第31話 ノルド
「仲がいいな。。」
ノルドはエリオルを泣き止ますためにリーニャが抱きついている様子を、
草むらから見ながら一人呟いた。
ノルドには兄と妹がいたが、
あんな風にじゃれあったことはなかった。
兄も妹もスマートな体型をしていて、
二人とも要領がよかった。
ノルドは幼い頃からポッチャリ体型だった。
生来おっとりした性格だったので、
要領もよくなかった。
自分がどんくさいことの自覚はあった。
なんとかしようと色々努力はしてみても、
大体は空回りで終わる。
母が自分に対してイライラしていることも、
兄妹や周囲の人間が自分をバカにしていることも、
全部わかっていたがどうにもならなかった。
元々甘いものが好きだったが、
そんなストレスから逃げ出すためにバクバクお菓子を食べた。
体重はドンドン増加し、
母のイライラもドンドン増加し、
周囲にはドンドンあきれられていった。
悪循環だとわかっていても、
どうにもならなかった。
さびしくてさびしくて、
お菓子を食べているときだけは、
刹那的だが寂しくなかった。
だからついつい夢中で食べてしまって、
そのあとは罪悪感に苛まれた。
今日は珍しく母が急に外出して帰ってこないと聞いて、
嬉々としてお菓子を食べに行ったら、
変な子に会った。
一人は元気いっぱいの女の子で、
もうひとりはその女の子が大好きな、
その子の弟だった。
女の子はなんだか口が達者で、
ついつい女の子のペースになってしまったが、
不思議と腹はたたなかった。
むしろ楽しかった。
お菓子を食べることよりもその子と話す方が楽しくなってしまい、
あんなに楽しみにしていたお菓子を食べることを途中でやめて、
迷子だという二人を送っていくことにした。
リーニャの手はびっくりするほど、華奢だった。
つい感動してしまって、
恥ずかしながらずっと手を握ったままになってしまった。
リーニャは自分のブクブク醜い手を誉めてくれたが、
「あれじゃあ白い豚みたいよね!」
自分つきの侍女が裏で自分のことを白豚と言っていたのを
たまたま立ち聞きしてしまったのを思い出してしまった。
侍女を咎め立てたりはしなかった。
だって侍女がいっていることは本当のことだ。
自分はどんくさくて、ブクブク豚みたいに太った醜い人間なのだ。
思考はどんどん悪い方に行き始めてしまった。
すると、ふと、急に左手が温かくなった。
リーニャが自分の手を握っていた。
手を繋いで、一緒に行こうと言ってくれた。
それから彼女の弟と、三人で手を繋いで庭を歩いた。
不思議と心がポカポカして、
いつもの寂しさはどこかにいってしまった。




