第7話 病弱美少女、冒険者ギルドに行く。
その後、オレとリーンは二人で冒険者ギルドにやって来た。
【はぐれワイバーン】討伐による入金のために冒険者登録が必要なようだ。
オレたちの服装はさっき買ったばかりの新しい服装だ。
そのせいか、注目の的となってしまった。
「あの子、超かわいいな」「ああ」「どっちの子が好みだ?」「白髪の子」「木刀持ってるとか可愛すぎかよ」「ああ、なんか木刀だけが浮いてて、それがぐっとくるな」「だが黒髪の子もなかなか目を見張るものがあるぞ」「確かに」「だけどなんだ? なんであんな可愛い子が冒険者ギルドに?」「冷やかしか」「おいおい、絡みに行っちゃだめだぞ」「そうだそうだ。あの服装、どう考えても貴族のそれだ」「だが護衛は見当たらないぞ?」
じろじろ見てくる男どもの視線を感じる。
ギルドには併設された酒場があるようで、そこにいる男どもがオレたちを見て何やら騒いでいる。
「なあ、リーン。あいつらぶっ飛ばしてもいいか?」
「ダメだよ!? ちょっと酔っぱらっているだけなんだから、気にしちゃダメ」
「だが、なんか気分が悪い」
「でもクリアちゃん、こんなこと日常茶飯事でしょ? だってこんなにかわいいもん!」
そう言って、リーンはオレに抱き着く。
「おお! 抱き着いたぞ」「眼福眼福」「百合はいいっすねぇ」「クソッ、俺たちは何を見せつけられているんだ!」「かわいすぎる」「胸がっ、胸がっ」「白髪の子、俺と変わってくれ~。俺もむにゅっとされたい!」「俺は黒髪の子と変わって欲しいな! あの天使みたいな子を抱きしめたい!」
オレは小声で、
(リーン、なんか男どもからの視線がきつくなった気がするんだが……)
(まあまあ、ちょっとしたサービスだよ。それにあたしがクリアちゃんに抱き着けられるし、みんなハッピーだよね!)
(……)
確かに。
オレもハッピーだし。
オレの心は男だ。
リーンみたいな美少女に抱き着かれて嬉しくないはずがない。
(クリアちゃんはあたしに抱き着かれて、嫌?)
グサッ!!
至近距離から上目遣いのリーンの表情が、オレの心に刺さる。
オレのほうがリーンより少し背が高い。だから自然と上目遣いになってしまっているのだ。
クッ……
オレは何、動揺しているんだ!?
相手は14歳の女の子だぞっ!?
オレは自分が顔を赤くしてしまっているのに気付いた。
いかん、いかん。
そもそもオレの目標は最強になること。
こんなどうでもいいことをしている場合ではない。
オレはクリアからやんわり離れる。
しかし顔を赤くしながらこんなことしても、初心と思われるだけか……
(恥ずかしがらないでよ。こっちまで恥ずかしくなるじゃん……)
とリーンは小声で言った。
え?
リーンの顔を見ると耳まで真っ赤にしていた。
(恥ずかしがるなら、やるなよ……)
オレは小声で、ツッコミを入れた。
「うおおおおおお!?」「KAWAISUGIRU!!」「あんな子と結婚して~」「あんな娘が欲しい~」「なぜ俺は結婚してしまっているんだ……」「がわいいよぉ」「お、おい!? お前何で泣いている!?」「あまりに芸術的で、気付いたら涙が」「おいおい、お前まで泣いてるのかよ!?」「今日まで生きてて良かった」「すばら」「ぬおおおおおぉ、かわいいいいいぃ」
酒場は荒れた。
オレたちは本来の目的を思い出し、受付に行って、冒険者登録をする。
リーンが登録料を払ってくれた。
まずは名前、出身、職業を記入するようだ。
名前:リーン
出身:ヘロヘロ村
職業:細剣士
名前:クリア
出身:異世界
職業:剣聖
「出身イセッ、ぶふっ!? ……いえ、失礼しました」
受付嬢は突然吹き出しだが、すぐに冷静になる。
とんでもない量の液体が飛んできたが、オレは異世界の剣聖だ。首をひねり難なく躱した。
「えーと、名前と出身は一度登録すると変えられません。イセッ、ぶふっ!? 駄目これ! つぼった! ……えー、異世界でよろしいですか?」
「はい」
「ふー、ふー……あと職業は剣聖となっていますが……職業は後からの変更は可能ですが、剣聖はやめといたほうがよろしいと思います。本物の剣聖がいるわけで……よく思わない人は必ずいるでしょう。最悪、本物の剣聖によって粛清されるかもしれません」
「大丈夫だ。オレも本物の剣聖だからな」
「?」
受付嬢はオレの言葉の意味が分からなかったのだろう。
首を傾げる。
しかし、オレは変える気がない。
むしろこっちの世界の剣聖とやりあえるなんて、好都合だ。
「……ではこの情報で登録いたしますね。少々お待ちください」
オレの意志が固いことが分かったようだ。
「クリアちゃん、剣聖って本当なの?」
リーンが聞いてきた。
そこでオレは思い出す。
そういえば、リーンに剣聖だったこと隠してたんだった!
剣聖とバレる
↓
14歳の女の子が剣聖っておかしくね?
っていう流れを断つために剣聖なことを隠してたんだった。
まあでも、今考えるとそんな大したことじゃなくない? って思う。
全部、異世界なので! でごり押しすればいい。
だから認める。
「ま、一応な」
「流石、クリアちゃんだよっ! 奥義も使えるもんね!」
「あ、ああ」
ちょっと反応が予想と違って、驚いた。
リーンはやっぱりまだまだ子供だな。純粋すぎる。
満面の笑み。
その無邪気さで、オレも自然と笑顔になる。
「お待たせ致しました」
準備が済んだらしい。
「こちらの水晶に順番に手をかざしてください。まずはリーン様から」
それは、50センチほどありそうな大きな水晶玉だった。
リーンは水晶に手をかざした。
ピカーーーーーーン!!!!!!
うおっ!?
溢れんばかりの光が溢れ出てきた! 眩しい!
「すっ、すごい!? これはAランクに匹敵するほどの魔力量ですよ!?」
受付嬢も驚いている。
よく分からないが、すごいことのようだ。
流石はリーンだ。
「えー、では次、クリア様。お願いします」
オレはその水晶玉に手をかざす。
……。
水晶の中に、ぼんやりと光る光の粒がいくつか現れた。
眩しすぎてまともに見れなかったリーンとは全然違う。
光っているのかどうか分からないくらいに弱い。
「えー、こっちは普通ですね。Fランク。普通の女の子ですね」
「絶対、間違ってるよ!」
リーンが噛みついた。
「クリアちゃんの魔力量が何も鍛錬していない人と変わらないなんて、そんなの絶対おかしいよ! 絶対、何かが間違えてるよ!」
「いや、リーン。大丈夫だ。合ってるから」
「でも……」
そう。何も間違っていない。
オレはこの体になったことでかなり弱体化してしまっている。
特に魔力が低い。かなり低い。
リーンが信じられないのも当然だろう。
むしろ最初にリーンがオレのことを強いって、分かった方がおかしい。
「なあ、リーン。オレの魔力量はかなり少ない。なのになんでオレが強いって分かったんだ?」
「そりゃわかるよ。一挙一動がすごく洗練されてるんだもん……」
なるほど、技術的なところからか。
そしてリーンはぼそりと小声で、
「……洗練されすぎてて、美しすぎるもん」
と続けた。
美しすぎる、か。
やはり強さとは美しさに結び付くのだろうか。
「やっぱり異世界だからなの? 魔力量が少ないのって」
「オレも分からない」
本当は分かっているが、中身がおっさんであるということだけは隠し通さねばならない。
なのでオレは小さな嘘をついた。
ごめん、リーン。
「これで登録は完了ですが、飛び級制度を利用されますか?」
「なんだそれ?」
「元Sランク冒険者であるギルドマスターと戦っていただいて、実力あり、と認められれば最高でCランクからスタートできる制度です」
「へぇ……当然、受けるぞ!」
元Sランク冒険者か。面白い。
Sランクってのがどのくらい強いのかは知らないが、多分、強いのだろう。だって語感が強そうだ。
一旦、領主館に戻り着替える。
オレは着替えないが、リーンはせっかく買ってもらった高級服を汚したくないらしい。
そして冒険者ギルドに戻り、受付嬢の案内で訓練場に向かった。
「やっと来たか、待ちくたびれたぞ!」
腕を組み仁王立ちする大男が、大声でそう言った。
あれがギルドマスターだろうか。
なかなか強そうだ。
「二人とも試験を受けるらしいな! どっちからでもいいぞ? かかって来い!」
「じゃあ、あたしが先にやるよ……クリアちゃんにボコボコにされたら、立ち直れないかもしれないし」
後半部分はオレにしか聞こえないくらいの小声だった。
「黒髪の方……Aランク並みの魔力を持つってのは本当か?」
「うん、そうだよ」
「それは楽しみだな!」
リーンは武器が置かれた箱から、迷いなく一本の細剣を引き抜いた。
「うん、悪くない」
リーンは軽く素振りして、感触を確かめる。
「それでいいか?」
「うん」
大男は、その体に見合う大剣を構える。
リーンは半身になって、細剣を体と平行に構える。
「いつでもかかって来い!!」
「じゃあ遠慮なく」
そしてリーンVSギルドマスターの試合が始まった。




