嘘でしょ、、、?
そんな毒蜂事件があった次の日の朝にヴィクトリアが登校していると、校門から教室までの間が異常にザワザワしている。騒がしいなと思いながらも、いつもの事かと歩いていると前に障害が現れた。
「貴女、今度は武術大会に出場するらしいわね。
どれだけ目立ちたいのかしら?」
「本当に。今まで出た事がなかったのにいきなり何なのかしら?
もしかして優勝してアレックス様に愛を告げようとか考えていらっしゃるの?」
何故かロマンチックな事を言いながら前に立っているけど内容から判断して自分に話しかけている訳ではないだろうと、羽の生えているローラの姉1・2に会釈してさっさと避けて通ろうとすると、何故か呼び止められた。
「待って待って!貴女に言っているのよ!ヴィクトリア様!」
立ち止まり首を傾げ〝何でしょう?″と話を聞く体制になると、二人に信じられない事を口々に言われてしまった。
「武術大会の弓部門に出るんでしょう?せいぜいリヒター公爵家の汚点にならないように気をつけることね。」
「お兄様は騎馬部門で毎年優勝していらっしゃるのだから、貴女も優勝しないと無様よね」
ヴィクトリアは何を言われているのか理解したくないため理解できなかったが、リヒター公爵家の恥になる事はできないと、反射的に会釈しながら答えた。
「ご心配なく。
リヒター公爵家に恥じないよう、全力で挑ませて頂きます」
それだけ言い切って教室に足を早めた。
教室に着き、やっぱり先程の言葉は聞き間違えだったのかもと自分に言い聞かせながら、現実逃避をするように机で朝のルーティンをこなす。
するとキャサリンとローラが席に来た。いつのまに仲良くなったのだろうと思っていると、お守りを手渡された。
「ヴィクトリア様。
武術大会に参加なさるとは思っておらず、前もってお守りをお作りする事が叶いませんでした。
ですが昨日二人で協力して出来る限りの加護の刺繍を致しましたので良かったら受け取ってください。
勿論当日はお持ちにならなくて結構です。お気持ちを受け取っていただきたかっただけなので、お心の中の人のお守りを大会にはお持ち下さいませ」
武術大会で出場する者に周りの者は出来るだけ早めにお守りを渡しておき、出場者は当日にたった一つのお守りのみを身につけて出場するという風習がある。
これは騎士が出陣する時に持ち歩けるものは限られるため、出征が決まると安全を祈るお守りを家族は直ぐに渡しておいて、当日は本人がお守りを一つだけ身に付けて出立するという慣習に因んでいる。
それをきっかけにしたように周りから様々なお守りが渡されて、ヴィクトリアの机に積まれていく。
その量が増えるたびにヴィクトリアの額からは汗が流れていく。
何故か教室に続々と下級生と上級生が集まってきた。
出来るだけ早くお守りを渡す事が美徳とされているため、速攻で作った事が分かるものから、芸術品のような出来栄えの物まで集まって来る。
あまりの状況に蒼白になりながらも口元が笑みの形に引き攣る。
トドメを刺す様にアレックスが照れ臭そうな顔をしながら、まさか今年はヴィーも出るなんてなとかなり美しい布を使ったお守りっぽい物をそっと手渡してきた。
初めてで中々難しくてと、絆創膏が何枚も貼られている手を照れ臭そうに見せるアレックスに引き攣った笑い顔のまま〝ありがとう″とだけ告げた。




