第19話 姉の勘
「あ、あね、あねうえ、も、むり………」
しばらく走った後、
エリオルは力尽きてしまった。
リーニャ達は夢中で走っている間に王宮の庭の端まで来てしまっていた。
リーニャは後方を見て、
追っ手がないことを確認すると、
キョロキョロ周りをうかがって、
「あの小屋の裏に隠れよう!!( *・ω・)ノ!!」
リーニャはフラフラしているエリオルを引っ張って、
庭の隅にあった小屋の裏手に隠れた。
小屋は庭師が使う道具類がしまってあるような小屋だった。
ぐったりしたエリオルにリーニャは大丈夫と声をかけた。
「だ、だいじょうぶ、あねうえ、なんできゅうにはしりはじめたの?」
エリオルは小屋の壁に寄りかかりながらリーニャに聞いた。
「エリオル、無理に走らせてごめんね。
なんだかよくわからないけど、
あの人と一緒にいたら、
エリオルがいなくなっちゃうような気がして…」
リーニャは珍しく真剣な顔でエリオルに言った。
「………だいじょうぶだよ。
あねうえ、よくわからないけど、
あねうえの勘はよく当たるからね。」
エリオルは僕は信じるよと言って笑った。
リーニャはまたぎゅーっとエリオルに抱きついて、
スリスリ顔を擦り付けた。
これはリーニャの嬉しいときにする癖だった。
エリオルはこれをされると嬉しかったが、
最近はなんだかドキドキして落ち着かなかった。
二人がぎゅーっと抱き合ってると、
どこからかパキリと小枝が折れる音がした。
リーニャは人差し指を口に当てて、
音をたてないようにエリオルに指示すると、
エリオルはコクリと頷いた。
リーニャは小屋の裏からこっそり辺りの様子をうかがうと、
庭木の向こうからコソコソ辺りの様子をうかがいながら、
歩いてくる人影が見えた。
リーニャはまた裏に引っ込んで気配を消していると、
人影は小屋の裏ではなく、
小屋の中に入っていった。
ガサゴソガサゴソ
小屋の中からは何かを探すような音がした。
リーニャとエリオルは自分達を探しているのかもしれないと緊張した。
しかししばらくすると、
何かを探すような音はなくなり、
小屋の中から、
「うまーーー」
という声が聞こえてきた。
リーニャは不審に思ったが、
どうも人影はひとりしかいないようだった。
リーニャはエリオルにここにいるよう身ぶり手振りで伝えると、
小屋の表に回った。
小屋についている扉は少しだけ開いていた。
リーニャはこっそり中の様子を伺った。
「うま∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽い!!!」
小屋の中ではリーニャと同じ年くらいの少年が、
沢山のお菓子をムシャムシャ食べていた。