教室にて
結局ペンを購入する事は出来なかった。
学内新聞の速報を配布まで見守り、何故か購買に行けないまま始業ギリギリになってしまった。
意気消沈しながら教室に帰ると、アレックスが心配そうに声をかけてきた。
「朝は大丈夫だったかい?
レスターが学内新聞の号外を見せてくれたが、またあの者が迷惑をかけたようだね。」
「全く問題ないですわ。
それより、アレクのペンを一つお借りしてもよろしいですか?
書く物を忘れてしまって、、、」
照れながら自分のペンを借りたいというヴィクトリアに口をポカンと開けながらもアレックスは直ぐ様ペンを渡した。
最近の学園では、気になる人のペンを借りるという行為で奥ゆかしくアピールする事が流行っている。アレックスは〝とうとう自分にも春が来た!今度自分もヴィクトリアに借りようかな″と感動した。
その姿を見ていた周りは〝やっとヴィクトリア様がアレックス様に公然と好意を返していらっしゃる″とドキドキと二人を応援していた。
始業までにペンを手に入れたヴィクトリアは安心したように頬を染め〝アレクがいて良かった″と嬉しそうに笑った。
その笑顔に周りは全員撃ち抜かれ、一生ヴィクトリア様に着いていきますと感涙した。
アレックスは衝撃で再び硬直し、クリストフ先生がホームルームの開始を呼びかけるまで固まっていた。