強くて弱いお姫様
(他者視点)
(ヒューバート)
大切な大切なお姫様を王都まで送り届けてから飛ばして帰還し、ようやく領地まで辿り着いた。
彼女は相変わらず圧倒的に気高く、美しかった。だが夏の休みに帰ってきた以来だったので、少しだけ大人びたようだった。背がまた少し伸び、病気で五年前に亡くなった彼女の母により近くなったような気がする。
できればずっと側で見守りたいと王都に残れるように重ねて頼んだが、断られてしまった。
だが、ただ断られただけではなく、隣国との関係もあり難しいヴィクトリア基金の舵取りを、リヒター領では貴方に任せたいと言ってもらえたのだ。
つまり〝自分以上にヴィクトリア様に信頼されている者がリヒター領にいない″ということだ。
素晴らしすぎる。そのお言葉を拝聴し直ぐに馬で領に帰還し、様々な手続きをしているところだ。
裁量を大きくいただいたので、よりヴィクトリア基金が世界に羽ばたけるように尽力せねばならない。
あの西から来た不届き者も恐らく有効に人材として活用するようにと仰っていたので、隣国へのキーパーソンの一人かもしれない。ヴィクトリア様のお言葉には一つの無駄もない。今回の帰省で発していらした言葉の全てはメモしてある為、見直しながら対応せねばならない。
今回の帰省では初めてヴィクトリア様がご友人を連れて帰って来られた。帰省で共にした者とは仲が深まるとかなんとかジンクスがあるようだが、所詮ジンクス。彼女の大叔父は私の最初で最後の師匠である。彼のちい姫を有象無象に渡すわけにはいかない。あのアレックスとかレスターとかローラとか、ヴィクトリア様にいやらしい目を向けおって。
ウィリアム様との連携を強化して、卒業後ヴィクトリア様がリヒター領に永住なさるように準備しなければならない。
あの出兵の時、国は荒れた。物価が高騰し、政情が不安定になった。隣国での戦争にできる限り物資を輸送した為、戦争激化後は公爵邸であっても食料の量が限られてしまった。その事から、彼女が必死で守ろうとしたラットも屋敷の食糧を保護する為に処分されてしまった。
どのみち公爵令嬢だからと自分の食料を確保するのではなく、できる限り周りに分け与えていたヴィクトリア様にはラットを養う選択はできなかっただろう。
忙しない邸宅での彼女の唯一の友達だったのに。
大人びている彼女が泣きながら裏庭に墓を掘っている姿を涙を拭う事すら出来ずに呆然と見つめていた自分が許せなかった。
お姫様は自分が大切に守る。そう今は亡き師匠に再び誓った。




