第六事 炎騎士の末路
「お前の目的はなんだ?」
「目的……か、そうだな、復讐というところだ」
「何への復讐だ?」
「わたしを封印した人間どもへの復讐だ」
「ふんっなら俺とおんなじだな。俺もこの世界にうんざりきてたんだ。……どうだ、手を組まないか?」
ヤッベエエエェェェ!!勢いで嘘ついちまったぜ!だがいける!このまま時間を稼げばきっと誰かが助けにきてくれるはずだ。
「手を組まないかと言ったな?」
「ああ、そうだ」
「断る」
「な!?」
「断る、と言った。私が手を組む理由がないだろう?そして貴様のこの話し合いは時間稼ぎとみた。よって貴様を速やかに排除する」
「くっ」
やっぱりばれていたか。応戦するしかないのか?
「……滅べ」
次の瞬間、炎騎士が消えたように見え……
「ぐああああ!!」
動くところを目で捉えられないほど速い炎騎士の一撃により体が後方に吹っ飛ばされる。
何が起こったのか、それさえもわからず、状況を理解し立ち上がろうとしたとき、二撃目の蹴りあげが繰り出される。蹴飛ばされた俺の体は宙に浮いている。
「カインさん!!剣を握って!!」
ローシェの声が聞こえたと思った瞬間、俺の体は勝手に動き出した。
空中で剣を引き抜き、体を反転させしっかりと足から着地すると、次なる炎騎士の攻撃をその剣で跳ね返していた。
『カインさん!聞こえますか?私は今、カインさんに【同調】しています!説明はあとでするので今は何も言わず炎騎士を倒してください』
『お、おう、なんとなく強くなったっぽいのはわかった』
ここで声を出さずに心の中だけに語りかけることができたのは、和樹の臨機応変な対応の賜物であろう。
「ほほう……目の色が変わったか……貴様精霊使いだな?」
「そうなるのかも知れないな、契約した覚えはないが」
「なるほど、精霊に愛されるとは珍奇な人間も居たもんだな。確かに、精霊が居たならあの魔法も頷ける」
「……もっかい打ってやろうか?」
『魔力切れです!暫く待ってください』
「ああぁ、ごめん!やっぱ今のなしで……」
「そうか、ならば一気に決着をつけてやる」
「くっ」
炎騎士が剣を抜き一瞬のうちに間合いを詰めてくる。
その動きは先程と違い遅く見える。
……これなら、いける!!勝てる!!
俺は剣を強く握り直すと、炎騎士の攻撃に合わせて剣を動かした。
「ガキィィン」
お互いの剣がぶつかり合う音が、強く響いた次の瞬間には俺は二度目の攻撃を繰り出していた。
「ぜぇぁぁあ!!」
二撃目はあっさりとかわされたが、そこから連続攻撃に繋げていく。
剣と剣がぶつかり合う。お互いに一歩も引かない。
「はぁ、はぁ」
だが、体力で負けていた。
戦ってるうちに段々と防戦一方になり、ついに体勢を崩した。
「さらばだ」
最後の炎騎士の攻撃はとても遅く見えた。だが体は動かない。
左から振り下ろされる炎騎士の剣はとてもかわせないだろう。
……短い旅だったな。
……もっと、生きれたかもな。
……ローシェ、ごめんな。
……俺どうなるんだろう?
……これはすべて夢だったのか?
……夢じゃないよな?
……あっちに戻るのか?
……いや戻りたくない。
……地獄(現実)へ……戻りたく、ない。
死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない。
『カインさん!!』
ローシェの声が聞こえる。
『……ローシェ』
『カインさんはまだ死にません!!戦えます!!』
『……いや、俺には無理だ』
『そんなことありません!!』
『……ごめん。もう戦えない』
『弱気にならないでください!!』
……まだ、死ねない。ここで、死ぬわけにはいかない。
目を覚ませ。俺はまだ……戦える!!
「お、うおぉぉぉ!!」
その瞬間、俺の剣が輝きだし、ものすごい速度で炎騎士の剣を弾いた。
「なっ!?」
炎騎士が驚きですっとんきょうな声をあげる。
すると次は剣が勝手に動きだし、炎騎士の胴体に横凪ぎを喰らわせる。
炎騎士が剣でなんとか弾くも、斬撃の勢いで後退する。
ーーそれから、俺は体を剣に支配されたーー
自分の体が自分ではないかのように動き出した。
まずは、間合いを一気に詰め、右上から左下への一撃。と見せかけて当たる前に左手に持ち換え、更に体を反転させ、そのまま初撃を喰らわせる。
ここまでの動作を行うのにまだ1秒も経っていない。
「くっ、貴様その動きは……」
間髪入れず振り下ろした左手のバックハンドで炎騎士を弾き飛ばし、右手に持ち換えてそのまま突きを繰り出す。
その突きは炎騎士を通り越し、その風圧で遠くの気が大きく揺れる程だった。それがとどめの一撃になり、炎騎士は倒れ崩れた。
「はぁ、はぁ、勝った……のか?」
「やりましたねカインさん!!」
「ああ、やったんだな、それよりローシェ、さっきの【同調】の説明をしてくれ」
「わかりました。【同調】とは、主に精霊が人間の中に入り込み、その能力を開放することで一時的に人間の能力を飛躍的にあげるというスキルです。【同調】を発動している時は目の色がかわるらしいです。カインさんの場合は私と同じオッドアイの翡翠色と瑠璃色です」
「なるほど……じゃあ、さっきの俺の奇跡的な剣技もローシェのおかげか?」
「いえ、その時はカインさんの体から追い出されるように【同調】が切れたので私の力ではありません。何か別の力、恐らく剣の力です。」
「そうか、あの時この剣を選んで良かったよ」
「そうですね、では炎騎士の装備も頂いちゃいましょう」
「ローシェはちゃっかりしてるんだな」
「はい?そうですか?倒した魔物の戦利品を貰えるのは普通かと」
「そうだな、それはそうとしてクラクラするんだが、休んだ方がよろし?」
「え、大丈夫ですかカインさん?」
「ああ、だいじょばない」
倒れた。どうしよう。