なんとか間に合った
久しぶりに走ってしまった。マナーとか言い放っておいて、即座に自分が守れてないことに激しい羞恥を感じた。目が潤んできた。
彼女の運動神経は働きが悪いので、先程のダッシュは実は周りには早足程度にしか見られていなかったので問題はないのだが、彼女は気づいていない。
気を取り直そうと席について前を向いて始業を待っていると、複数人が近寄ってきた。
「ヴィクトリア様、大変申し訳ございませんでした」
ローラが先陣を切って謝罪した。
何故か教室全体に緊張感があるようだ。
こういう時はこれに限る。
「いいのよ」
ヴィクトリアは美しい唇に笑みを浮かべてそう言った。唇全体の大きさは普通だが、下唇が少しぷっくらしていて朱色の口紅がとても色っぽい。目を潤ませていることもあり、最高の艶やかさを彼女は振りまいていた。
「この度は私たちの行動でヴィクトリア様を困らせてしまい、大変申し訳ございませんでした。出身や一面だけで人を判断してしまうという、とても愚かな行動だったと今では理解したつもりです。今後はこのようなことがないように努めます」
ヴィクトリアは使い回しで対処した。
「いいのよ」
これでオッケー。というかクリストフ先生までなぜか不思議と涙目でこちらを見ている。なんなの。ホームルーム始めないのかしら。
アレックスが手を叩いて言った。
「では今回の件はこれで手打ちということで。私からも一言。皆も知っていると思うが、ヴィクトリアは孤児院の支援もしている。彼女が教科書までもを手がけていることは有名だろう。ローラはそこで学び、転入試験で満点を取った。皆と机を並べるに相応しい人間だと私は確信している。
人材を金の卵として大事にしている彼女に恥じない行動を取るように」
「「「はい!」」」
なに?この状況。クリストフ先生まで返事してるじゃない。あの先生イケメンだけど変な人よね。
というかこの前から金の卵って連呼してるけど、、、え?私は関係ないよね?
クラスが一体となったが、ヴィクトリアだけは取り残されていた。
「ヴィクトリア様、流石です」
キャサリンが来た。相変わらず赤い髪が眩しい。だがヴィクトリアは彼女の赤い瞳を見ることができなかった。
彼女は、、、茂みで、、、。
ダメよヴィクトリア。考えちゃダメ。淑女としてあの事は記憶から抹消するのよ。
ヴィクトリアは顔を赤らめて言った。
「いいのよ」




