表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/70

学園長室で

「ヴィクトリアさん、本当にありがとうございました。お恥ずかしながら貴女の素晴らしい采配にいつも助けられています。」


「いえいえ」


また厄介事かと思ったが、違うらしい。

よくわからないが、とりあえず返事をしながらヴィクトリアはホッとした。


「ローラさんはヴィクトリアさんがお察しのようにニクソン伯爵家で疎まれています。母君の素性を伯爵以外知らず、卑しい身分の娘だと周りから思われ、伯爵も自分の破滅に繋がりかねないと誰にも告げず黙秘しております。短絡的で、国家間の問題にも繋がりかねない愚行です」


ヴィクトリアは話の流れが怪しい事に気がつかず、とりあえず共感した。


「その通りです」


「やはり聡明なヴィクトリアさんはもうお分かりでしたか。そうなのです。あの琥珀色の瞳が示すように、ローラさんの母は隣国の前グラード公爵の娘なんです。

孤児という偏見からか、隣国の貴族とも関係の深い王立学園でも、あの家系特有の瞳に誰も気づいていないようですね。

ローラさんの母は身体が弱く、存在を隣国でもあまり知られていませんでした。そして空気の良い我が国に療養にと別荘にいた時に事件は起こったのです。


別荘にいた彼女を気に入ったニクソン伯爵が未婚のように振る舞い、彼女にプロポーズして結婚を誓いました。それを信じた彼女は未婚のまま妊娠してしまったのです。ニクソン伯爵は彼女の素性を知らず、裕福な平民の娘だとその服装から判断していたようです。彼女は身の安全を守る為に目立たない質素な服装をしていました。妊娠を知った彼女は両親に叱られてしまうと、直ぐに身分を打ち明け結婚しようとしました。ですがニクソン伯爵はその時既に今の夫人と結婚していたため、逃げ出したのです。


彼女の両親は非常に厳格でした。理由を聞いても話さない彼女を死んだことにして放逐したのです。ニクソン伯爵のことを愛していた彼女はそのまま弁解することなく慣れない市井で暮らし、弱かった身体を酷使しましたが、九歳の娘を残して無くなりました」



厄介事だった。油断させておいて、有無を言わさず聞いてはまずい事を聞かせるとは何事だ。


「そうでしたか」


ヴィクトリアは無難に返答した。


「そして時は経ち、ローラさんが貴女のおかげで孤児院でも勉学で頭角を出し、その外見の可愛らしさもあって注目されるようになると、伯爵はやっと見つけたと嘘をつき彼女を引き取ったのです。ローラさんは母君の血筋を知りません。伯爵の態度を怪しんでいるものの、理由はまだわかっていないのです」


「学園長はよくそこまで事情をご存知ですね」


「一年前に前グラード公爵、ローラさんの祖父が死に、ローラさんの伯父が爵位を継ぎました。彼は可愛がっていた妹の突然の死と、葬儀が隣国で密やかに行われた事に疑いを持っていました。そのため、爵位を継ぐまでは密やかにしていた捜索活動を本格化し、この国でも大々的に探し始めたのです。

その事は知っていたものの、私には関係ないと思っていましたが、ローラさんの転入試験の時にその瞳を見て驚きました。直ぐに国に知らせ、詳しく経緯を調べました。そしてこの大体の流れを知り仰天し、隣国にも知らせを送ったものの、隣国は未だに戦争の余波があるため政情が不安定で直ぐには迎えに行けないという返答がありました。また、ニクソン伯爵に本当に誠意があるのかを確かめる為に、ローラさんにも伯爵にも現グラード公爵は何も知らせないで欲しいと仰り、そのまま入学を認めるに至りました」


思った数倍どころか数百倍の面倒事だった。知らない方が幸せだった。ヴィクトリアは遠い目をした。


「あなたは隣国の英雄となった前騎士団長が〝ちい姫″と呼び、最も可愛がっていたリヒター公爵家の娘です。貴女にローラさんの世話をさせれば隣国の心象はより回復すると思われました。ですが私の教育者としての立場は、生徒を利用する事に良心の呵責を持ちました。よって、キャサリンさんからの申し出に甘えようとしましたが、それは貴女のリヒター公爵家の娘としてのプライドを蔑ろにしてましたね。貴女は自分を利用してでも国家に寄与しようとする稀有な人だ。今日の貴女の制服を見て実感し、聞かれる前にこちらからしっかりと説明しておこうと思いました」


ヴィクトリアは〝え、一つとして何か聞こうとなんてしていなかったんですけど″と言いたかったが、なんとか空気を読んで返事をした。


「説明していただきありがとうございました。これからもしっかりとローラさんを支えていきたいと思います」


ヴィクトリアはとんだ劇物を押し付けやがってと内心で毒づいた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ