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chapter 49 迎え

ご愛読ありがとうございます

 北の方角に青い旗がどんどんと増えていく。


 あれがアルカディア軍なのか?


 自国の軍なのかも分からない。

 強そうな兵士達が城の北側に集結して陣形を組み始めた。精鋭部隊なのだろうか、ほとんど乱れる事無く陣形を整えていく。とても素人のいる場所では無い。

 ジェロは西で待つ様な事を言っていた。何かあるなら西って事だろう。状況を確認して何とか犠牲者が少なくなる道を見つけたい。

 ゴブリンの大軍は相変わらず城を取り囲んでいるが、周りの兵士は激減している。アストレーアの軍が動けるなら抜け出せそうな感じもするが、恐らく動かないだろう。逃げる事など考えないはずだ。

 北側の兵士達は城に背を向けて北方向を警戒している。

 東側に歩いて行くと兵士はほとんど居ない。少しだけいる兵士達は北側に向けて陣形を整え進んで行く準備をしていた。

 南側の兵士達は西側に移動を開始していた。北側を直接見てないからなのだろうか? 北や西に比べると農民らしき兵士も残っていた。そこに混じって様子を伺うと西の部隊と合流するみたいだ。

 どうやら人が減り過ぎたので北と西に戦力を集中させるみたいだ。


 東と南はほぼゴブリンしかいないぞ


 これは狙い通りか?


 ならアルカディア軍はやはり東から来る


 東から軍が来る事など全く想像していない。西にいた方が安全だな。東や南にいたら味方に攻撃されそうだ。

 西に移動する農民風の兵士に混じってついて行く事にした。

 西側に着くと食事が配給された。豆の他に肉や野菜も少しだけ入っていてまともな味がした。今更だが隠していたのだろうな。

 久しぶりに美味しく食べているとジェロがやって来た。


「お前何やってんだ? 北へ行けと言ったはずだぜ?」


「あそこは精鋭部隊しかいないんだ。とても入れないからぐるっとまわってここまで来た。もうここしかいる所が無いから仕方ないだろ」


「ここが1番危険だから北へ行かせたのに意味無いぜ……」


 全く分からん。もう考えるのも面倒だしここでいい。


「この感じだと明日来るな。逃げるなら今夜だぜ?」


 逃げやしない。このままだと多くの命を失ってしまう。必ず機会はあるはずだ。


「明日、攻城戦を仕掛けここを陥す事になった。恐らく中の敵はもう動けまい。準備を整えよ!」


 指揮官らしき人から命令があった。

 尖った巨大な丸太が取り付けられた木製の荷車が準備されていく。


「アレを俺達が押して行って、城門にぶつけてぶっ壊すんだぜ」


「そんな事をしたら城壁の上から矢が降ってくるじゃないか?」


「動けるならな。そしたら俺達は死ぬな」


 おいおい……最悪じゃないか


「梯子を城壁に架ける方法もあるが似たような運命だな」


 ジェロは笑いながら話をしているが冗談じゃないぞ。


「お前よく平気だな?」


「もう最高に嬉しいぜ。ワクワクしているんだ。どうなるかな」


 駄目だなコイツ……絶対におかしい……


 作業をいろいろ手伝って晩ご飯には羊のステーキが出た。最期くらいはいい物を食わせてくれるらしい。テントは一杯空いているはずだが、数箇所の指定されたテントで寝る様に指示された。


「考えてるな。もう逃げれないぜ」


 別にここまで来て逃げるつもりはない。よく寝て万全の準備を整えるだけだ。



 ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!


 太鼓を叩く音が鳴り響いた。慌てて目を覚まし装備を整える。


「西から敵が進軍して来ます!」


 西だって? 東じゃないのか?!


「来たぜ、来たぜ! 凄い事になりそうだ!」


 ジェロが嬉々として準備をして外に飛び出して行く。自分も外に出て隊列に加わった。城門ではなく西を向いて陣形を組んでいる。全くの想定外で皆、動揺している。


 ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!


「数は少数ですが王都騎士団です!」


 大きな騒めきが起きた。


 ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!


「騎士団が来る訳が無いだろうが!」


 周囲に怒号が飛び交う。大混乱になってきた。


 ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!


「先頭の女性騎士達を王都で見た者が多数います。間違いありません」


 美しい女性騎士達が重装した馬に跨がり横1列に並んで進んで来た。


 ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!


 女性騎士6騎は金属の長槍を脇に抱え、大きな盾を装備している。後ろにカナデが馬を引いて歩いているのが見えた。アルカディア軍だ。


 ステラが先頭になって槍を構えて山型の陣形になっていく。


「敵、突撃陣形です!」


「ゴブリン達を前に出せ」


 ゴブリン使いが現れてゴブリンの集団がゾロゾロやって来た。


 ド!ド!ド!ド!ド!


 ステラ達がゴブリン隊にもの凄い勢いで突っ込んだ!


 鈍い衝撃音がしてゴブリン達を弾き飛ばして突進して来る


「敵! 止まりません! ゴブリン隊抜かれます!」


 まるでゴブリン等いないかの様に突き進んで来る


「あんな少数、蹴散らすぞ。弓隊! 構えろ!」


 こちらの弓隊が慌てて構えた


「放てぇー!」 


 カナデが木の杖を両手に持ってしっかり構えた


「アイスウォール!」


 ステラ達とこちらの間に巨大な氷の壁が出来上がった


 放たれた矢は全て氷の壁に弾き返されていく


「な? 何だこのデカイ壁は? おい! ゴブリン達をもっと前に出せ!」


 目の前には城壁の様な壁が横一直線にそびえ立っている。あまりの光景に思わず唖然としてしまう程だ。壁の向こうにいるゴブリン達が蹴散らされていく。


 次第に城を取り囲んでいたゴブリン達が集結してきた

 

 すると突然壁が消えた


 アルカディアの弓隊が並んで構えているのが見える


「弓! 撃て!」


 ステラの号令が聞こえ、ゴブリン達が次々に矢で貫かれていく。


「何をしている?! こちらも矢を放て!」


 カナデが豪華な杖を構えた


「アイスウォール!」


 今度は先程より小さな壁が弓隊の前に築かれた。アルカディア軍から矢が上空に向かって放たれている。その矢がゴブリンの頭上から雨の様に降り注いでいる。こちらからの矢は氷の壁に全て弾かれた。


 辺りに冷気が漂っている


「王都の魔女だ! 呪い殺されるぞ! 逃げろ!」


 ジェロが突然、大声で叫んだ!


 カナデの前に見覚えのある魔法陣が浮かび上がって氷の壁が消えた。

 

 マジか?! ヤバイ!!

 

「zzzzzz……」


 

 ゴン!


 誰かにぶん殴られた!


「馬鹿かお前? お前が寝てどうする……」


 ジェロはしっかり腕に切り傷をつけていた。軟膏を腕に塗って治している。周りはまだ寝ているが少しずつ目を覚ます者がいた。人によって眠る時間が違う様だ。


「あれ? みんなどこへ行った?」


 前方にいたゴブリン達は矢を全身に受けて全滅している。もう西にはアルカディアの者達の姿が無い。残っているのは自分達だけだ。


「ぐっ……王都の魔女だと? そんな者がここに来たら全滅だ」


 目を覚ました者が寝ている者を叩いて起こしていく。


「北側に援軍を要請しろ! 敵はどこに行った?!」


 南の方からゴブリンの騒ぎ声が聞こえてくる。


「南のゴブリン軍が突破されました!」

「東のゴブリン軍が巨大な両手剣を持った敵に攻撃されています!」

「北の味方が寝ています!」


 次々に報告が入ってくるが混乱が増すだけだ。


「もうここは駄目だ。退却しかない……」


 そんな声が聞こえ出した。


「おいみんな! 城門の前に王都騎士団がいるぜ!」


 ジェロが無茶苦茶大きな声で叫んだ。


 満面の笑顔だ!


 みんな後ろを振り向くと



 ステラ達が『ハ』の字型の陣形で城門の前にいた


 硬く閉ざされていた城門が開いた


 1人の美しい騎士が白馬に乗って現れた


 ゆっくりと前に馬を進め


 ステラ達の間を通り抜け


 陣形の先端に収まった



応援有り難うございます

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