chapter 13 ファンタジー
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登場人物 紹介
ナック 錬金術師 のんびり生活が好きな青年
村外れの小高い山の上で1人暮らし
祖父から薬草作りと創薬の技術を学ぶ
釣りが得意
ザッジ 戦士 村の門番 正義感が強い 熱い男
ナックの幼馴染
ヒナ 狩人 エルフ双子姉妹の姉 村長の娘
活発で陽気な女性
オレンジのショートヘア
ナックの幼馴染
ルナ 狩人 エルフ双子姉妹の妹 村長の娘
落ち着いた女性
青白色のロングヘア
ナックの幼馴染
ビッケ 漁師 浜近くの小屋で1人暮らし
ナックの弟分 素潜り漁師
幼さの残る気楽な少年
カナデ 裁縫師 村1番の黒髪美人
ダンジョンのレベルが上がっているから、いろいろできる事が増えていると思うんだけどな。手探りでやっていくしかない。本にやり方は書いているが、現状とは相違点が多くてどこまで出来るか分からなかった。
「部屋を1個追加してレベル2の羊を1体設置してみよう」
「レベル2の羊かー ちょっとは強いかな?」
「戦ってみないと分からないな。キツい時は逃げればいい」
初期設定の部屋に通路ともう一部屋追加した設計図を書いて、その中に羊 レベル2と書きこむ。本に書いてあるのを参照にするとこれは出来るはずだ。できない場合は魔石が受けつけないから分かるらしい。
虹色魔石に設計図を近づけるとスッと吸いこまれた。
「最初の部屋の羊はレベル1から変更できないから、奥の部屋のがレベル2だよ」
「ふーん とりあえず両方やらせてねー」
「奥のは危なかったら逃げるんだよ」
ダンジョンの中に入り、羊にビッケが攻撃を仕掛けた。
さっと走り出して正面から羊に近づき、目の前でフッと右下に屈んで羊の首にナイフを刺した。
「この技を試してみたかったんだよー」
羊は1撃で沈んだ。
魔石5個 白羊皮1 を入手
「じゃあ、次いこー 今の必殺技でいくよー」
「お、おう!」
また正面から突っ込んで、フッと右下に屈み、首にナイフを刺してすぐに離れた。羊はほとんど動けずに消えた。
「うーん。 これも弱いねー」
また1撃だ。
魔石10 白羊皮2 白羊血2 を入手
「こ、これは凄いぞ!!!」
「んー 何かいっぱい出たねー」
「それもだけど この血だよ!」
「血がそんなに欲しいの? あんまりいらないような?」
「違う! ビンだよ! 羊からビンが出たぞ!!」
「んー まあいいんじゃないかなー」
ビンは使い道が多い。液状の薬やインクを作って入れるのに必須のアイテムだ。村では商人と交換するしかない。
「これでインクを大量に作れる。計算や文字を書く練習がたくさんできるな、ビッケ?」
「……それはよくないや……」
王都から戻ったら館で医者をやらないといけないし、教育の事も考えないといけない。あれ? 確かジョブ鑑定だけやっていればよかったはずだ。
いつの間にか増えてるな……
さっきの羊皮はビッケにあげた。血はすぐにインクにしてみた。
ビッケはさっきの戦闘で改善点が見つかったらしい。武器が短いみたいで、木を削って木刀を作っている。
「次はこの剣を使ってみたらどうだい?」
「ちょっと試してみようかな? もう少し奥まで刺したいんだよ。魚を締める時の感じとちょっと違ったんだよねー それと左側から攻撃できるように左手の練習もしたいなー ナック兄、付き合ってよ」
「右手だけではダメのかい?」
「この前のカナデみたいに腕をケガしたら、攻撃ができなくなるよー それに右にしか動かないのなら読まれるよ 羊が前にばかり突っ込むのと同じさ」
適当な長さの木をちょっと削って、練習用の武器を作って
2人で左手に武器を持って打ち合いをしてみる。
「思ったように動かないな」
「そうだねー これじゃあ 右手をケガしたら危ないよ」
ビッケは変なところにこだわるな。でも面白いと思った。
武器の長さや利き手の反対で戦ってみるとか、いろんな事を考えて戦っているんだな。いつの間にか必殺技とか作ってるし、工夫して戦うのが好きみたいだ。
「羊はまだ湧かないかな?」
ビッケが見に行ったけど、居なくてすぐに戻ってきた。
どうも気になるらしく頻繁に見に行くので、もういっその事ダンジョンの中で練習する事にした。しばらく素振りをしたり軽く打ち合ったりしてたら、ふと思い付いた。
「よく考えたら、ここはいろいろ便利だな。いつでも明るいし、雨が降っても関係ない。熱くも寒くもないし、虫もいないな。戦う以外に使ってもいいな」
「確かにここの方が本を読むにもいいねー」
「初期設定の羊は必ず、そこの真ん中にいるな。あそこを柵で囲えば襲われる心配もない。襲われても怖くないけどな」
簡単な柵を作って上手くいくか試す事にした。疲れたのでイスを持ってきて、本を読んで休息をとると思った以上に快適だ。ビッケは木をいっぱい持ってきて、木刀を何本か作り試している。
ダンジョンは快適だけど、いつも同じ明るさなので夕方なのか夜なのか分からない。感覚が狂ってしまう。お腹がすいたら夜ってことか。
ここまでくると羊が湧く瞬間を見てみたいが、王都行きの前に徹夜して体調を崩してしまう訳にはいかない。
外に出るともう夜だった。かなり長い時間ダンジョン内にいた。今度からダンジョンに入る際は鍵をして入らないといけないな。ダンジョン内からは外の事が全く分からない。ダンジョン内に残っているビッケに今日は泊まるように言って食事を作る。また羊肉のステーキだけど。
「ナック兄! 変な羊が出た! 灰色の!」
初期設定部屋の羊は狙い通りに柵に閉じ込められて、なにも出来ずに大人しくしているので奥の部屋を見に行ったら、灰色の毛の羊がいたらしい。
「たぶんちょっと強いな。恐らく上質な羊皮紙を作るのに必要な皮を落とす敵だよ。そいつは2人でやろう」
「ナック兄が正面からで僕が背後からいくよ さっきの必殺技を右から狙うね」
白羊で練習してから灰色に挑戦する事にする。ビッケは右手に護身用ナイフで左手に作った木刀を装備している。代わりに護身用ナイフを渡すと言ったけど木刀でいいらしい。手から肘の長さよりも少し長い木刀だ。
柵から白羊を出すと頑張って突っ込んで来るけど、全く相手にならない。余裕で避けれる。ビッケに声をかける。
「ビッケ、どうする?」
「剣を正面に構えて牽制して 止まった時にいく」
「了解だ」
落ち着いて羊の動きを観察するとやっぱり単調だ。戦い方が1択だとこんなにも弱いのか……ビッケはとても自然な感じで立っている。羊が少し動きを止めたので羊の背後にいるビッケをチラッと見て、羊に正対して剣を前に出すと一瞬、羊が身構えた! ビッケはスッと動き出し流れるように必殺技を見事に決めた。そして左足で羊の体に蹴りを放った。
「タイミングは分かったねー いい感じ」
「だが灰色は同じようにはできないな 睡眠魔法を使うかもしれない」
「前は魔法を使う時に動きを止めたねー その時ザッジ兄が突撃した。今回は僕が突っ込んで必殺技を狙うから、ナック兄は寝ないようにキズをつけるって作戦でどう?」
「その作戦でいこう。無理はしないよ、引く時は引く。さっきみたいな余裕はないと思うから、お互いの動きを意識して戦おう。ビッケの動きは予測しにくい。少しは慣れたが」
遠くから灰色羊を目視する。ビッケに軽く声をかけて一気に攻撃を仕掛けた。灰色羊に剣で斬りつけるとビッケが灰色羊の背後にスッと周った。剣の攻撃は当たった。だが微妙に外した感じがしたが、それなりに効いているみたいだ。動きが鈍い。
ビッケをチラッと見ると自然な感じで立っている。いつでもいけそうだ。軽く頷く。
灰色羊が頭突きを仕掛けようと姿勢を低くした瞬間にビッケと同じ技をやってみた。
前に出て右下に屈んで首を狙う!
剣を突き立てたが浅い。次の瞬間にビッケも背後から同じ必殺技を出した。俺は腹に蹴り加えて、剣で斬りつけた。ビッケは灰色羊のアゴを蹴り上げ、スルッとこちらに回り込んで、また必殺技を出した。
2人共、灰色羊から離れて様子を見る。
灰色羊は全く動けていない その場で倒れてしまった
魔石 3 灰色羊皮 3 灰色羊肉 3
灰色羊血 3 灰色羊骨 3 灰色羊毛 3
かなりの量のアイテムがドロップした。骨と毛は初めてだな。でも、目がいくのは魔石だった。いつもの小石サイズではなくて手のひらサイズだったのだ。
「何か綺麗に決まっちゃったねー 強さが分からないよ」
「ああ、もう羊の動きが丸わかりだ。相手にならない」
「血がビンに入って出るなら 肉は皿にのせて欲しいよね」
「大きな袋に全部入れておいてくれると更にいい」
自分の剣を見つめる。
良い剣だ……
使ってみて更に実感した
ビッケは武器に不満を感じている
この武器は俺に不満を感じているだろう……
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