羽が生えている
学園長室からクラスに帰る道で、ヴィクトリアは声を掛けられた。
「ヴィクトリア様、リヒター公爵家はそんなにお財布事情が苦しいんですか?ニクソン伯爵家で支えて差し上げましょうか?」
「まぁ、お姉様。そんなことプライドの高いヴィクトリア様がお願いできる訳ないでしょ。
きちんとお願いする時は頭を下げるという事も知らないんじゃないかしら?」
ニクソン家の長女と次女がいた。相変わらず羽が生えている。
格下のものからの勝手な声かけは返事をする必要はないが、ヴィクトリアは一応返事をする事にした。
「飛べる豚と飛べるカマキリ」
ご機嫌よう。
あ、カマキリには元から羽が生えてた。失敗!
ヴィクトリアは建前と内心が入れ替わっている事に気づいてない。
周りからは失笑が湧き上がる。ヴィクトリア様に暴言を吐くなど言語道断と、誰もが敵意を向けていた。
相手の顔がドンドン赤くなっていく。
ヴィクトリアは熱でもあるのかと心配になって来た。
「大丈夫ですが?顔色が赤くなっていらっしゃいます。熱があるかもしれないので、保健室へ行かれた方がよろしいかと思います」
ヴィクトリアは心底心配そうな顔をして言った。
それで決壊したように二人は叫び出した。
「あのねぇ!!!」「貴女いい加減にしなさいよ!!!」
そこに水を差すように冷静な声が聞こえた。
「お姉様方、気分がよろしくないようなのでよければ保健室までご案内します」
ローラが睨みつけるようにして言った。
「あんたみたいなのが話しかけないでよ!!売女の娘のくせに!!」
ヴィクトリアはびっくりしてしまった。貴族女性とは思えない口ぶりだからだ。人間から退化してしまっているのかもしれない。
「大きな声を出すのは暴力ですよ。騎士様方、お手数ですがお二人を教務室まで連れて行ってくださいますか?」
ヴィクトリアは自分が暴言を吐いた記憶はなかった。彼女の中ではご機嫌ようと挨拶しただけだったのだ。
「「はっ」」
学園に常駐している騎士が彼女達の大声と、多数の生徒が集まっている事に気づき駆けつけていた。
二人は大きな声で喚きながら連行されていった。
「ヴィクトリア様、ありがとうございます。度々ご迷惑をお掛けして申し訳ございません」
ローラは深々と頭を下げた。
「こちらこそ、私が呼び出されたので迎えに来てくれたのかしら?ありがとう。
よかったら教室までご一緒しませんか?」
ヴィクトリアの呼びかけにまた涙を浮かべながらもはいっと元気な声を出してローラはヴィクトリアの後に着いて行った。




