カースト上位による洗礼という名の制裁
「おい、そこのゴミ」「止まれ上級貴族の名を語るペテン師」「無視するなムーンレイクと学園の面汚しが!」
行く手を阻むどこかで顔を拝んだ事がある面々が、訳の分からない事を立て続けにほざく。もしかして我輩の事を指しているつもりか?
「これはこれは、複数じゃないと何にも言えないゴミムシ諸君ではありませんか。わざわざ先回りして包囲ご苦労様ですな」
「成績最下位のくせにどの面下げて言っているんだ。魔物使いになれない不良品が」
貴族の一人が吠えた。見覚えがある。同じクラスで良く我輩に絡んでくる輩だ。
上級貴族のステータスを有効活用するとても悪い奴だが、要領が良いので教師達の心証はとても良い。前世でもいた、皆を巻き込んで自分は高みの見物するタイプだ。我輩の兄にもいるがとてもいけ好かない。
「それはそれは失言でした辺境伯公子様。ご長男は伊達出てはない。我輩のような末席で管を巻く爪弾き者には眩い存在」
「その言い方が一々憎らしいんだ!」
「これは我輩の生まれながらの性分、数いる兄達も疎まれている所存。何程御容赦を」
「お前に立場というものを分からせてやる」
さてどうしたものか。貴族としての面子もあるだろうし、強者が弱者へ己の力を見せつけたいという欲求は分からなくもない。実にくだらない事だが。
我輩としては穏便に事を済ましたいのだが、そちらさんはそういうつもりは更々ないらしい。気を使って裏路地に誘い込んだのは正解だったかもしれないな。
「オルナダーク君、仏心はその子達の為にならないよ。格上としての差をつけた方がいいんじゃない?」
「我輩は学園の不良品。それでいい。モンスターテイマー以外興味がないのである」
「このがらくたに何を期待しているのですアーガス伯爵殿。さあ、危ないからこちらへ」
「皆誤解をしているよ。オルナダーク君は成績優秀だけど、モンスターテイマーでないから学園が認めてくれないから何事も最低評価なんだよ。テストは常に零点だったしね。だから学園の生徒達は無能だと思い込んでいるだけだよ」
「何を根拠にそんな戯れ言を信じるのです? どう見ても貴族としての才覚がない。気持ち悪い包帯を巻き付けて醜態をさらしいている。そうだろ皆?」
辺境伯公子は周りを煽って焚き付ける。これみよがしに、取り巻きは騒ぎ立てた。
「現実を見れない貴族は滅ぶだけよ。歴史が証明してくれている。あと君達急にどうしてこんな暴挙に出たの? これまでは大人しくしていたのに」
「はははっ、いい笑い草だ。こいつは公爵家のお荷物だから、嫌がらせを受けたから賠償金をよこせといればいくらでもてくれる。借りを作っておけばいくらでも融通してくれるだろう。だから今まで生かしてやったんだ。しかし都市内も混迷していたからな。何時でも俺の盾になるようにそろそろシメテおく事にしたんだよ。誰が主だと言う事をな」
「君、本当に腐っているわね。そんなこと、私が許すと思っているのかしら?」
敬語を止めた辺境伯公子。逆らう者は格下なら誰であろうと容赦はしないらしい。
それなのに、まるで姉みたく我輩と相手の間に立ち塞がるドクトル。人間関係は淡白だと考えていたからこの予想外の行動に驚かさせた。




