あかつき
朝が来たらすぐに仕事場へ向かう。
昨日は、井の頭公園、今日は、日高屋から。
俺には帰るべき家がない。正確には、帰りたい家がないのだ。
新宿区に小さなワンルームを借りてこそいるが、もう1ヶ月は帰っていない。
ジメジメとした空気が嫌だし、何より人がいないことが許せない。あそこは帰る場所ではなくて、なんでもない場所なんだ。
俺たちみたいなやつは、日が昇れば、昨日も消える。
今日生き残るために仕事へ出かけて、昼飯に何を食べようかなあと考える。それだけで生きている。
だから、帰る必要もなければ、寝床もいらない。朝さえくればいい。
ああ、それなのに、いつまでたっても朝が来ない。
はやく。
はやく。
はやく、はやく、はやく。
真っ黒な夜が追い越してくる前に。
日よ、昇れ。腹よ、空け。
あんぽんたんな頭を止めろ。