学園の嫌われものと学園一の美少女は不釣り合い
「我輩が興味を示すのは魔物学とモンスターテイマー実技と座学のみ。自然学と生物学は得意分野だ。特に問題ないだろう。ヴァーミリオン殿」
趣味と実益という奴だ。生きものマニアにとって基本は知り尽くしている。
その間にも今度こそ立ち上がろうと膝に力を込めるも、間髪入れず少女ことヴァーミリオン家の御令嬢は我輩の教科書を机に押さえつけた。
そろそろ空気椅子の体勢は辛い。それでなくてもサラリーマン時代に社長のガセネタ健康法週間でやらされていたから良い思い出はないのだ。
「そうね。殆んどトップだもんねぇ。でも、魔法学と歴史も含めて昔は全然だめと友達の子に聞いたよ。余程いい家庭教師に師事したのね?」
「ふむ、敬服に値する師だ。世界でも指折りの知識量だろうと思う」
我輩には規格外の師がいる。
前世の知識があってもそのまま使えるとは限らない。だから、そのハイスペック気味な師匠に付き合ってもらって、一からオーバーホールしてこの世界に最適化させた。
それに魔法や古代語など一般学者でも知らない事を出し惜しみなく叩き込まれた。スパルタ式なのは言うまでもない。
「へぇ、その先生の事大好きなんだ?」
「どうだろうか? 外見は生前飼っていたマントヒヒのママルガリータやワニのアントワネットのように可憐だが、性格は最悪で悪趣味だ。今も我輩のことをからかって遊んでいるに違いない」
「…………そ、そう、それは大変そうね」
満面の笑みだが、一瞬引つっていたのを見逃さなかった。まぁ、どうでもいいが。
「てっきり、さっきの実技試験で霧散な結果だったから落ち込んでいると思ったけどこれなら大丈夫だね」
「ふむ。毎度のことなので慣れているのだが、その度に貸し与えてくれているモンスターが暴走するのは申し訳がないと思っている」
勿論魔物にだ。多額の授業料をふんだくっている学園側に罪悪感なぞ微塵もない。
それに幾ら危険でも暴走の度に殺処分はあまりにも酷すぎる。前の世界なら動物愛護団体に訴えられるレベルだ。
「でも、常々思うけどモンスターテイマーの学舎で魔物一匹使役出来ないだなんて、もう、この世界で拒絶されているようなものだねぇ」
「我輩は生き物が大好きなんだ。一方通行の愛でもそこはオブラートに包んで欲しいものだな」
「あらら、ごめんね。でも、この世界でモンスターを使役する事が不可能なら人間としての尊厳も認めてくれないよ。レアクラスは無理だとしても、せめてコモンかノーマルと契約出来ていれば学園全体で嫌われることもなかったのに」
そう、この世界は全てモンスターテイマーの為に存在している。全人類がどんな形にすれモンスターを行使して世界が回っているのだ。即ちパートナーがいない魔物使いは死を宣告されているようなもの。
ここ、クラムベディア王立クラフトハイム学園は伝説のモンスターテイマー、シルヴァーナ・ホワイトナイトが創設したと伝承がある伝統ある学舎だ。学科は多岐に渡るが勿論、花形は魔物使い養成科である。
モンスターにはクラスがあり、上級のスーパーレアから始まり中級のレア下級のコモン、最下級のノーマルとなる。学園は未来のエリートを養成する機関なのでレアクラスが主流。
結果、どんなに優秀でも成績トップでも魔物を支配下におさめられない者は落第の烙印は拭えない。
 




