chapter 93 北上計画
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さらなるレベルアップを目指してダンジョンの再構築行った。新たな魔物として『オーガ』、『トロール』を配置した。大型の敵だが現在の各騎士団の実力なら倒せると判断しての実装だ。それを各村に展開した。
マスタールームでファリスと打ち合わせをする。
「超ドケチね! 考えも付かないわ!」
羊娘が騒いでいるがどうでもいい。
アルカディア村のマスタールームから細い管を各村へ地下から伸ばして各村にダンジョンを展開したのだ。一応繋がっているのだから可能だ。とてもローコストでいい。
レベル上げ用の部屋と新たな魔物と戦う部屋の2種類を作った。もちろん『ミスリルゴーレム』も配置して素材確保をしてもらう。
これで各村で訓練が出来る!
「ナック様、私のスライムの鑑定をお願いします」
ファリスは腰に付けたポーチからスライムを取り出した。
ファリスのスライムは少し大きくなった。手の平サイズ程だが魔法を覚えさせている。
ファリスのスライムを鑑定する。
癒しスライム レベル5
スキル 溶解
テイムモンスタースキル 意思疎通
魔法 ライトヒール
「羊娘、癒しスライムがいればフグミンが居なくても文句は無いだろ?」
「ナック様、癒しスライムが言うには羊娘さんはフグミンを
おかしな事に利用しているそうです」
「な、何を言っているのかしら? 心当たりがありません事よ! オホホホ!」
おかしな事? フグミンを一体何に利用するんだ?
「何でも羊娘さんはフグミンを枕として使っているそうです」
「お前……そんな事の為に騒いでいたのか……」
「い、1度試しに使ってみたら病みつきになったのよ! もうフグミンがいないと寝れないの……シクシク……」
「嘘です。ほとんど寝て過ごしているそうです」
「ムキーーー! スパイだわ! 危険よ! このスライム」
おかしな羊娘に構っている暇は無い。
「オーガ、トロールと戦って訓練すれば実際に出会った時に驚かないからいいな」
「はい。次は『ゾンビ』、『スケルトン』を配置します」
アンデット系か……確かに魔王の配下に多そうな敵だ。
「今はここまでが限界です。私ももっとレベルを上げないといけません」
「また激務になっているな?」
顔色もあまり良くない。相当疲れているみたいだ。
「はい……でも各工房は私よりも更に激務です。やっと準備が整いました。少し休息をとり北上を開始します」
「俺もレベルを上げた。北上は1週間後でどうだい?」
あまり時間をかけ過ぎると相手の勢力が拡大してしまう。こちらが優勢な内に仕掛けないといけない。
「はい。いいです。すぐに戦闘が始まる訳でありませんし」
まず隣り村に入って、さらに北に『村』を建設する。魔物に攻めさせる為の村だ。
「隣り村には各地から避難民が集まっています。地形等の情報も集まりやすく計略に活用出来ます。既に特殊部隊により情報収集が行われています」
「ビッケは何処に居るんだい?」
「ビッケはステルススキルがありますので長城近くまで調査しに行っています」
「フグミンも一緒なのかな?」
「フグミンは……一緒ではありません」
ん? 何かあるのか? ファリスにしては歯切れが良くない。
「言えない事なのかい?」
「いえ……フグミンが自分で言い出した事です。フグミンは泳げますので……東の国へ泳いで行きました」
「何だって! ……偵察かい?」
「それもありますが……レベル上げです」
「さすが幹部ね! 自覚が芽生えたわ! これでこのダンジョンも安心ね」
無事に帰ってくればな……
命懸けで海を泳いで単独でレベル上げとは……
かなり前から姿を見ていない
フグミン、無事で帰って来いよ
各村では激しい訓練が行われ、ルドネの店の者達が防具の製作に追われている。各工房でも装備品や大型の魔物に対抗する為の道具が製作されていた。
戦闘に参加する者達はもちろんだが、村に残る者達も必死に支えてくれる。
「補給さえ上手くいけば長城を取るのも夢じゃないな」
「はい。すぐに仮説が正しいか判明します」
ポイントは東の山だ。東の山は誰の物でも無い。ある意味ではアルカディア国の物とも言える。ずっと番をしてきたなら当然の権利だ。
山が連なり山脈になっている
その中にダンジョンを通す!
今は国境の川の上流部分までしかダンジョンは伸ばせないが、山沿いを北上して村を建設し、支配下に置いたら変化するかもしれない。
更に今回は水路を計画している。東の山からの豊富な水をダンジョンに引き込み、イカダに乗せて物資を無人で流す。
最終的には長城にダンジョンを直結させれれば、補給に困る事はなくなる。緊急時には退却にも使える。
北の領地を支配するつもりは無い
東の山脈はアルカディア国が支配する
「羊娘、本当に可能なんだな?」
「当然よ! 間違いなくやれるわ」
やけに自信があるな……嘘は言えないみたいだが……
「なぜ言い切れる?」
「や、やれそうだからよ!」
急に慌ててハーブ茶を作り始めた。
「今日はいい茶葉が入りましたよ、マスター、眼鏡っ子」
「め、眼鏡っ子?!」
「美味しいケーキもありますよ? オホホホ!」
そう言って厨房から見た事もないデザートを持ってきた。
「何だこれは? ケーキだと?」
「ダンジョンポイントで交換しておきました。全てはマスターの為ですわ」
「いつも変な食べ物を交換して食べているそうです」
癒しスライムが意思疎通でファリスに羊娘の生態を伝えてくれる。かなり堕落した生活を送っているな……
「ムキーーー! やっぱりこのスライムは危険ね!」
「お前の方が危険だ……ちょっと太ってきていないか?」
「ひ、ひどいわ……毛が伸びただけよ……シクシク……」
あまりいじると面倒だな。
補給は戦いの生命線だ。長城までの道のりは遠い。安全にしかも無人で補給が出来れば格段に戦線の維持が楽になる。
まだ動かない
最高の準備を
あと少しで万全だ
1週間全力で訓練する
そして静かに北上を開始する
派手に仕掛ける必要はない
相手の戦力を削ぎながら
着々とダンジョンを伸ばして
長城を手に入れる!!




