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第一話 勇者として召喚された

 俺の名前は木村正一。27歳。

 しがないサラリーマンとして、普通の人生を楽しんだり楽しまなかったりしていたある日のこと、いつも通り会社から帰る途中で、突然強い光に飲み込まれた俺は、剣と魔法が当たり前の異世界はアルガリア王国に勇者のひとりとして召喚されてしまったのだ。ラノベやアニメで知識はあったが、まさか本当にこんなことがあるとは夢にも思っていなかった。


 参ったな、家のクーラー付けっぱなしだよなんて考えていると、俺と一緒に召喚された3人の勇者と一緒に王様からの説明を聞くことになった。めちゃくちゃ遠回しでわかりにくい説明だったが、まとめると


「最近、アルガリア王国の周辺で大量の魔物が発生し、その戦いに苦戦しているところを複数の隣国から攻められ、王国が大ピンチ。打つ手が無くなる前に勇者たちを召喚して形勢を立て直そう!ということで我々勇者4人衆は召喚された」とのことだった。

 300年前の勇者召喚の際の伝記によると、元居た世界に変えるためには、召喚した者の願いを叶える必要があるという説明も最後にちょろっとされた。

 かなり眉唾な話だが、俺以外の3人の勇者はそれを信じ、王様の言う通りに、この王国の為に戦うと心を決めたようだった。他の3人は高校生くらいでまだ若く、家族や友人のいる元の世界に帰りたいのだろう。唯一の希望であり、頼みの綱である王様の言うことを無下にはできまい。


 一方で俺はというと、この前途ある若者たちを元の世界に返してあげるべく、4人で手を取り合って頑張っていこう!!とは一切考えていなかった。

 この王国の為に働けという王様の態度も気に食わなかったし、そもそも本当に帰れるかも分からないような胡散臭い話を信じて、命がけで戦うなんてこと出来るわけがない。戦争とか痛そうだし、怖いしね。反逆罪とかなにかしらの理由で処刑されるってパターンも、この中性ヨーロッパ的な世界観では十分に有り得る。若者は若者で、おじさんはおじさんで生きて行こうぜ、と勝手に互いの健闘を祈った。


 長い説明の間に、どうにかしてこの城を抜け出さねばという決意が固まったタイミングで、ステータスチェックという行事が執り行われることになった。

 召喚された勇者たちのステータスを特殊な器具を通じて確認するということだ。教えられた通り、小声で「ステータス」とつぶやくと、視界にゲームの画面等で良く見るあれが表示された。


【 名 前 】 キムラショーイチ

【 年 齢 】 27

【 職 業 】 アルガリア王国の勇者

【 レベル 】 1

【 体 力 】 100

【 魔 力 】 100

【 攻撃力 】 100

【 防御力 】 100

【 俊敏性 】 100

【  運  】 100

【 スキル 】 なし

 ※【固有スキル】 初回パラメーター操作(+10000)


 強いのか弱いのかよく分からん、、、がスキルが無い辺り、あまり勇者感のあるステータスでは無さそうだな。と思い計測をすると、どうやら本当に他の3人とは違うらしいことが分かった。


「合算値が600・・・、これは・・・」


 測定士が驚くのも無理は無い。体力~俊敏性までの各パラメーターの合算値が600というのは、この世界の一般男性となんら変わらない数字で、勇者とは到底呼べないものらしい。実際他の勇者3人のパラメーターの合算値は5000を超え、スキルも強そうなものが並んでいる。場の空気がなんとも言えないものになる中、俺はおかしなことに気づいた。


【固有スキル】初回パラメーター操作(+10000)


の項目が測定用の紙には表示されていないのだ。つまり自分の視界の中のステータスにはある固有スキルの項目が、他人には見えていない。それとなく、他の勇者に視界のステータスと紙の表示内容が一緒かを確認すると、哀れんだ目で「一緒ですよ」と答えられた。ステータスが低いことを言い訳しているように見えたのだろう。「そんなじゃないやい!」と言いたくなるのをぐっとこらえ、俺はこっそりと固有スキルを発動してみた。


 すると、視界の中のステータスからポップアップが開き、各パラメーターの横に上向きの三角形のようなものが現れる。


【 残 り 】 10000

【 体 力 】 100 ▲

【 魔 力 】 100 ▲

【 攻撃力 】 100 ▲

【 防御力 】 100 ▲

【 俊敏性 】 100 ▲

【  運  】 100 ▲


 視界の中のやじるしに手を触れようとしてみると、触っている感覚がある。試しに運の三角形を押すと、表示に変化があった。


【 残 り 】 9999

【 体 力 】 100 ▲

【 魔 力 】 100 ▲

【 攻撃力 】 100 ▲

【 防御力 】 100 ▲

【 俊敏性 】 100 ▲

【  運  】 101 ▲


 この固有スキル、めっちゃ強いのでは。だって全部の残り数値を割り振ったら、他の勇者の倍近い合算値に仕上げることができるってことだから。三角形が上向きのものしか無いことと、「初回パラメーター操作」って名前からして、一度割り振った数値を再調整するのは無理そうだな。とはいえ、これはありがたい。

 計測用の紙を見てみると、表示された数値には変化がない。計測時点での数字を示すだけのようだ。

 ひとりで手を伸ばしたり、ぶつぶつと考え事をしている俺を見て、王様や他の勇者たちは少し引いているが、そんなことはどうでも良かった。まずはこのパッと見めちゃ弱いステータスを活かしてこの城から脱出せねば。俺は悲しそうな演技をしながら申し出た。

「私は、どうやらなにかの不手際で召喚されてしまったようです。このパラメーターではお役に立てなそうですので、勇者としてではなく、城を出て別の手段で暮らしていきます。」

 王様は少し驚いた様子だったが、すぐに了承してくれ、先立つものが必要だろうということで、お金も与えてくれた。扱いに困っていそうだったので、先方としてもありがたい申し出だったのだろう。


 そうして、無事最初の目的であるお城からの脱出に成功した俺は今、王都をぶらぶらと歩いているという訳だ。

 暫く滞在できる宿を探して、準備を整えたら、戦争が激しくなる前にはどうにかこの国を脱出したいところだ。あとでやっぱり戦えとか言われて、一兵卒として戦地に駆り出されるのはごめんだからね。

 まずはパラメーターの割り振りからだな。異世界生活スタートだ。



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