教室で青天の霹靂
朝早く登校し、座席に座り今日の予習をする。関連する論文も用意したので、それにも目を通す。優秀な人材が埋もれていることもあるので、論文は発表者や参考論文まで調べている。速読をしながら今日の予定を組み立てる。
今日は昼に珍しく予定がない。いつもは父であるリヒター公爵からの在学中に優秀な人材とのコネクションを作るようにという指令を元に、学内のものや学者を招致し、面談をしていたりする。
父の要求はいつも高すぎて驚いてしまう。学生のうちからこんな大変なことをさせるとは。
私は口ではリヒター公爵家の娘として誇りある行動等と言っているが、基本的に対人関係恐怖症だ。まぁそれは適当な自己申告だが、それくらい内面では雄弁だが極力人とは話したくないと考えている。
ここ10年で人と極力話さなくてもなんとかなることも増えてきた。実はテレパシーが使えるのかもしれない。なーんちゃって。
家に帰ったら今日の復習と明日の準備をして、たくさんきていた手紙に重要なものは片っ端から返していこう。最近はオッケーとかエヌジーとかリテイクとか最低限で最大の効果を発揮してくれるようになってきた。ふふふ、私の時代が来ている。
絶好調な気分でいたら、もう直ぐ始業だと気づいた。
作業を終わらせて机を片付けてから顔を上げると、見知った顔が近くに来ていた。
リヒター公爵家の寄子のグッドナー伯爵の娘、キャサリンだった。赤い髪と赤い目が特徴の美人で快活な女性だ。だが、今は顔が少し蒼白だった。
「ヴィクトリア様。先日は出過ぎた真似をいたしまして申し訳ございませんでした。」
「いいのよ。」
ふう、なんだかわからないが謝られたので笑顔と共に返しといた。大概はこれでなんとかなる。けれどキャサリンは顔色を上気させ、はにかみながらも去らなかった。手強い。
「ありがとうございます。今日の転入生のお世話くらいは、日頃から忙しいヴィクトリア様の代わりにできればと思いましたが、差し出がましい申し出でした。
人材は金の卵だと公言なさっている貴方様ですから、直接確認に行かれることくらい察しておくべきでした。
今日もいつもより早めにきていらして、転入生を迎えに行かれるぴったりのタイミングでいつもの朝のお勤めが終わっていらっしゃるし、本当に尊敬しております。」
彼女の早口な言葉に理解が追いつかなかったが、一つはっきりしたことがある。これから始業までの5分で新入生を迎えに行く必要があるらしい。
ヴィクトリアは平然とした顔をして立ち上がった。
「ありがとう。それではごきげんよう。」




