chapter 84 決意
日の出よりかなり早く目が覚めた。
ルナと一緒に大物が良く釣れるポイントに向かう。
釣りを始めると簡単に小さな魚が釣れる。
2人共、かなりの量を釣ったけど大きな魚が釣れない。
日が登り始めた。
潮もいい感じで動いている様に見える。
でも……小魚しか釣れない……
少し焦ってきた。
このままでは……
釣り場所を変えた方がいいのか?
エサを違うのに変えた方がいいのか?
どうすればいいんだ?
クソ! 分からない!!
「ナック」
ルナが優しく声をかけてくれた
「いつもと違うわ」
そうだろうか?
海の状況を見る。とても釣れそうな感じがする。逆にこのタイミングを逃すとこの後、日が登ってキツくなる。
何とかして大きな魚を釣らないと……
……何で釣れない……
「違うのはあなたよ」
ルナが竿を片付け、寄り添ってくる
「落ち着いて。必ず釣れるわ」
俺が違う?
海でも 釣り方でもなく……
そうか……
一旦、仕掛けを上にあげ、深呼吸をする
ルナは真っ直ぐ海を見ている
ルナの横顔を見て、心を落ち着かせる
「ありがとう……ルナ、気持ちが前に出過ぎていたかも」
エサを新しい物に付け替えて
ゆっくりと海に落とし込んでいく
ふぅーーーー
小魚は釣れない……
でも、エサが無くなっていた
もう一度、新しいエサを付けて
さっきより もっとゆっくりと
丁寧に 海に落とし込む
スッ!
ほんの少し 糸が横に走った気がした
グッググゥーーーー
ゆっくりと大きく合わせる!
竿が美しい曲線を描き、一気に海に入り込んだ!!
掛かった魚が凄い勢いで真下に入り込んで行こうとする
素早く立つ位置を変えて魚を浮き上がらせる
じっくりと魚を弱らせてから取り込んだ
とても『大きな真鯛』が釣れた。
「ありがとう。ルナ、俺は……何を……」
ルナは何も言わずにそばに居てくれる。
次第に釣り人が増えてきた。みんな頑張って結婚式に魚を持って行こうとしている。でも、大きな魚はみんな釣れないみたいだ。
その後も頑張ったけど小魚しか釣れなくなってしまった。
館に釣った魚を持って行くとアオイが待っていた。
「凄く立派な真鯛! 腕の見せどころね!」
最初は不慣れだったアオイの得意な活き造りも、最近ではその良さが理解出来る様になってきて、とても人気がある。
ビッケとファリスの結婚式が今日から2日間の日程で行われる。アルカディア村にどんどん人やって来る。
みんなが笑顔で2人の結婚を喜んでいる
大勢の人が忙しく動いてお祝いの準備をしているけど、自分の仕事はもう終わってしまった。
どうしても気持ちの整理が出来ない……
みんなを望まない道に導いているんじゃないか?
戦いたくない人達を戦わせている
これからもっと戦わせようとしている……
どうすればいいんだ
今まで歩んで来た道は自分で選んだ道では無かった。領主になったのも王になったのも自分が望んだ事では無い。
でも、精一杯やってきた。アルカディア国は豊かで幸せな国になった。多くの人を救ったはずだ。
さらに苦しくて険しい道を歩むのか
苦しいが……
やらないといけない
自分が全ての責任を背負おう
1番前に立って戦う それしか出来る事がない
この前みたいに眺めているのは駄目だ
何の役にも立っていない
王ではなく 1人の兵士として 戦おう
名ばかりの王でいい
1人の兵士として 1人の農民として
歩んでいきたい
これが自分で決めた道だ
結婚式が始まった。
ビッケからファリスに本が贈られた。全属性強化をした特製の本だ。
『アルカディアの叡智 ファリスの書』
金色の糸で刺繍がしてある。
ファリスが両手で本を抱えて喜んでいる。
ザッジとジェロが葡萄酒を持って来た。
「ナック、何か理由があるんだろうが顔に出過ぎだぜ?」
ジェロに怒られた。
「ファリスか?……村長だな?」
ザッジにもバレてしまった。
「こんな事をしなくてもファリスちゃんはアルカディアの為に全力を注いでいるぜ?」
「今まで以上の何かがあるという事か……」
「話す事が出来ないんだ。すまないな……ファリスを支えてあげてくれ。俺にはその力が無い」
3人で葡萄酒を飲みながら幸せそうな2人を眺める。やがてみんなが集まって来た。
ヒナ、ルナ、カナデ、アオイと一緒にビッケとファリスの所に行って楽しく騒いだ。
ビッケに作ったばかりの軟膏を渡した
ビッケは黙って頷いた
これで自分の気持ちを伝えた
自分の畑で 自分で作った 最高の薬だ
みんなからお祝いのスピーチをする様に頼まれた。
突然そんな事を言われても何も考えてないんだけどな……
今の気持ちをそのまま言葉にするしかない。
「ビッケ、ファリス、おめでとう。2人共、俺にとっては家族みたいなものだ。今日は沢山の人が集まってくれた。2人はこれだけ多くの人に祝福されている。素晴らしい事だね。みんなに感謝したい。アルカディア国はみんなが家族みたいなものだ。みんなで支え合ってこれからも一緒に頑張っていこう」
精一杯の事を言った。苦しい道のりが待っているのは分かっている。みんなで平和への道を切り開くしかない。
助け合い 励まし合って 進んで行く
世界を滅亡から救う為に




