侯爵家にて
ブルドン侯爵家に着いた。
何となく眼鏡の変態の家族ということで、ドギツイ人々を想像していたが、理知的な方々だった。
侯爵と夫人の顔のいいとこ取りをしたのがレスターだったようで、皆雰囲気は良いが、普通の顔をしていた。無事に視察を終え、館に案内してもらった。
「本日はありがとうございました。災厄に備え、今日ご指摘いただいた箇所を修正し、完璧な備えをしたいと思います」
「苦労をかける。素晴らしい対策も多く、こちらも学ばせてもらった。」
ブルドン侯爵家は王家の忠臣だ。息子が側近に選ばれているように、古くからアレックスとは関わりが深いらしい。言葉は固いが和やかな雰囲気が流れていた。
夕食は流石の豪華さで、見慣れない特産品もとても美味しかった。デザートにはクロワッサン鯛焼きが出た。ヴィクトリアが美味しそうに食べていると、夫人がさりげなく話しかけた。
「ヴィクトリア様のご結婚はお父様が決定なさるとお聞きしました。しかしこのご時世、女性からもこのような方が良いと条件を出すことは決して悪いことではないと思います。
ヴィクトリア様はどのような方とご結婚したいと思われているのですか?」
「あまり考えたことがありませんでした。
そうですね、、、。
自分がありのままでいられる方と結婚できたら嬉しいなと思います。」
ヴィクトリアはうーんと首を捻りながら答えた。
ブルドン侯爵夫人に感謝の眼差しを送りながらアレックスは考えていた。
今のところヴィクトリアが血縁以外で愛称を許す男は自分だけだ。彼女が伸び伸びと暮らせる環境をアピールできればチャンスはある。
早く身内の問題を解決して婚約してもらわなければ、トンビに油揚げを攫われてしまうかもしれない。
アレックスの嬉しそうな顔に反してウィリアムは面白くなさそうな顔をしていた。
レスターは〝もしかして自分も?″みたいな調子に乗ったことを考えていたが、王家に忠実な母の眼力でしょんぼり意気消沈した。
ローラは空気みたいになってヴィクトリア様に着いて行こうと心に決めた。