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アイテムボックス・カスタム


「伯爵の地位と住居を提供したのは我輩なのだが。涙ぐましい裏工作の数々を呪文のように唱えられたいか? 今なら浄化して成仏オッケーかも知れないぞ」

「細かい事は気にするな前世のようにハゲるぞ?」

「大きなお世話である」


 むむむ、何故それを?

 無意識にまだふさふさの髪の毛様をまさぐったのは言うまでもない。

 まだまだこの世界では毛生えメンテナンスのオーバースキルを披露する機会はないだろう。


「にしし、なに、勿論嫌がらせに決まっておろう。わーに隠れておいたをしている小僧にな」


 憎たらしい悪戯娘のように歯を出して頬笑む。

 これが注意しても毎日ちょっかいを掛けてくる学園の人気者と同一人物とは言いがたい。


「何の事だ。心当たりはないが? 清く礼儀正しい学園生活をモットーに過ごしているナタク・オルナダーク、佞悪醜穢とは程遠い聖人君子ぞな」

「しらばっくれるでない、漆黒の守人ダークナイト殿?」

「我輩なりに考えあっての行動。そこら辺は多目に見てほしいのだがな?」

「だから制裁はあの程度で済んだのではないか」


 ということは、本気で怒らすとこんなもんじゃないと言っているものだ。


 ガリガリと口内の飴ちゃんを歯で砕くと、「それは勝手なことしてごめんなさい」心にもないことを淡白に表現。

 早朝よりお小言はごめん被りたいので、可愛い小姑を余所に退散の支度を始める。


 心配してくれるのはありがたい。だがしかし、この過保護っぷりはなんとかして欲しいものだ。時折襲ってくる窮屈はゲージに入れられているペットと変わらない。


「だがななーよ、あれはまずい。あれをまだおおやけの場に晒すのは不味いのじゃ」

「慣らし運転も必要だ」


 我輩が所有しているスキルの一つ、チートラノベ御用達、お馴染みの『アイテムボックス』を始動。


 ただ、一般と違うのは、「だがな、あれは世界を革新する程の品なのだぞ。はは、はっくちん! 寒いのじゃ!」開いた大型の空間から漏れる冷気によりドクトルは白衣の両端を引っ張り縮こまった。

 そう、冷凍庫にカスタマイズしているのだ。中は北極の熊でも一瞬で氷の置物になる程の極寒だ。


「ドクトル、シルヴァーナを物扱いするのは止めてもらおうか。あれは我輩の家族または分身同然」

「じゃ、じゃが、実際物ではないか? ずずぅ」


 我輩お手製毛皮のコートを鼻水ズビズビ啜りながら震えているレディに掛けて、自分用に暖めておいたミルクをマグカップへ注ぎ差し出す。

 勿論ドクトルは舌もお子様なので甘くないと嫌がる。なので砂糖はないが家から拝借してきたとろっとろな黄金色の蜂蜜を加えてあげた。元々パンにつけて食べるつもりだったので、量は少ないから我輩は味のない硬いパンを噛み締めるように引きちぎった。

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