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chapter 19 種をまく人

 ご愛読ありがとうございます

 

登場人物 紹介


ナック 錬金術師 のんびり生活が好きな青年

         村外れの小高い山の上で1人暮らし

         祖父から薬草作りと創薬の技術を学ぶ

         釣りが得意


ザッジ 戦士   村の門番 正義感が強い 熱い男

         ナックの幼馴染


ヒナ  狩人   エルフ双子姉妹の姉 村長の娘

         活発で陽気な女性

         オレンジのショートヘア

         ナックの幼馴染


ルナ  狩人   エルフ双子姉妹の妹 村長の娘

         落ち着いた女性

         青白色のロングヘア

         ナックの幼馴染


ビッケ 漁師   浜近くの小屋で1人暮らし

         ナックの弟分 素潜り漁師

         幼さの残る気楽な少年


カナデ 裁縫師  村1番の黒髪美人 

       

 出発の朝、窓から大通りを眺めると多くの旅支度をした人達が慌てた様子で足早に外門の方向へ行くのが見えた。


 情報が漏れたか?


 いよいよ危ないぞ


 準備は宿の横に整っていた。相当な量の荷物が馬に乗せられている。

 仲間に加わったファリスとアオイをみんなに手短に紹介した。


 準備についてアストレーアから簡単な説明があった。魔法のスクロールは準備してくれて荷物に入れてあり、引きかえの依頼は後で分かるから出発していいそうだ。


「状況がかなり緊迫して来ています。前後を騎士が護衛する形で王都を出ます。指示に従ってなるべく遠くまで移動して下さい」


 美少女騎士達が毛艶のいい馬の側で準備している。こちらも同じように荷物をたくさん乗せていた。

 武器屋の人達が見送りに来ていた。励ましの言葉をかけている。


 モジャモジャヒゲのドワーフも来ていて弟子をよろしく頼むと言ってきた。

 みんなでアストレーアにお礼をして王都を出た。

 先頭に騎士が2名、真ん中に2名、最後尾に2名でその間にみんな守られて移動していく。

 王都を出る時はまた厳しい旅が始まると覚悟していたが、そんな事にはならなかった。計算された様に綺麗な宿に着いてゆっくり寛ぎ、朝出発したら夕方にはまた綺麗な宿に着いた。それの繰り返しでアルカディアの隣り村まで着いてしまった。

 豪華な宿を使えば無理なく進めるのだ。宿が一定の間隔であるからだ。

 隣り村を出てしばらく進むと大きな石橋が見えてきた。このままでは着いてしまう。さすがに申し訳ないので一旦停止してもらう。


「あの? ここまで来れば大丈夫だと思うんけど、村まで来るつもりかい?」


 美少女騎士のリーダー格の女性に聞くと手紙を差し出してきた。読んで欲しいそうだ。


 

 魔法のスクロールと引き換えにしばらく近衛騎士達を預かってくれ



 それだけ書かれていた。途中からなんとなくそんな気がしていたが、まさかと思い聞けなかったのだ。


「こちらは別に構わないんだけど、君達はいいのかい?」


「私達は王都に残ったとしても騎士ではなく召使いになってしまうのです。それよりはアルカディア国に行って、戻れる様になるのを待ったほうがいいとの判断です。村で落ち着いたら事情を説明しますので」


 アルカディア国への石橋を渡る。


 ここが国境の橋だ


 すぐに森の緑が濃くなり道が悪くなった。道は左右に蛇行し、傾斜も多い。ザッジの隣に移動して小声で話をする。


「ザッジ、まるで入って来るのを拒んでいるようだ。行く時は何も思わなかったが、帰りはそんな感じがしないか?」


「ああ、俺もそう思っていた。攻めにくく意図的にこうしているのか? まさかな……」


 村の門が見えて来た。どんなに田舎でも自分の住む所が1番だな。とてもホッとする。 

 門の所で村人達に盛大に出迎えられた。みんな元気そうで安心した。

 館を開けて荷物を片付けてもらい、部屋割りを決めた。騎士達は1階でファリスとアオイは2階にした。


「ファリス、君は大臣だがら奥の部屋を使ってくれ。錬金道具とかが置いてあるけどすぐに片付けるからな」


「あ、あの? ここは王の部屋なのでは?」


「ん? 俺は自分の家に住んでいるよ。ここにもあまり来てなかったからな。すまないがお風呂を交代で入れるように手配してくれ。みんな入りたいはずだ」


「は、はい! こんな豪華な部屋に住んでいいのかしら」


 空いている部屋に邪魔になりそうな錬金道具を詰め込んで、村長の所へ行くことにした。


 村長の家は館の裏の方にひっそりと建っている。村の中に森があるかのように木々が多くあり、色とりどりの花が咲いている。エルフの里を再現しているそうだ。敷地の整備は戦いから生還した人達や体の治療をしてもらっている人でやっていて、一緒に住んでいる人もいた。

 家に入ると応接間に案内してくれた。華美な装飾はないが森の中にいるような気持ちになる落ち着いた部屋だ。この家に来ると時間の流れがゆっくりになったように感じてしまう。

 村長が部屋に来た。説明は簡単なようで難しい。まずは自分がアルカディアの王になった事。葡萄酒と交換で武器を20本得たこと。国の大臣としてファリスを招いた事。武器屋の弟子を受け入れた事。美少女騎士達を預かる代わりに魔法のスクロールを得た事。そして内戦が始まる可能性がある事を話した。


「アルカディアは変わる必要があります。ご協力をお願いします」


 隠し事があるのは間違いないが……相手の方が何枚も上手だ。


「……ヒナとルナの魔法の訓練は引き受けましょう。よくやってくれました。これであの時に私が選ばなかった道を行ける」


 東の国との戦争のことだろう。


「しばらくは皆が馴染めるように少しずつやっていきます」


「それでいいでしょう。この村に客人を養い続ける余力はありません。騎士達には村の内外の警備の仕事をやらせなさい。後はファリスという大臣と話しますがどんな者か見るだけです。本当によくやってくれました。これで面倒な事をせずに済みそうです」


 面倒な事? どうせ聞いても答えないだろうけど気になるな。こちらも秘密がある。そちらがいろいろ隠すならこちらも隠すまでだ。


「ひとつだけ助言をしましょう。石橋は村人が渡る為に架けられた訳ではありません。兵士が渡る為に架けられたのです」


 中央広場に出て館をのぞくと調理場で料理をする者と風呂に入る者と荷物の片付けをする者に分かれて上手くやっているようだ。ファリスが指示を出している。幼く見えるが王が推挙するだけあって有能なようだ。

 ザッジが嬉しそうな顔で呼ぶので行くとアオイが仲間達からの餞別として防具をたくさんもらったらしい。徹夜して作ってくれたそうだ。いい仲間達だな。騎士達の荷物が多かったのはその防具だったそうだ。


 家の前ではビッケが待っていた。まあいるだろうと思ったけど。もう好きにやってくれと言って鍵を開けてやった。新しい武器を試したいんだろう。薬草畑の横の小川の水を飲むと王都の水より冷たくて美味しい。

 

 さあ種をまこう! 


 薬草畑に行って畑を耕して種をまいた


 小川から水を汲んで 水をまいた


 明日からアルカディア国が動き出す 種をまくんだ!



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