chapter 29 パフォーマンス
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登場人物 紹介
ナック 錬金術師 のんびり生活が好きな青年
村外れの小高い山の上で1人暮らし
祖父から薬草作りと創薬の技術を学ぶ
釣りが得意
ザッジ 戦士 村の門番 正義感が強い 熱い男
ナックの幼馴染
ヒナ 狩人 エルフ双子姉妹の姉 村長の娘
活発で陽気な女性
オレンジのショートヘア
ナックの幼馴染
ルナ 狩人 エルフ双子姉妹の妹 村長の娘
落ち着いた女性
青白色のロングヘア
ナックの幼馴染
ビッケ 漁師 浜近くの小屋で1人暮らし
ナックの弟分 素潜り漁師
幼さの残る気楽な少年
カナデ 裁縫師 村1番の黒髪美人
ファリス 司書 小柄な女性 冷静沈着
金のセミロングヘア
黒の丸縁メガネを愛用
アオイ 鍛治師 ハーフドワーフの女性 東の国出身
元気に挑戦する人
赤茶色のショートヘア
ヒナとルナの魔法をどう活かすか考えた結果、独立した魔法部隊を作る事になり部隊の再編成が行われた。
ザッジ隊 救援・魔法部隊 ヒナ ルナ所属
ステラ隊 防御力重視の砦防衛部隊
ミンシア隊 防御力重視の砦防衛部隊
クレア隊 補給・特殊部隊
ジェロ隊 斥候・陽動部隊 ビッケ所属
ナック隊 後方支援部隊 カナデ アオイ所属
ステラ隊とミンシア隊が主力になるので人数が多い。他は少数精鋭部隊でザッジ隊とナック隊は3名しかいない。
今日はウチで食事会をする事にした。
ザッジ、ヒナ、ルナ、ビッケ、ファリス、カナデ、アオイに参加してもらう。
ダンジョンの事を打ち明ける事にした。
ファリスとアオイは家に入るのは初めてだ。
たくさんの料理と村長からもらった10年物の葡萄酒を用意した。
乾杯をする前に少し話をする事にした。
「今日は集まってくれてありがとう。建国してからあっという間にここまで来た。今はようやく落ち着いてきた。みんなの協力のおかげだよ。感謝している。
ファリスとカナデとアオイにアルカディアの発展の為、重要な秘密を打ち明けようと思う。国の重要機密だよ。絶対に漏らさない様に」
軽く頷くとビッケが隠し扉を開いた。
ダンジョンだ
「中は後で案内するよ。ここにはかなりの物資が備蓄されている。アルカディアを少しずつ豊かにしたいと思っているんだ。でも、アルカディアらしさを失いたくない。王都みたいにしたいとは思ってないんだ」
「錬金術師の上位職ですね。おかしいとずっと思ってました。崩れそうで崩れないし、驚くほど順調に物事が進んで行きました」
やっぱりファリスは気付いていたか。さすがだな。
「錬金術師の中にはダンジョンを作れる者は結構いるらしいですが、運用がとても大変で不明な事も多いと文献にあります」
「そうなのか……自分だけかと思っていたよ。確かに本があるくらいだからな、他にいても不思議じゃないか。あまり隠す事でもないのかもしれないな……その辺は後で相談しよう。まず、アオイの鍛治技術を活かしたい。石炭、銅、鉄が準備できている」
「「 え!! 」」
鉄のインゴットを見本でみせる。鉄鉱を錬成して作った物をアオイに手渡した。
「こんな凄い物が……恐ろしい程に純度が高い極上品です。国の生産ギルドにいないと使えない様な品ですよ」
「そうなのか? 錬金術の本に書いてある通りにやっただけだよ。個人的には釣り針と魔法を防ぐ盾が欲しいけど、武器を欲しがっている者がいるからな……まあ、大量にあるから好きに使っていいよ」
「ありがとうございます! これは凄い事になりました!」
アオイはインゴットを頬につけて喜びまくっている。
「カナデには養蚕業と製糸業を担当してもらって布を作ってもらいたいんだ。ゼロからのスタートになるからとても大変だと思う。移民して来たクレアの母親が養蚕に詳しい。みんなで協力するからお願いできないかな?」
「そんな重要な事業を私が? でも素敵な服を作ってみたい。やるわ」
挑戦してみればいいんだ みんなで支えよう
「ファリスにはみんなに知識を与えて欲しい。既に多くの仕事を抱え込んでしまっている。ここにいる者達に上手く仕事を割り振って国の業務を教えて欲しいんだ」
「分かりました。農業もいい方向に行きそうです。同じ様に各産業も進めて行きましょう」
打ち明けてみるともっと早く話した方が良かったような気がした。
アルカディアは小さな国だ。急速に発展しても村人達がついてこれないだろう。迷いながらも慎重に進んでいくしかない。
食事をゆっくり楽しんでからダンジョンを案内してあげた。
翌日からアオイの店は超特急で内装が仕上げられ、最初に農具が作られる事になった。
鍛治施設が完成して運用を開始した
出来上がった物が少しずつ店頭に並び始めた。古い農具と交換する事も可能とした。金属を回収すればインゴットに出来る。
ザッジ隊とカナデで隣り村へ布を仕入れに行ってもらう事にした。結婚式の衣装に使う布も一緒に仕入れてもらう。
ファリスとデミールさんから麦も仕入れて欲しいと頼まれた。
村の外壁と森の間に広い更地が出来たので、そこで村人達の共同管理で麦畑を作り、実験的に栽培したいそうだ。
王都に行く時に見た麦畑は凄かった。あんな風にはなるとは思ってないけど楽しみだ。食料事情も変わるかもしれない。
アルカディア国で初めての結婚式が行われる事になった。
久しぶりのイベントなので全員参加が出来る様に、大規模なゴブリン駆除を実施する。これにより砦の人員も含めて2日間の全休日を捻出する。
アオイの店では武器を製作していた。ザッジの両手剣、ヒナの槍が試作品として作られた。使う人としっかり打ち合わせして作られたオーダーメイド品だ。
アオイは武器を製作する時は全て受注生産にする事にした。使う人とじっくり相談して意見を聞いてから、その人に合った専用の武器を製作する。
店頭にある武器は片手剣が1本だけ。多くの村人が使っている片手剣をアオイが最高の素材で製作した渾身の作だ。この見本を基準に自分の欲しい武器を注文する事が出来る。しかも……
料金は無料だ
あまりに見本で置かれている武器が凄いので、最初はみんな遠慮していたがとても目立つ広告塔がいるので次第に注文が入り出した。
その広告塔はザッジだ……
身長と変わらない長さで刃の幅が広い、馬鹿デカイ両手剣を背中に背負って歩いている。自分で作った木製の見本をアオイに渡してそれを元に鉄で製作した物だ。
かなりの重量のはずだが簡単に振り回している。スキルのおかげなのか鍛えすぎなのか、それは不明だ。
一方でヒナの槍はとてもシンプルだった。アオイとザッジの共同作で、木製の柄の部分はザッジが作り、ちょっとした飾りが彫られていた。
大規模作戦当日、中央広場では結婚式の準備が進められていた。こちらは村長に任せている。戦闘に参加しない人に頑張ってもらっている。
今日は全部隊出動で、万全の準備をしてきた。魔法部隊の初陣でもある。
「 全軍出動! 」
ザッジの大号令で砦へ移動を開始した。
ジェロ隊が先頭で出て索敵しながら進んで行く。
続いてステラ隊、ザッジ隊、クレア隊、最後にナック隊でファリスも同行している。ミンシア隊は砦にいる。
砦に到着して布陣についた。今日は羊入りの檻が3個も用意されている。ジェロ隊は既に敵を探しに行っている。矢倉には人がたくさん集まっている。西門の外をみんな息を飲んで見つめている。
檻の前にはザッジ隊が配置についている
ザッジとヒナが並んで立ち、後方にルナが控えている。
合図の矢が飛んで来た。緊張が走る。とても静かだ。
ゴブリンの集団が走って来た。10匹以上はいる。
ヒナが1歩前に出て槍を構えた。ゴブリンがヒナに襲いかかる。
ヒナは前に駆け出して集団に突っ込んで行った。
「ヤァーーーーー!」
声を上げるて槍を突き出すと一気に3匹を串刺しにして
そのまま集団の中央に進み
仁王立ちして
片手を空に向かって突き出した
その瞬間にヒナの周りに雷の矢が降り注いだ
真上からサンダーアローが直撃して丸焦げになった
ゴブリンは全滅した
「ワァーーーーー!」
矢倉から歓声が上がった。
次はザッジが前に出た
合図の矢が飛んで来て、ゴブリンの集団が来た。
巨大な両手剣を水平に構えた
ゴブリンがザッジに襲いかかる
ザッジは前に強く踏み込んで剣撃を放った
ゴブリン達は後方に弾き飛ばされて
全滅した……
巨大な両手剣を空高く掲げた
「ステラ隊! クレア隊! 出撃!!」
ザッジから出撃命令が出て西門が開かれ、2隊が飛び出して森の中に入って行った。ザッジ隊も同じく森の中に入って行く。
今日は徹底的に巣を潰して回る。クレア隊は掃除もしない。
森に各隊が散らばってしばらくしたら、合図の矢が飛んできた。
ここからはいつも通り矢で倒していく。
ミンシア隊にナック隊も加わって必死に矢を放つ。俺とファリスで矢筒を配って矢を補充していく。
何度か続けると次第にゴブリンがやって来る間隔が長くなってきた。
夕方にはほとんど来なくなった。砦では片付けが始まり撤収準備が整った。
徐々に各隊が戻って来た。みんな無事の様だ。
各隊、かなり森の奥まで駆除したと報告があった。
「全軍撤退!」
ザッジから大号令が出た。みんなで村への帰路についた。
明日は結婚式だ
次は30話目になります




