ルビーを輝かせるのは
(他者視点)
(キャサリン)
ヴィクトリアの美しい後ろ姿をただ見ることしかできない無能な自分が恨めしい。
だが、彼女に身を案じてもらい、伯爵令嬢でしかない自分を王弟の暴挙に巻き込まないようにと気を遣ってもらえた事を喜んでしまう卑賤な自分がいる。
彼女はいつも揺るぎなく、圧倒的な美しさを持っている。
ヴィクトリア様と初めて会ったのは五歳の時だった。
王立学園に入る前、学園での彼女の小間使いの役目を期待されて初めてお会いした時、彼女は開口一番に私にこう言った。
「強い目をしている」
私はそう言われて俯いていた顔をハッと上げて、彼女の澄んだ青い瞳を見つめた。
私はグッドナー伯爵家の末っ子で、武人を多く輩出している我が家では少し浮いていた。
大事にはしてもらっていたが、細く小さく弱々しく生まれた自分の事をどう扱ったら良いのか周りには躊躇われているようだった。よく家族からは私が何かしようとすると〝貴女はか弱いのだから″と止められていた。
そんな状況を辛く感じながらも、仕方ないと萎縮してしまっていた自分に初めて〝強い″と声をかけてくれたのがヴィクトリア様だった。
父がそう言ってくれたヴィクトリア様に対して〝いえいえ、滅相もございません。娘は母方の祖母に似たようで武術はからっきしで″と続けた言葉にまた顔を俯けそうになったが、ヴィクトリア様が重ねて声をかけてくださったのだ。
「前を向いて。そう、それで良いわ。
貴女の光り輝く赤い瞳は皆に見せてあげないと。
ルビーは宝石の女王と呼ばれているのよ。
気高く生きなさい」
そう言ってヴィクトリア様は微笑んでくださった。
その時から彼女は私の全てだ。
彼女は残念ながら小間使いは必要ないと、私にお役目を与えてくださらなかった。
だが少しでもヴィクトリア様のお役に立ちたい。人を頼る事の少ない彼女の気持ちを想像し、できる限りご助力させて頂きたい。
とりあえずはあの厄介な王弟の動きを阻害する為の対策を練りながら、ヴィクトリア様日記に今日の素晴らしい出来事を書き加えなければならない。




