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2身投げ

アイリスはパーティーから逃げ出し走った。



高台が見えるその場所は国が一望できる崖だった。



「うっ…ふっ!」


涙を流しながら苦しくて哀しくて仕方なかった。



「どうして泣くの…解ってたじゃない!」


今日の断罪で言われる前から知っていた。

クラハドールはアイリスを愛してないことぐらい知っていたが、婚約者としてクラハドールを尊敬していた。



恋愛感情ではなくとも立派な人だと思っていたし、努力をして来た。

身に合わないドレスを着て、妻として相応しくなれるように好きなモノを我慢していた。



クラハドールはアイリスに大人の女性を強要し、お洒落も控えるように苦言を続け、慎ましやかであることを望んだ。


家族にに愛され蝶よ花よと可愛がられたアイリスは両親の為にもこの婚約を成さなければならない。


そう思ってずっと物分かりの良い婚約者を演じた。

本当は甘いお菓子が好きで、可愛いドレスを着たり、ピクニックに行きたかった。


毎週行われる王女殿下のお茶会も参加したかったが、クラハドールが慎ましやかに邸で大人しくして欲しいと言われたので我慢した。



銀色の髪も目立つので黒髪にして欲しいと言われた。


全部我慢していた。


なのにその努力は無駄だったのだ。



「こうなった以上私は社交界の笑いも者…王女殿下に合わせる顔もないわ。アンジェにも」


優しかった親友に姉のように慕っていた王女殿下に王妃。


そして大好きな父に兄。



「ごめんなさいお父様…お兄様」


親不孝な自分を責めて続けた。



「私なんていなければ…そうよ。私がいなくなればいいのよ」


自分を追い詰め過ぎてまともな判断が下せなくなったアイリスは魔が差した。



(私なんて…)


このまま生きていても社交界の笑い者にされる。

家族に迷惑をかけて、日陰で生きるなら、ここで朽ち果てた方がいいのではと思ってしまい、一歩踏み出す。



「アイリス止めろ!!」


「止まってアイリス!」


兄と友人が追いかけて来るも目を閉じて傍に咲いている一輪の百合の花を握りしめる。



「ごめんなさいお兄様」



「アイリス!」


「クラハドール様にお伝えください」



瞳から涙を流しながら告げる。



「どうかお幸せにと…天国から祈っております」



「待て!」



「そして最後まで不出来な妹で申し訳ありません。愛しております」


最愛の兄に別れを告げ、アイリスは崖から飛び降り身投げをした。



多くの貴族や官僚が見ている中、川に身を投げ、悲鳴が響き渡る。



――今度生まれ変わるときは幸せになりたい。



そう強く願いながらすべてを諦め目を閉じるのだった。

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