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他者から見た彼女
「あ、ヴィクトリア様よ。
いつも堂々とされていて、美しいわ。」
「本当に!流石栄えあるリヒター公爵家の娘ね。」
「まだ婚約者をお決めになってないんだよな。」
「ワンチャンあると思うか?」
「鏡見てから言えよ。」
ざわざわざわつく周囲を一瞥もせずに進んでいく女性がいる。彼女、ヴィクトリア・リヒターは有名な才女だ。
立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花を地で行くその姿は王立学園の人々だけではなく、社交界でも評判だった。
彼女は王太子と結婚すると思われたが、それを二年前にリヒター公爵家が断ったことは社交界では公然の秘密であった。
あの評判の良い方が断られるとは、彼女を射止めるのは誰なのかとますます関心が寄せられていた。
彼女はいつも多くは語らないが、端的で鋭い言葉遣いをする。淑女としては異例だが、最近の女性の社会進出が進んだ風潮では尊ばれていた。