毎日の日課(ナタク一人称)
日付けは変わり次の日。
遠き東の空は僅かに黒が薄くなってきていた。真っ黒な珈琲にミルクを少し流してもこうはならない。
ここはスクリーンにライトアップが一番的を得ているが、ハードな勤務をこなした後、楽しみにしていた映画を最高のシーンで寝落ちしたというトラウマを思い出すので、妥協案として大学全部落ちて二浪決定の心境という事で手を打とう。
こういう天候状態を払暁と書くらしいが、漢字的にラスボスとの決戦シーンや終末思想を連想。破壊衝動を抑えきれず、生前実家に封印した中二病黒歴史グッズの如く焼き払いたくなるのは何故だろうか?
我輩の朝は早い。爺婆や豆腐屋や新聞屋並みに早い。空気に触れ少し肌寒い分、思考がシャープになっていた。
まだ天を仰ぐと都会じゃお目にかかれない無数の天然イルミネーションが、花畑のように彩っている。なら是非バリエーションも増やして点滅もマスターして欲しいと思う今日この頃。
こういう冒頭なので説明は不要だと思うが、家にはいない。外だ。別に家なき子または修行僧ではないのだが、我輩には毎日こなしている日課があった。
然りとて別に健康的にラジオ体操やジョギングでもないし、または渇れかけた情熱を注いで盆栽や夜釣にチャレンジしている訳でもない。まして異世界ファンタジーぽく遠出して魔王や聖獣や予言された破壊神を討伐した日には、この物語が根幹から揺らいでクソゲー認定は免れないのだ。よって過度な期待はしないでくれたまえ。
他人から映れば滑稽で落語噺にもならないが、それでも我輩にとっては大事な習慣。
ならば内心課金ガチャをやり過ぎても舞台から降りられない心情のような、眼前の現実に立ち向かう我輩の生き様を着目して見よ。
頭を地面に擦り付けて、「頼むうううう! そろそろ後生だから我輩と契約してくれないか!?」ありったけの想いを乗せて、日本人が誇る三大奥義の一つ土下座を御披露目。誰に? それはモンスターの集団に決まっている。生前、餌が遅れてむくれているペット達へ誠心誠意を伝える為によく実行したものだ。
ちな、学生時代好きな女子にこれをやったら、直ぐにSMSで世界中へ拡散、無様な姿を晒す事になる。
そう、我輩は今、モンスターの団体さんと対話中。数は三十体以上はいるので抱き締めたい興奮を抑えるので必死だった。
場所は都市ムーンレイクから離れること北へ十キロ先の平原。村三つ程経由した場所にある。特に説明することなく普通の原っぱだ。見渡す限り何もない。これだけ広ければ、前世の子供時代だったら格好の遊び場になっていたであろう。
最近野生のモンスターが大量発生したというギルドからの依頼があって討伐に出ていた。
無論それは建前、主目的ではない。




