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ハンターの潮時

思いついて書きました

空が青い。


青い空を見たのはいつぶりだろうか。

空が青いことを忘れていたくらいに、この空は斬新だ。

巨大モンスターの出現。神を称する龍の討伐。ハンター全盛期と呼ばれたあの日あの時、何処からともなく湧き出した大量のハンターとともに、世界中で最悪で伝説級のモンスターが現れ始めた。

人々は恐怖した。

狩る力を持つ人は決意した。

プレイヤーと呼ばれる人間みたいなやつらは歓喜した。

多数のハンターとプレイヤー達により最古の龍が討伐され、解体され、街は潤った。名誉を得た。平和を得た。

だが一日後、最古の龍が復活した。

が再び俺たちハンターとプレイヤーによって討伐された。

再び街は潤った。今度は国も潤った。

全身分の素材を手に入れ防具を作った。

翌日、2匹が復活した。

2匹?いや復活したと言っていいのか?

倒したはずのモンスターが復活し、同じ個体が違う地域に湧いた。

プレイヤーの言う湧くという言葉が妙に当てはまっていた。

ともかく、雑草が生えてくるように地面から出てきたのだから仕方がない。

午前中に倒した2匹は午後には6匹になって湧いた。

それからは思い出せない。

倒し過ぎた俺たちは効率のいい倒し方を知った。世界の危機でも希少な資源でもない。デカイだけの何か。素材は過剰供給で値崩れを起こし、最近は龍の素材が家の建材に使われている。

戦えない一般人からしたら毎日が世界の危機でもあるが、ハンターからしたらもはや古龍討伐は娯楽と化していた。

一昔前なら尊敬を集めた【龍殺し】も今ではハンターの嗜みだ。

龍の素材は様々な薬品や防具となって弱き人類を支えていたが、今となっては龍の防具を纏った子供が強力な武器を振り回し娯楽がわりにモンスターを駆除しているし、食卓には龍の肉を使った料理が上がるし、家の建材以外にも、なんの効果も発揮しないアクセサリーなどにも使われている。

プレイヤー達は、俺たちよりも効率のいい殺し方を知っており、何匹も囲んで作業のように殺し続けた。

飽きたというのか、中には防具縛りなどと言って下着のインナー以外何も着ずに武器だけ持って戦う者や、壊れない鉄の塊を持って何時間も殴り続ける者、古龍の上に何分乗ってられるか競い始めるものまで出現した。

ハンターはやってられなくなった。それは疲れたからでも歳からくるものでもなく、潮時を感じたからであった。

プレイヤーというものたちがもたらした恩恵は大きかった。

最悪のモンスターと恐れられた龍はそこにはいなかった。

俺たちの出る幕ではなくなったと次々に隠居して行く。

それでもプレイヤー達からの依頼は絶えなかったためになるべく手伝いに出かけた。

完全に危機感をなくしていた。

いつのまにか俺自身もプレイヤー達と同じような規格外の力と精神力を持ち合わせていた。

だからこそ、古龍の攻撃を避けながらプレイヤー達と小型の草食竜の頭を蹴って遊んでいた俺は不意に現れた空間の歪みに吸い込まれるのに判断が遅れてしまったのであった。



そして冒頭に戻る。

空が青い。

こんなに危機感を覚えたのは久しぶりだ。

俺はいつのまにかここに一人で飛ばされて草の上に寝っ転がっていた。

上半身は半裸で、暑い皮のベルトで巨大な大剣をくくりつけている。

今は待機形態で触っても切れることはない。龍から作った生きた剣である。

待機中から解除した大剣は黒い稲妻を四方八方に撒き散らしながら正面以外も全てを破壊する。

"慣れた"俺にとってはこんなもの温泉のビリビリ風呂みたいなもの。

半裸にベルト、ふわふわの毛皮のベストを羽織り、悪魔の生皮で作られたマントをつけている。

下半身はちょっとした拘りでゴッツイ鎧だ。

これはプレイヤー達がどうやって知ったのか俺の誕生日に用意してくれたものだ。肌を浅黒く焼いてムッキムキの筋肉の鎧と昔受けた傷と、顎髭が目立つオヤジだが、こうやって祝ってもらえると嬉しい。

他の防具も同様の理由でもらったものだ。なぜ上半身は半裸の装備なのか問えば、粗暴な感じに似合う衣装だかららしい。


いつまでもステキな鳥のさえずりだとか美しい空を見ているのもどうかと思い、足のバネだけで起き上がり、剣を抜いて周りの木々をなぎ倒した。

黒い稲妻が迸る。

ギァアアアアア!!!龍の断末魔のような音を立てて眼を覚ます大剣は、怒りをぶつけるかのように稲妻はめちゃくちゃに放ち一瞬で木々を灰に変えて行く。

振り回された大剣はその風圧を持って積もった灰を吹き飛ばし辺りの空をグレーに染めた。


ああ落ち着く。やっぱり空は曇りの方がいいな。


雷から逃れた鹿のようなモンスターが逃げて行くのを見て軽く飛び上がって捕まえた。

そのモンスターは見たことがないような眼をしていた。黒い眼球に紅の虹彩、鹿と言ったら草食系なのにこいつはどうだか肉食獣のような鋭い牙と二つの頭を持っていた。

何だこれは。


"ギヨヨヨェエ"間抜けな鳴き声をあげていた鹿みたいな生物は、試しに生齧りすると激しく震えたあと大人しくなった。どうやら死んだらしい。

不味い。これはないな。腐った肉の味がした。よくわからないがこのモンスターは腐っているのに動いているらしい。

凄まじい腐敗臭がしていたし、皮膚はなく肉が丸見えだったので食ってみたがないな。

これだったら土とか食べた方がマシだ。



読んでいただきありがとうございます

同時連載している

転生悪魔は、ユグドラシルでエルフ名乗ってます

https://ncode.syosetu.com/n9017fv/

もよろしくお願いします!

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