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純血派の追跡者


「それよりも、この場所へ女性が逃げてきませんでしたか?」

「残念ながら我輩は何も知らないのである。さっきまで絡んできた学園のクラスメイト達を手厚く歓迎していたのでな」

「分かっていると思いますが、隠すとご自身の為にはなりませんよ。通りすがりの包帯男さん」

「そんなことは百も承知。それが裏社会のルールというものだろう? なら我輩はおたくらに何も質問するつもりはないし、関わるつもりも毛頭ない。よって結論は何も知らないという事になる」


 この輩達は常人の持つ気配とは別次元の怖さを持っていた。獣を狩り楽しむ貴族のように、躊躇いもなく人を殺すだろう。簡単に説明すると鋭利な刃物だ。

 慎重に事を済ませないと、取り返しのつかない事へなりかねん。

 しかしながら武力を相手に外交交渉など無意味だと常々感じている。そんな簡単なものなら、世界からいじめというもっとも陰湿で恥知らずな行為が無くなる筈。

 ならばこの小生、生前のペット達相手に鍛えた弁舌で、微力なれど人類が背負う業の縮図へ物申す所存なり。お手とお座りは任しとけ。


 さて、問題はどうやってご退場願おうか?

 土下座して済むのだったら、幾らでも店頭実演販売の如く鮮やかに平身低頭するのだが、相手は例えるのなら感情を殺した仕事人や傭兵の類い。

 しかも宗教を発端とする選民主義の崇高な理念によって行動している者達だ。個人的な感情に訴えるのは愚の骨頂である。


「見ず知らずの貴方と問答をしている暇はない。本当に隠し立てすると言うのならその体に聞くしかない」

「我輩を痛めつけても手がかりの一つも出てこないと思うが、但し自衛本能で抵抗するのは許してもらおう」


 純潔派は過激派と言われるだけあってかなりの戦闘集団の筈だが、遭遇してから一歩も動かない。

原因は分かっている。幸い先ほど制作したゾンビと我がミイラ男な外見の相乗効果で、敵方はかなり警戒をしてい様子なのだ。


 片付けるのは簡単だが、残念ながらこの場でやりあうつもりはない。我輩はあくまでも一学生ナタク・オルナダークである。よって物騒な事件に発展して学園側から実家に報告されても困るのだ。

 ならここは穏便に引き取り願えるように粘り強い交渉をしていこうじゃないか。


「聞いたことはあるだろう。我らは純血派。崇高な目的の為にこの国の未来を正そうとする組織ある。どうだろうか我々のために力を貸してくれないか。少女を引き渡してくればそれなりの礼金は弾む」

「清純派だろうが巨乳派だろうが、我が性癖は何人たりとも脅かすことはできない」


 純血派、正式名称は貴族絶対主義純血派。

 神の系譜である純血系のモンスターテイマー門閥を第一と唱える。ただし能力を乏わないものは貴族だろうと排除の対象に入った。

 純血派は成り上がりものや政府穏健派の要人を襲撃する。古来よりそういった確執はあったが今に比べたら大したことはない。発端は現王が婿養子で血筋が十二神の系譜ではないことだ。   

 現王否定派の元老院は秘密裏に純血派を組織して各地の不満を煽っている。

 勿論だが、ここクラムベディア王国第二の都市ムーンレイクも例外ではない。

 因みにゴルディオン公爵家も深く関わっていると黒い噂はあるが、それは真実ではない。兄達に繋がっている者がいるかも知れないから完全否定しないが、少なくても本家の意思としては掃討対象なのだ。何故ならば公爵自身穏健派や推進派派閥のどちらとも属していない。何らかの思惑があるとみている。我が父上ながら全くもって恐ろしい人だ。

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