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Another world online  作者: そにち
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メイド長の回想

今回は短いです。


あれは…そう。まだ平和で、暖かくて、あの人もいた、幸せな時だったわ。


 私達が暮らしていたルビリア王国は、北にある魔の森と、東にある鉱山型ダンジョンによる資源でなり立って居たの。食物などは魔道具で作り出すことが出来たから自給率は問題なかったわね。

 そして、魔物を狩って生活する冒険者達が魔の森の魔物を狩るためにこぞって集まったわ。そのおかげで元々小国だったルビリア王国は急成長を遂げて大国と呼べる力を手にすることも出来たの。まぁ、そこら辺は私が生まれるずっと前の出来事だからよく分かんないけどね。


 もちろん問題もあった。魔の森ってのは魔物がうじゃうじゃと沸くのはもちろん、一定周期で拡大していくの。それが《森化》と呼ばれるものよ。

 まぁ、対抗することは容易なのよ。魔の森から出て来るとある魔物が森を拡大する力を持っているから、そいつを倒せば良いだけ。ルビリア王国が生まれた理由の1つとして魔の森の《森化》を止める役割があったからそいつの討伐に関してはエキスパートだったしね。

 そして、ルビリア王国は発展していき、魔道具大国とも言われるようになっていったの。

 そんな最盛期に私は生まれたわ。代々侍女や執事、メイドを輩出する家の長女としてね。

 そして、私はメイドになることになったの。辛かったわ、とても厳しくマナーや礼儀作法、宮廷作法を覚え込まされたのよ。

 

 あの人と出会ったのは16才の時だったわ、親同士の政略結婚でね、相手は伯爵家の次男 ギル・フリージアって人だったの。もう、ホントに嫌なヤツでね!!口を開けば罵倒、罵倒、罵倒。クズとかアホとかばっか言われたわ。でもね、彼とっても不器用なだけでいい人だったのよ。

 私が家を抜け出して、魔の森にある美味しいお茶が作れる薬草を採りに行った時の帰り道にね、狼の魔物に襲われたの。

私も戦闘の心得はあったから油断しちゃって、足に一撃受けて動けなくなった時に颯爽とギルが現れてね、一瞬で魔物を討伐したの。

そしたら私に

「バカ女!!死んだらどうしてたんだ!」

って言って抱きしめてきたのよ。もう二度とこんな危ないことはしないでくれって泣きながらね。それで私、ギルに惚れちゃったのよ。


 もうそれからはラブラブでね、18才の頃に結婚して私はメイドに、ギルは騎士団に入隊してからは凄かったわよ。

 私はすぐにメイド長になったわ。元々そういう家系だったのもあって2年ちょいでメイド長の椅子に座ったの。ギルも腕っぷしは凄かったから騎士団の中でトップの黒騎士部隊に移動したわ。その時は2人揃って大喜びしてね、とっても幸せだった。


それから9年ぐらいして仕事が落ちついてきた時に子供が出来たの。もう、幸せの絶頂期だったわね。そして生まれたのは女の子で名前はリリィって名付けたの。可愛い子でね…お人形遊びが大好きだった。


 そこからはまた忙しくなってね。ギルは魔の森の魔物が増加してきたから毎日のように討伐任務にいって。私は第一王子が

生まれたからもうバタバタとっても忙しかったの。


 そしてリリィが12才の時だったわ。この国が滅んだのは。

魔の森の《森化》が始まったの。騎士団は総出で討伐に出かけて行ったわ。でもギルを含んだ達黒騎士部隊の一部は城の警護任務だったからよくサボって会いに行ってたわね。

 

《森化》ってのは一ヶ月続くの。今回もいつも通りに対処出来ていたんだけど…そんなときに魔の森で魔物の大量発生(スタンピード)が起きたわ。狼の魔物や、熊の魔物ならまだ耐えることが出来た…でもその時起きた大量発生(スタンピード)は…竜種の大量発生(スタンピード)だった……。

 

 いつもなら魔の森の奥地…つまりルビリア王国から恐ろしく離れた場所に、居るとされる伝説の化け物が、大挙として襲いかかってきたの。それでも持ちこたえることは出来た。魔道具のおかげでね。

 少しずつ減らしていくことが出来て、このまま行けば大丈夫って時の事よ。突然魔の森を拡大する魔物、イビルトレントと

一匹の竜が融合し始めたの…いえ、融合じゃなくてその竜を魔の森が浸食…《森化》した、そう言った方が良いわね。


 《森化》して、理性も何も無くなった竜は恐ろしく強かった。大地を踏みしめた場所から即座に魔の森の木が生えてきて、そこからイビルトレントが湧き出てくる。そして次から次へと竜が《森化》し始めた……。もう、それからは蹂躙よ。


 尾を一薙ぎすれば人が飛び…弾け飛ぶ。腕を薙げば纏う木の刃に切り裂かれ、肉塊となる。ブレスを吐けば千の兵が消えていく。魔道具の鎧によって強化された事も何も意味なかったわ。

 そして騎士団は壊滅した…民は逃げ、竜に喰われる。なすすべも無かった。

 城の中はもぬけの殻となったわ。残っているのは黒騎士部隊と死に場所をここに決めた…私だけ。


そして死んだわ。

目が覚めたら透けてる体の私がいたの。


 幸いだったのが、どうやって死んだのか分からないことよ。城を最後まで警護する役目の黒騎士部隊はどこに居るのか探すこともこの中庭とダンスホールの小さな場所に囚われた地縛霊の私には出来なかった。いえ…私のようになっていないかも知れないから、意味が無いのかも知れないけどね。

リリィは…逃がすことができた。竜種が現れた時に最後の乗り合い馬車に、乗せて避難させたから。

それだけが私がやって良かったと今も思えることよ。


ここまでがこの国の破滅の歴史。


何故私が成仏することが出来ないのかは分からないわ。

弟子を育てる事が夢だったからそろそろ成仏するかも知れないけど…。


ま、これで昔話はおしまい。


お茶、冷めちゃうわよ?



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