第五事 幻の武器と俺の水龍
関所を越えて、俺たちはまず武器屋に向かった。
理由は単純明快。ローシェに武器も持ってないのかと馬鹿にされたからである。
「ローシェ、武器屋ってどれだ?」
「えーと、あれですね」
なぜローシェに確認したかというと、文字が読めなかったから。
文字が読めたのは例のあの空中投影の画面だけだった。
いざ町へ来てみると他の文字は全く読めなかった。そのため、仕方ないから今はローシェに読んでもらってる。勉強しなきゃな。
そう物思いに耽っていると武器屋についた。
「こんにちわー武器屋マキシムへようこそ!!」
元気な売り子さんが挨拶してくれた、この店の名前は武器屋マキシム。売場となるとメインの建物の横に工房がくっついている店だ。この辺は似たような建物がところ狭しと建ち並んでいる武器屋通のようだ。
「どのようなものをお探しですか?」
「う~んと、この店で一番いい武器を見せてほしい。」
「……お客さんお金はおありで?」
売り子さんがお金はあるのか?と問いかけてきたが今の俺の姿を見ればそう言いたくなるのも仕方ないと言えよう。
だがしかし、今の俺は大量のお金を持っている。具体的にはここに建ち並んでいる店すべて土地ごと買収しても所持金半分いかないくらい。
「ああ、お金は気にしないでいい」
「う~ん……わかりました。少々お待ちください」
と言い残すと彼女は奥の工房の方へ行ってしまった。
暫くすると工房から中年くらいのザ・鍛冶屋っていう感じの男の人が出てきた。
「俺の名はマキシムだ。まずは俺の店を選んでくれてありがとな。んで、なんだ?一番いいのがほしいだと?」
「あ、ああそうなんだ。お金は気にしないでいい」
「ほぉ?なるほど……ならば」
俺がマキシムさんの迫力に気圧されていると不意にマキシムさんが工房に戻りふたたび戻ってきた。
「これでどうだ?」
「おおっ」
マキシムさんの手には白銀に輝く一本の剣が握られていた。
「この剣は俺の生涯の最高傑作だ。というのは嘘で、これはうちに代々引き継がれている剣だ。巷では幻の剣とさえ言われているようだがな」
「お父さん!それを売っちゃっていいの!?」
「いいんだ。確かにこの剣は少々危険かも知れんがこの小僧ならしっかりと使ってくれる気がするんだ」
「そ、そんなにすごい剣を売ってもらってしまっていいんでしょうか?」
「その代わり高くつくぞ。1ガルソルでどうだ?」
武器で百万は正直言って高過ぎると思うんだが、今の俺なら風の前の塵に同じだ。
「わかりました。ではそれで」
「おうっ、毎度」
「では一括で払いますので少々お待ちください」
俺は腕輪の赤いボタンを押し画面を開くと数字を1、単位をガルソルに合わせて引き出しボタンを押した。すると一枚の金貨が出てきた。
「これでお願いします」
「確かに、これは金貨だな。こんなもん滅多に見ないぜ。どこで入手したんだ?あといきなり金貨が出てきたように見えたんだが?」
「お金の出所は事情があって言えませんが、白金貨が出てきたのは、まぁ特別なスキルってとこですかね」
「なるほど、これ以上の詮索はしないことにするよ」
「そしていただけるとありがたいです」
やはり俺のスキルは特別なようだ。確かにこれがあれば便利だもんな。今もなお秒間入手金で増え続けてるしな。
「んーそれよりも、そこにふわふわ浮いてるのはなんですか?」
あ、すっかりローシェの存在を忘れていた。
「あー、こいつはロー……」「わたしはローシェ。カインさんの精霊ですよ」
俺が話してる途中にローシェが割り込んできた。なんだよもう。
「へぇ~あなた精霊使いだったのね!」
売り子さんが子供のように目をキラキラさせながらこちらを見つめてくる。
「オルア?私にはまったくみえんぞ?」
「だーかーら、この人は精霊使いなの」
「まぁ、そんなところですマキシムさん。……ローシェ姿を見せろよ」
俺も特に隠れろなどと言ったつもりはないが、ローシェは姿を隠して俺についてきていたみたいだ。
「こんにちわ、カインさんの精霊のローシェです。マキシムさんもよろしくおねがいしますね」
「お、おう」
「それにしても、オルアさん?でしたっけ、あなた魔法の才能ありますよ」
「へぇ!?」
そんなに驚いたのか、オルアさんがすっとんきょうな声をあげる。
「な、なん……わたしに、まほ、う?」
「はい!光属性の魔法は特によく成長するでしょう」
「俺たちの家系は代々魔法に適正がないからな、オルアやったじゃないか」
「これからは魔法について学ぶことをおすすめします!」
「でも、精霊さん、なんでわたしが魔法を使えるようになるってわかるの?」
「姿を隠しているわたしに気付いたからですよ。この【幻視鏡】はよっぽど魔法に適正がある人にしか見えませんので」
「そうなんですか?わたし、頑張ってみます」
そういった会話があったあとに店を出た。
マキシムさんには他にいい店をいくつか教えてもらった。俺を旅人だと思ってか、宿屋や雑貨屋等も色々教えてくれた。
「ローシェ、変な匂いしないか?」
突然襲ってきたなんともいえない匂いにおもわず顔をしかめる。
「確かに、変な匂いがしますね」
「ローシェ、あれは炎じゃないか?」
「あ、火事が起こってますね。どうします?消しにいきます……」
ローシェが言い終わる前に俺は電光石火のごとく駆け出したーー炎とは逆の方向に。
「ごめんローシェ!逃げるわ!」
「……はぁ、しょうがないですね。もう」
あんな危ないとこに突っ込めるかってんだ!絶対無理あんな火事は!!
炎から逃げるようにひたすら走る。家々の間を抜け、ついに拓けた所にたどり着く。あとこの角を曲がれば逃げ切れるだろう。
と思っていたのも束の間。目の前は火の海です。なんでや。
引き返そうとしてもローシェが立ち塞がっっている。もっとも全然塞がってないが。
「な、なななな、なんで!!なんで目の前が火の海なんだよ!!」
「カインさん!!今からあの炎を消します。わたしの言うとおりにしてください!!」
「あ、え?うん?でも、火、火が!?」
「やりますよ!!」
「は、はいぃ!!」
あんなに血気迫った顔で言われたらうなずくしかない。
「どうすればいいんだ!?」
「右手を前に向けてください!!」
「こうか?」
「はい!次はわたしの魔力を媒体にして【水龍乱舞】と呪文を唱えてください!!」
「なんかわかんないけどわかったぜ!!いけっ【水龍乱舞】!!」
呪文を唱えた瞬間、ローシェの体から何かが大量に流れ込んできた気がした。
その直後俺の右手から大量の水が出てきて、それはまるで生きている龍のように火事の炎を次々と消していった。
右に左にと縦横無尽に駆け回る水龍に呆気にとられている間に火事の火が完全に消滅した。
「ナイスです!カインさん!」
「……いや、まだのようだが?」
火事の消火は終わったが、火事の火元に炎を纏った騎士がいるのを俺は見逃さなかった。
あの量の水を浴びてもなお消えない炎を纏う騎士。もはや人間ではな事は明らかだ。
「人間よ、我と戦うつもりか?」
喋った、だと?
「……あ、あんたが俺らに害をなすならな」
「そうか、それにしても久しぶりにみたぞ【水龍乱舞】と言ったかな?かつてわたしを滅ぼした技をまた見れるなんてな……お主が使ったのか?」
「ああそうだ。この火事はお前だな?」
「フッ、そうだが?」
「やっぱりか。残念ながらもうこれ以上好き勝手はさせねぇよ?」
「ほほぅ、ならば見せてみよ貴様の戦いを」
「いやまてまて、正直言って勝てる気しないから戦いたくないね。しかもなにも聞いてないしさぁ?あんたが好き勝手暴れたいだけなら暴れればいいさ。でも目的があるならもしかしたら俺と敵じゃないかもしれないだろ?頼む、少しあんたと話がしたい」
「……うむ、いいだろう。話を聞こう」
「ありがとな恩にきるぜ」
という名の時間稼ぎ。
速くこーい!!警察でも王宮騎士団でもなんでもいいから!!
ん?勿論戦うつもりなんてありませんよ?