馬車にて
乗り心地がうちの馬車より良いものは久しぶりだ。
ヴィクトリアは少し口元を綻ばせた。
それを見たアレックスはよしっとガッツポーズをし、兄のウィリアムは不快そうにため息をついた。
「ところで、何をしに王宮に行くのですか?」
「三月までの対策の一つである、王都の医療体制の刷新についての相談を受けたので、その件で。
昔リアが海を渡った国で革新的な医療技術があるという情報を掴みました。よって希望する医療従事者を六年前にヴィクトリア基金で出立させたのです。ですが技術習得に時間がかなりかかりました。期限までにその技術を国内全土に広めるために、帰って来た技術者の一部を、そのまま船で各地に回らせていたのです。
その者達も帰って来たので、技術の集結と、王都の医療を現代に合わせ変えるための話し合いをします」
ヴィクトリアはウィリアムの説明を聞きながら、本当に何故私を呼ぶんだろうと疑問に思っていた。
専門家の意見が聞けるなら素人は不要だろうに。利権は放棄してるし。馬車に揺られると眠くなって来た。
そこにアレックスが真剣な声で話しかけた。
「流石ヴィクトリアだな。
ところで、、、ヴィクトリアはこの馬車の中だったら、誰と一緒にいるのが楽かな?」
ドキドキする王太子とフッと勝ちを確認する兄が見守る。
急速過ぎる話題の転換だが、ヴィクトリアは眠かったため、気にせずに答えた。
「う〜ん、レスターかな」
黒くて目に優しいから。
ヴィクトリアは寝たのか、吐息が微かに聞こえる。
馬車の中は凍りついたようだった。
レスター・ブルドン侯爵子息は存在を忘れられてなかったと喜ぶ暇もなく、死を覚悟した。




