金貸し友繋ぎ
あと1話でやっと転載します。正直、無駄が多すぎる今作、温かくない目で見て批判していただけると幸いです。
放課後。僕は階段をひたすら歩いている。屋上に上がる階段を目指す。
「はぁ。何で行くって言っちゃったんだろう。」
両腕を抱えてブルブル震えている。
何で見栄なんか張っんだろう。とため息を吐き、記憶を振り返る。
「ねぇ〜。本当に行くの?」
僕の机の前で不満げな顔で聞いてくる。
「うん。行ってみるよ。何か重要な事かもしれないしね。」
田所が満面の笑みでそう返すと、吉岡はため息を吐きながら言う。
「まぁ、いいけどね。でも、絶対に約束してよね。」
こちらを指差し続ける。
「あいつには同情しない事。」
こちらを真剣な眼で見ている彼女をはいはい。と軽くあしらった。
「もう。本当にわかったのかしら。」
頬を膨らませ、ずんっと椅子に座り直す。
そんなことを考えていると、屋上の扉の前に着いた。扉には入室禁止の張り紙が貼ってある。少し待っていると、彼がやって来た。
「ごめーん。待たせちゃった?」
彼の名前は『伏瀬ユサギ』このクラスでは陽気な人。正直、そこまで嫌うような人には見えない。
伏瀬くんは下から笑顔で手を振って来た。
「全然、今来たとこだよ。」
そう答えると伏瀬くんは右手を縦に立てて、縦に振った。
「こっち来て。」
そう言うと、右ポケットから鍵を取り出し、貼り紙の貼られた扉の錠を開けた。
伏瀬くんは両手を横に広げ言った。
「ここ、いいでしょ。ここで死んじゃった人がいて今は閉められちゃったけど、ここからみんなが見えて綺麗なんだぁ。」
そんな彼を見てるとふと思った。
「ここって、出入り禁止じゃなかったけ?」
「盗って来た。」
伏瀬くんは人差し指を口元に当て、にっこり笑った。伏瀬くんはそのまま続ける。
「あのさ、突然なんだけどさ。」
伏瀬くんは手を後ろで組んでモジモジし出した。
一瞬沈黙が起き、伏瀬くんが話を切り出す。
「1000円…貸してくれないかな。」
「えぇぇぇ⁉︎」
突然な要求に驚きを隠せなかった。
そんなこともつゆ知れず、伏瀬くんは頭を下げて頼み出した。
「ちょ、ちょっと待って、顔を上げて。」
そう言うと、伏瀬くんは渋々顔を上げた。
「ど、どうしたの、いきなりお金を貸してだなんて。」
田所が問い詰めると、伏瀬くんは右下を見ながら濁った瞳で。
「言わなきゃ、駄目かな。」
正直、禁句だったかも知れない。彼の目は死んだように霞んでいる。
「ご、ごめん。聞いちゃいけなかったかな?ハハッ。でも、お金なら僕よりも周りの人達に頼めばいいじゃん。」
焦った僕は必死で切り替えた。
「彼らにはこんなところ、見せたくはないんだ。ごめんね自分勝手で。」
(あれぇぇえ?何でこんな暗くなっちゃったぉぉぉ?)そんなことを思いながらも必死で抵抗する。コブシデッ
「そのぐらいの金額なら、親にでも頼れば。」
「君は、」
伏瀬くんは話を切るように言い出した。」
「君は、頼れたのかい?」
こちらを霞んだ眼で見てくる伏瀬くんの言葉に、喉を詰ませた。
「もう一度言う。お願いだ。お金を貸してください。」
伏瀬くんは深々と頭を下げ、重い言葉で言った。それに圧倒され、うん。とだけ、言ってしまった。
そう言うと、伏瀬くんは顔を上げ、今にも涙がこぼれそうな目をして言った。
「本当かい?」
「ま、まぁ、困っていたらお互い様だし、これくらいなら別に、大丈夫かなぁ?」
目をそらし、頭をかきながら答えた。すると伏瀬くんは涙を流しながらこちらに飛び込んでくる。
「ありがとぅぅぅぅぅう。」
伏瀬くんが急に飛び込んで来た重さで尻餅をついてしまった。けつが痛い。
けつを摩ってる僕にはつゆ知れず、僕に乗っかったままの伏瀬くんは顔を近づける。
「本当にありがとう。こんなこと頼めるのは、君だけだよ。」
さっきまでのムードは何処へやら、まぁでも、こんな笑顔を見てると、どうでもよくなって来た。これが信頼ってやつかな?
2人は教室に戻って来た。自分の席の前には吉岡さんが座っていた。ずっと思ってたけど、隣じゃ駄目なのか。
「あ、やっと来た。」
吉岡さんが少し、しけた顔こちらを見て言っている。
「それで、何話してたの?」
椅子を引いていた田所にズバッと聞く。
「いや、何でもないよ。」
(彼自身、何か事情がありそうだし、言うわけにはいかないよな。)
引いた椅子に腰を掛けながら答えた。
「そんな訳ないじゃん。」
顔を手を掛けた吉岡が呆れ顔でこちらを見て言う。
「いや、前の学校ではどんなだったのか?って事ぐらいだよ。」
田所がハハハと笑いながら答えると吉岡は「そう…」とふてくされている。
「あ、そうだ。今度の日曜なんだけど。」
吉岡は思い出したかのようにこちらを見て言う。
「あーごめん。その日は用事あるんだ。」
田所は首と手を縦に振って謝ると吉岡は「そう…」と落ち込んでしまった。
日曜日
「あ、高和くんこっちこっち〜。」
伏瀬くんがパチ猫像の前で手を振っている。
その前方には田所がいた。
「遅れてごめん。」
そう言うと伏瀬くんがにっこり笑って、
「前にもこんなことあったよね。」
と返した。正直、同じ話数の少し前のことだが、、、
「それじゃ、行こっか。」
伏瀬くんが親指で後ろを指して言う。
そこではいろんな店に行き、いろんな場所を見て回った。ただ少し不可解なのが、今日、伏瀬くんは1円もお金を出してないところが、お金がかかりそうなところには全く行ってない。けれどすごく楽しかった。友達はこう言うもんなんだな。と心の中で思った。そんな帰り道、伏瀬くんがかしこまった顔で話を切り出した。
「あのさ、もう1000円貸してくれないかな。」
伏瀬くんの言葉に少し戸惑った。
「で、でもさ、この前貸したお金、まだ返してもらってないよね?」
田所がそう聞くと、伏瀬くんは突然、話し始めた。
「俺さぁ、父親と離婚して母親身一つで俺の世話をしてくれたんだ。だけど、去年母親が癌で入院してさ、今ウチ、保険金で暮らしてるんだ。」
伏瀬くんはしんみりとした表情で言った。
「だからさ、あんまり、こう言った遊びに使う金はなくてさ、実はこの前借りたお金も全部遊びに使っちゃって、ごめん。こんな言い訳みたいなこと。」
すると田所は笑顔で答えた。
「大丈夫だよ。大変だったんだね。うん、君と遊ぶ分のお金は俺が持つよ。だからさ、その〜。」
田所は急に歯切れが悪くなった。
「友達!になってくれないかな。」
そんな田所の言葉に伏瀬は笑顔で答える。
「もう、友達じゃないか。」
その言葉に田所は下を向きながら、恥ずかしそうににやけている。そして帰り道を2人で歩いて言った。
そこは明るい部屋だった。誰の部屋なのか。そこには男が3人いた。
「友達になってくれないかな。」
1人の男が高い声で言うと、それに対して2人が高笑いをしていた。