chapter 35 王
ご愛読ありがとうございます
登場人物 紹介 基本設定 更新版
ナック ダンジョンマスター アルカディア国王
のんびり生活が好きな青年
村外れの小高い山の上で1人暮らし
祖父から薬草作りと創薬の技術を学ぶ
釣りが得意
ザッジ 破軍将 木工師 アルカディア国 騎士団長
正義感が強い 熱い男
ナックの幼馴染 ヒナの夫
ヒナ ヴァルキリー 設計士
アルカディア国 各種設計担当
エルフ双子姉妹の姉 村長の娘
活発で陽気な女性
オレンジのショートヘア
ナックの幼馴染 ザッジの妻
ルナ ドラゴンクイーン
エルフ双子姉妹の妹 村長の娘
落ち着いた女性
青白色のロングヘア ナックの幼馴染
ビッケ マスターアサシン スライムテイマー
浜近くの小屋で1人暮らし
ナックの弟分 素潜り漁師
幼さの残る気楽な少年
カナデ 黒の魔女 裁縫師 村1番の黒髪美人
ファリス 特級司書 軍師
アルカディア国 大臣 軍参謀
小柄な女性 冷静沈着
金のセミロングヘア
黒の丸縁メガネを愛用
アオイ 刀匠 甲冑師 剣豪
アルカディア国唯一の店の店主
ハーフドワーフの女性 東の国出身
元気に挑戦する人
赤茶色のショートヘア
フグスライム 珍種 ビッケのテイムモンスター
村の状況は整いつつあった。
集落は木製の板で囲われてしっかり防護柵も置かれている。門は強固になり、鉄や銅が至る所に使用されていた。要所には矢倉があり、西門、北門、北西の角は特に立派な物だ。
村の外壁の外側には麦畑が作られた。これにより森と村の間が離れて見通しが良くなった。魔物が近づいてもすぐに発見出来る。
森も手入れをされた。村の近くは林と言った方がいいだろう。矢倉から林の中を見るとかなり遠くまで見える。所々に防護柵まで設置されていた。
村人達の装備品も整ってきた。アオイを中心にして装備の見直しが行われた。鉄、銅、木、皮を組み合わせて武器、防具を製作して、使う人に合わせて最適な物へ交換していった。
西の森の先に偵察部隊を派遣する事が立案段階に入った。
大規模駆除から全くゴブリンの姿を見なくなった為、実態調査が行われる事になった。クレア隊による特殊任務でゴブリンが来ないか確認をする。狙う巣は砦の西側でファリスが選定した場所だ。
クレア隊と中央広場で合流した。馬に乗って西の砦を目指す。道中でクレアから話しかけられた。親戚の受け入れについて感謝の意を伝えてきた。
「そんなに気にする事でも無いと思うけどな。よく分からないな」
クレアの母親は泣いていたからな。
「北の村は厳しい状況だそうです。新しい領主が重税を課しているそうで……祖父と祖母は病院にも行けないらしいです」
「それは大変だな……村に着いたら健康診断をしよう」
辺境地に対して重税か……新しい領主はどんな人なんだろうな
アルカディアに来た時の王子は適当そうだったな。あれなら楽だ。
「ちょっと聞きたいんだけど、クレアの馬は足が早いのかい?」
馬を並べて軽く走らせているので本当の速さがよく分からないのだ。
村では馬を全力で走らせる事がほとんど無かった。
「え? はい。皆さんと一緒の時はかなり抑えて走っていますね」
何? 抑えていたのか……
「クレア、種付けさせてくれないか?」
「え?」
「王都の牡馬でアルカディアの牝馬に種付けしてくれないかな?」
「も、もちろんいいですし、王都の馬同士でもいいです。王から必ず子を成して来るように言われていますので。そろそろいいかも知れませんね」
「そうなのか!?」
「優れた馬を得られるように選ばれていますし、状況によっては置いて帰る様に言われてます」
そんな事にまで配慮してくれていたのか!
凄い人だな。あれだけ大きな国の王だ。
何をどこまで考えているのだろうか……
選ばれた巣に行って中を見たがゴブリンの姿は無い。少しニオイが残っているので消臭薬を使用し掃除をした。洞窟の最奥と入り口に羊肉を置いて帰った。
一週間後、朝から釣りに行って大量のフグを釣ってきた。アオイが釣り針を作ってくれるので仕掛けの心配は無くなった。
クレア隊と一緒に砦まで行って特製スープを仕上げる。それを持って巣まで歩いて行った。
「居ませんね……」
長めに期間を取って見に来たのにゴブリンの姿は無かった。
居ない事も想定していた。もう少し奥の巣に行って掃除してから、肉と特製スープも置いてきた。
夕方、クレア隊と一緒に村に戻ると旅装束の一団がいた。
クレアの親戚6人だった。馬をクレアに頼んで手続きを行う。
まず、受付でジョブ鑑定をさせてもらい。健康診断をする。
「着いてばかりで申し訳ありませんが健康状態の確認をさせていただきますね。女性の方は女性の担当者に診断してもらいます」
お爺ちゃん、旦那さん、青年と健康診断をした。
健康状態は良かったので安心した。
「お爺ちゃん。長旅で大変だったでしょう。健康状態は問題無さそうです。ちょっとポーションを足腰に塗っておきますね」
ベットに横になってもらってポーションを塗ってあげた
「旦那さん。薬の入ったリュックサックを渡しますのでご家族で使ってください。薬が足りない時はここか店でもらってくださいね」
用意しておいたリュックサックを旦那さんに渡して、ルナに診察を代わってもらう。
リュックサックの中には錬金術で作ったポーション、鎮痛薬。創薬技術で作ったいろんな漢方薬、軟膏が入っている。各家庭に常備されている物をまとめておいた。
「家の準備は整ってますがお食事がまだでしょう。ここの食堂で食べて行って下さいね」
診断を終えるとクレアが館にやって来た。
「クレア、食事を食堂で用意してもらってみんなで食べて行ってくれ。済んだら家へ案内してくれな」
そうだ! 旅の疲れにはお風呂が1番だな!
受付にいるファリスに話しかける。
「ファリス、上手く調整してご家族がお風呂に入れるようにしてくれ」
よし! こんなもんでいいだろう。
ゴブリンを駆除出来なかったのは残念だが仕方ない。
ダンジョンに行ってフグスライムの様子でも見るか。
「俺は帰るよ。後は任せるから不便のないようにな」
そう言って館を後にした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
受付のファリスの所にクレアの親戚達が来ていた
「あの、ここに着いたら国王様に挨拶するように言われているんですがどこに行けばいいでしょうか?」
館の中は多数の若者、年配者、お年寄り、いろんな年代の人達がいろんな事をしている。作業スペースで裁縫をしたり、食堂の厨房で料理をしたり、会議室で話し合ったり、お風呂に入りに来たり、とにかく活気に溢れていた。誰が何なのかさっぱり分からない。
親戚達は戸惑いながら恐縮している。
「……さっきの人が国王です。もう挨拶は済みましたよ」
ファリスは笑顔で答えてあげた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
最近お気に入りの仕事、麦畑を耕していると商人ルドネが馬に乗って走って来るのが見えた。手を大きく振ると向こうも気づいたようで馬を止めて下馬した。こちらも馬を止め畑を出て道まで行って話をする。
「ナック様! すぐに王都から大工達が来ます。至急、建築予定地に案内して下さい。そこで狼煙を上げます!」
そんなに急いでいるのか。北門の門番に頼んで手配してもらう。商人ルドネの案内も頼んだ。
建築予定地は村と西の砦の間に決まっている。砦までの道を拡張して荷馬車が通れるように整備して、その途中に新たな村を作る事になっていた。あまり西の砦に近いと危険なので、かなり村寄りの位置になる。
全部向こうがやってくれるのだから任せておくだけだ。畑に戻って馬のお尻を棒でペチッと叩いた。
作業を終えて館に行くと商人ルドネとファリスが会議室で話をしていた。呼ばれたので席について話をする。
「今から3日で全ての建築を終えます。5日後に国境の橋にて罪人の引き渡しをお願いします。その際は罪人に厳しい態度で接して下さい」
何だか面倒になって来たけど引き受けた以上はしょうがない。
「ザッジ騎士団長とステラ隊で引き取りに行きます。ここを朝早く出る事にしましょう」
「罪人は歩きです。逃げて国に戻れば即死罪です。誰も逃げる事はないと思います。大変かと思いますがよろしくお願いします」
「ファリス、ザッジ騎士団長と詳細を詰めてくれ。俺は西の砦に行く。ジェロ隊に索敵してもらい、仕掛けた罠にゴブリンが掛かってないか見て来る。もしゴブリンが増えていたら駆除しておかないと新しい村に危険が及ぶ。しばらく戻らないぞ、今回は本気でやるからな」
「仕方ありませんね。王が自らゴブリンを駆除する国など他にはありませんが、もう諦めました」
「準備して明日出発します。安全確保に全力で努めますのでご安心を。別件ですが、牛を2頭調達して頂きたい。アオイに話していますのでお願いします。畑を耕すのが楽しくて、牛でも試してみたいんです」
「そういえば、ここに来た時もやられていましたね……ゴブリンもそうですが畑を耕す王もいませんよ」
やれば楽しいけどな。ゴブリンさえいなければ集中できるのに。
ゴブリンめ!
徹底的にやってやる!
応援よろしくお願いします
ふぐ実




