公爵令嬢と婚約を早々に結んだのだ。その為一線は守りながら遊んでいたようだが、 最近はサルコーニ公爵令嬢を蔑ろにし過ぎている。


三人の不審に思う様子に、やはりローラの素性をこの三人ですら知らないのだろうと思った。国の上層部は知っていても、学園内に通う身の者にはできる限り隣国の意向を汲み、敢えて知らされていないんだろう。学園長にローラの事を頼まれた身として、キールスが隣国の筆頭公爵家に目を付けた可能性があるという危険な状況である事から、自分の責任を持ってこの三人には素性を知らせようと決断した。


「ローラの琥珀色の瞳を見て何か思い出しませんか?」


すると三人がハッとしてカーティオ国かと口を揃えて言った。

青褪めながらアレックスが言った。


「グラード公爵はかなり気性が激しいと聞く。

キールスの愚行に巻き込んだら相当不味いんじゃないか?」


沈黙が襲ったが、気を取り直してヴィクトリアが言った。


「少なくとも次の王家主催の夜会で何かされては誤魔化しきれません。

彼に対抗できるお兄様がエスコートするしかありませんね。

アレクだとそれこそグラード公爵が勝手な事をと文句をつけるかもしれませんし、レスターだとキールス様に強く出れません」


それを聞き絶望したようにウィリアムが言った。


「リアのエスコートが出来ないなんて!

しかも当日も変わらず父上は忙しいだろう。

三月に入っているからリアを守れるような者が側にいないと不安だ」


その言葉に爽やかに笑ってアレクが答えた。


「ヴィーは責任を持って私がエスコートさせていただきます。要人は出来る限り纏まって行動するようにと指示が出ていますし、私には夜会でも護衛が付きますので、ご安心ください。

ヴィー、ドレスなどの装飾品は私に任せてくれ。

エスコートを受けてくれたお礼だと思って受け取ってくれると嬉しい」


ウィリアムはヴィクトリアがエスコートを受けたと聞き、顎が外れそうになっている。


ヴィクトリアはこくりと頷いて了承の意を示した。


レスターは婚約者も居らず、いつも通りアレックスの側で不測の事態に備えるつもりではあったが、美女とかわい子ちゃんのエスコートは羨ましいと密かにしょんぼりした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ