リヒター公爵領
侯爵領を出発し途中視察を挟みながらも、晩にやっとリヒター公爵領に着いた。
道中パッと見るだけでも王都と遜色のないレベルの発展具合にアレックスは驚いていた。
リヒター公爵領は宰相が領地での直接統治はしていないが、リヒター公爵の弟を筆頭に従来のリヒター家に連なる名家の者と、ヴィクトリア基金によって見出されたリヒター公爵領の発展に寄与できる者が協力して統治していた。
「王太子殿下、お越しいただきありがとうございます。ウィリアム、ヴィクトリアの叔父のギリアムと申します。
こちらに滞在していただけるとは、光栄の極みでございます。ご満足頂けるもてなしが出来るよう、リヒター公爵領一同尽力させていただきます」
「こちらこそ、受け入れてくれてありがとう。宜しく頼む。」
「叔父様、お久しぶりです。
お変わりないようで何よりです」
「ウィリアムもヴィクトリアもちょっと見ないうちに立派になったな。
とりあえず皆様方、夕食の準備ができていますので、旅装をときましたら晩餐室においで下さい」
「ローラ、よかったら私と用意しましょう。
それでは皆様、ご機嫌よう」
ヴィクトリアはろくなドレスがないだろうローラを気遣い声をかけて、場を後にした。
時が経ち、ヴィクトリアとローラが他より少し遅れて晩餐室に入ると感嘆の声が聞こえた。
ヴィクトリアは髪をアップしていて、細い首と頸が見えている。黄金の髪の後れ毛が美しく、彼女の瞳に合わせたような真っ青なドレスが彼女の人形めいた美貌によく似合っている。
ローラも見違えるように可愛くなっている。髪はハーフアップにしていて、ヴィクトリアの持ち物だろう繊細なティアラが輝いている。ドレスはプリンセスラインのクリーム色のドレスで、繊細なレースが連なっているとても豪華なものだった。それに負けない気品がある顔立ちをしていることに他の者は気付き、賞賛するような眼差しで見ている。
「遅くなりましたわ」
ヴィクトリアが声をかけると、一同がハッと現実に引き戻されたような顔をして、彼女達を口々に褒め称えた。
食事中は様々な領地に関する話題であったり、逆に学園のことを皆が思い思いに話す場面もあった。
ヴィクトリアは疲れたなとぼーっとしていたが、慣れ親しんだ領地に着きホッとしている。
「王都でも災厄が起こるのか、起こるとしたらどんな災厄なのか話題になっています」
レスターがこの話題を出すと、ローラが不安そうに言った。
「予測がつかなくてとても恐ろしいのですが、皆様はどのようなことが起こると考えていらっしゃいますか?」
ヴィクトリアは久しぶりのドレスだったので食べすぎてお腹がパンパンになり、楽な姿勢にこっそり変えようと身じろぎをした。
すると周囲の目が一斉にヴィクトリアに向かい、ヴィクトリアはギョッとした。
「ヴィー、私もずっと君の予測を聞いてみたかったんだ。」
アレクのその質問に、ヴィクトリアは何故自分に訊くのかと動揺した。だが、何かを答えなければと声を発した。
「王都では大きなイベントが三月中に三つありますね。初旬に王宮での夜会、中旬にパレードやお祭り、下旬には王立学園での卒業式とダンスパーティーです」
ヴィクトリアの話を聞いてアレックスは驚いた。
「ヴィーは飢饉や交通網整備、外交など幅広く対策をしていたが、そのようなピンポイントな時に問題が起こる可能性が高いと考えていたのか。
それは盲点だった。噴火した国がある歴史と、災厄という言葉で戦争や災害をイメージしていたが、そのように〝三月″という事にはあまり着目していなかった。
今後はその三つのイベントにもより対策をより強化しよう」
ヴィクトリアは咄嗟に言われてつい三月ということに意識がいって発した言葉を重く捉えられ、動揺した。
「ですが視野を狭くする必要はないので、私の言葉は気にしないでください。
もしかしたら起こっても大した事ではないのかもしれません」
ヴィクトリアは逃げに入った。何も考えてないのであまり自分を狙い撃ちしないでほしいと切に願った。
ヴィクトリアはこれからはよりステルス機能を高めようと心に決めた。




