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蜂の復讐

ヴィクトリアには例年全く関係のない事だが、そろそろ王立学園では武術大会が開かれる。槍部門や剣部門、騎馬部門、弓部門に分かれて腕に覚えのある生徒達が競うのだ。男女共に希望者が出場でき、かなりの割合の人間が参加する。

貴族の責務の一つとして領地を守る事があり、経済力や武力も統治者として重要な能力であると見做されている事から、皆が積極的に身体を鍛えている。


ヴィクトリアも幼少期に剣を振るったり弓矢を持ったりしたが、己を傷付けるのみと判断されてしまったようで、他の手段で領地に寄与するよう父に通達されていた。

それもあってヴィクトリアは人材育成や領地整備、外交などに力を入れている。


諦め悪く、その後もたまに領地ではヒューバートに木刀を振るうのを指導してもらったりしたが、あまりの運動音痴に流石の彼も顔を青くし、お願いだから辞めてくださいと言われてしまった。


そのためヴィクトリアはこの時期の盛り上がりに虚無の顔をしてスルーする事が常である。ホームルームで参加の申し込みをしている人々を尻目にボケッとしていた。

その時突然、窓の外から蜂が入ってきて場が騒然とした。騒動に遅れて気付いたヴィクトリアがうわっと席から立ち上がると、急いだためずるっと転けそうになり机に手をつき机上の物を崩した。すると何故か教科書が空を飛んでいった。

危なかったと恥ずかしがりながら教科書を取りに行こうとすると、周りが静まっていることに気づいた。

あれ?と思いながら教科書を拾いに行くと、周りから拍手が飛んだ。


「流石ヴィクトリア様だ!」


「今年の弓部門の優勝者は決まったわね。

とうとうヴィクトリア様の勇姿が見られるのね」


「ご自分の教科書を使って皆を守ってくれるとは。

あの蜂は猛毒を持ち凶暴である為、国では駆除対象なのにヴィクトリア様はいつも通り冷静で凄いな」


ヴィクトリアはその会話に嫌な予感を感じながらも自分の教科書をそっと拾った。そのまま教科書の裏を見る事なく〝綺麗にしてきますわ″と告げ、教室を後にした。

皆は尊敬の眼差しで彼女の後ろ姿を見送り、口々に賞賛をした。

なんとか苦心して教科書の復活を果たし、何事もなかったかの様な顔をしてに教室に戻って来るとクリストフ先生が笑顔で出迎えてくれた。


「流石だな。もう申し込みはしておいた。

いつも周りに遠慮しているようだったからな。

今年はしっかりと実力を発揮してくれ」


何言っているのかなこのイケメンと思ったけど、眼福なのでにっこり笑って〝勿論です″と、とりあえず答えた。

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