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chapter 95 輝く星 雑草魂

 ご愛読ありがとうございます

 ダンジョン砦でアオイに改めてお礼を言った。


「とても素晴らしい剣だ。本当にありがとう」


「自分でも驚くくらい気持ちが昂ぶって、最高の仕事が出来たわ。みんなの想いが私を後押ししてくれた。私の方こそ感謝しているわ」


 特別な状況が新たな力を引き出したのかもしれないな。


「シャイニングスターは魔法剣よ。杖の様な使い方も出来るわ。魔法剣は攻撃力が落ちてしまう事があるけど、この剣は攻撃力も抜群よ」


 早速、魔物相手に訓練してみた。


 商人ルドネから手に入れた剣も素晴らしかったが、アオイの渾身作シャイニングスターはさらに素晴らしい。


 まるで自分の為だけにあるような剣だ


 マジックボールも威力が高くなった。剣技も高くなってくれればいいのにな……


 多少は動きが良くなったと思うけど自分ではさっぱり分からない。


「剣技はどうにもならないな……これ以上に上達しようと思ったら誰かに教えてもらうしかないな」


「え?! ちょっと待って……じゃあ、今まで誰にも教えてもらってなかったって事?」


「もちろんさ。アルカディア村には剣技を教えてくれる人なんていない。みんな自分で考えて戦っているんだよ」


「信じられないわ……みんなあんなに強いのに独学なのね」


「もう癖がついてしまっているから今更かもしれないが、ちゃんとした剣技を教えてくれる人が居た方がいいかもしれないな」


「一応、ルドネさんに聞いてみるわ。確かに癖を修正するのは大変よ。修正しない方がいい場合もあるわ。ナックさんはもう普通のレベルではないわ。どう見ても王都騎士団でも上位クラスの腕だわ」


 そこまで強いのか……


 しかし足りていないと感じる


 ザッジ、ビッケ、ジェロは俺より遥かに強い。


 ヒナ、ルナも相当腕を上げているらしい。俺より強いかもしれない。


 魔法ではカナデの足元にも及ばないし、セレスもかなり鍛錬を重ねているそうだ。すぐに抜かれてしまうだろう。


 俺には戦う才能は無さそうだ。でも、努力をするしかない。みんなの命を預かっている国王なんだ。


 才能が無い分、1番努力しないといけない。戦いに興味が持てずに努力を怠ってきた。そのツケを今、痛いほど感じている。


「クレアさんが物凄い訓練をしているそうよ。あの人は本当に凄いわ。ここに来た頃は1番弱そうだったのに今では最強クラスよ。でもまだ訓練を続けているわ」


 以前、彼女は少しずつ頑張ると言った。有言実行だ。


 俺もそうあるべきだった……


 興味が無いからと苦手な事から逃げていたんだ。


 彼女は逃げなかった。


 今からでもいい。気付くのが遅かったが始めないよりはいい。


「誰かに教えを受けたい。このままでは格上の敵とは戦えないだろう。他のみんなも指導者がいれば更に強くなるかもしれないしな」


「あなたに教えれる人は簡単には見つからないと思うわ。けど、ルドネさんは必ず見つけてくれるわ」


 商人ルドネ達は今もアルカディアの為に利益など無い仕事を文句も言わずに処理してくれる。


「ナックさん、あなたは素晴らしい王よ。そういう王には良い人材が集まってくるものだわ。アルカディア国が繁栄しているのはあなたのおかげよ」


「俺はなにもしていないよ。みんなが考えてよく働いてくれるんだ。アオイ、君もそうじゃないか。本当によくやってくれている。俺は君になにもしてあげれていない」


「私は最高の環境をもらったわ。そして好きなだけ好きな事をさせてもらっている。何より大事なのはそれがみんなの役に立っているという事よ。最高だわ。職人としてこれ以上の幸せはないのよ」


 職人とはそういうものなのか。


 自分の技術を高めて、最高の作品を作り、みんなに喜んで使ってもらう。


「この剣を使えてとても嬉しいよ。自分が足りなかった事を教えてくれた。俺もアオイやクレアの様に頑張るよ」


 身近な所に最高のお手本がいるんだ。自分も頑張れるはずだ。


 各騎士団には剣技が得意な者が数名必ずいる。まずは上手な人に聞くのが1番早い。いろいろ聞いて時間があれば試合をしてもらった。

 

「ナックさんは強いんですが基本動作の反復練習が足りていないかもしれません。自然に体が反応して動く様になればかなり変わると思いますよ」


 剣技を習った事があると言う若者が剣の型を教えてくれた。基本動作なんて聞いた事がなかった。


 型なら相手がいない時でも訓練出来るな。


「僕は朝、起きたらすぐに型を一通りやる事にしています」


「凄いな……毎日やるのかい?」


「もちろんです。1日やらないだけでも弱くなる気がするんです。家族を守る為なので手を抜く事は出来ません」


「俺も真似して朝と晩にやるかな」


「真似が1番いいんです。僕も剣技を教えてくれた人の真似で始めました」


 毎朝、毎晩、シャイニングスターを手に剣技の訓練をする事にした。


 今日もとても早く目が覚めた


 釣りに出かける時みたいだな


 あの輝く星が俺の事を見ている


 剣技では輝く事が出来ないかもしれない俺を


 でもいいんだ


 剣技の初心者がやるという基本の動作をやる


 踏み込んで斬る


 踏み込んで突く


 呼吸をしっかり整える


 とても清々しい気持ちになる


 これは精神まで鍛えられるな


 大事なのは続ける事だ


 いきなり強くはなれない


 ゆっくりでもいい 


 今の俺はようやく芽を出した雑草だ


 いつか輝く星まで届くような太くて長い木になろう


 輝く星に誓った


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