第一事 現状確認
初級からいくらか修正しました。
目の前に広がる見たこともない広大な景色を見ながら、俺は必死に脳みそを働かせていた。自分のいる場所がわからない。
「ここは、北海道なのか?」
と考えたが邪推でしかなかった。段々頭がこんがらがって来て、パニックになってしまった。
「いやいやまてまて、俺のすんでいるところはこんなに田舎ではなかったはずだし、さっきまで朝だったような気がする……あ」
ここまで来て少し前の出来事を思い出してここがどこなのかやっと理解した。認めたくはないが。
「ここは、異世界……か」
本当に来てしまったのだと思うと少し怖くなってきた。だがまだ確証は得ていない。
「鏡……投げやがったな」
と少し怒り混じりで呟いた。
老人が鏡を投げた瞬間、こっちに飛ばされたということになる。
「これからどうすればいいんだ?」
と再びぼやくと何処からか声が聞こえてきた。
「それはわたしに任せててください」
「ん?誰だ?」
「ほーらわたしですよー」
どこからか聞こえてくる声に警戒心を抱きながら、キョロキョロと声の主を探していると不意に前から何かが飛び出した。
「わぁ!」
「どっわあああぁぁぁ!!」
思わず叫んでしまった。だって、だって……脚が、ない?しかも全身血まみれで、髪の毛で顔は良く見えない。さらに不穏な空気を纏っていて見た瞬間恐怖に襲われる。それでいてなぜか声は明るい。
「冗談……ですよ?」
と彼女?が今度は野太い声で言うと、彼女の体を淡い光が包みこんだと思ったのも束の間今度は物凄い強い光が俺の眼球を襲った。
「ちょっ、やめ、目があああぁぁぁ」
しばらくして光がおさまっても俺は目を開けられなかった。さっきの恐怖が頭をよぎったからだ。
「もう、目を開けてもいいですよ」
「ん?」
言われるがまま目を開けると……
「な、に?」
俺は目を見開いてその美しい姿に魅了されていた。
先程までの恐ろしい姿とはうってかわり、美しい翡翠色のワンピースに、可愛らしい同系色の靴を履いている。
目の片方の色は翡翠色だが、もう片方は瑠璃色でそれがまた可愛くなっている。
体躯は手のひらを広げた程度の大きさだが、手のひらに収まるくらい小さいながらもすらりとした腕や脚が妙に色っぽい。
これはファンタジー系で言う、いわゆる【妖精】というものに似ている。
「初めまして!妖精のローシェです!」
「妖……精?」
「はい!妖精ですよ!久しぶりに気になる方を見つけたので出てきちゃいました!!」
最初の幽霊モードを除けば、ものすごく元気な子だな、というのが第一印象になる。美しく清楚ながらも明るく活発で良くしゃべる。これが俺の分析だ。
「いやーそれにしてもあなた、どうやってここにいきなり表れたんですか?転移魔法でもつかったんですか?」
「いや、それは、だなぁ……ちょっと……色々な」
「なにか隠してることがある、または隠さなければいけない状況である。ということでまちがいないですかね?」
「……まぁ……そういうことだ」
一応、現実世界のことは伏せていた方がいいだろう。もしかしたらそれが致命的な状況になるかも知れないからな。
「なるほど、わかりましたこれ以上の詮索はしません」
「ああ、そうしてくれると助かるよ」
ローシェはもっと自由奔放な妖精だと思っていたが、以外に物分かりがいいようだ。あと、この世界の妖精は小さいんだな。
「きみは何者なんだ?」
「わたしは妖精……というよりは精霊に近いかも知れませんね。そんじょそこらの妖精とは格が違いますから」
「オーケーオーケーとりあえず君のことはわかった」
それよりまず確認しなければならない最優先事項がある。
「それよりも知りたいことがある。ここはどこだ?」
「そんなことも知らずにここに近づいたんですか?」
「ああ、しらないうちにこう……ピカーッと」
「フムフム転移魔法を使ったのではなく使われた可能性が近いですね。っとこれ以上の詮索はしないんでした。えーとここの場所でしたっけ、ここはウルレキア街道の外れのカストルという場所です」
ローシェが俺の後ろへ指を指した。その方向を見ると……
「うわぁ」
そこには目を疑う程にでかい木が立っていた。さっき見渡した時は見えなかったがそこにちゃんと木が生えている。だがそれが特に気にならない程美しく立派な木だった。
「この木はカストルの木と言って大昔に一人の村人が蒔いた種から育ったといわれていますが、実際は一人の精霊が落とした種から育ったものなのです」
「んで、その精霊がお前って訳だな」
「おー鋭いですね、正解です。わたしも普段はこの木とともにここに住んでいますが今日からはあなたのための精霊です」
「お、おうなんかしらないけどありがとな。そうだな……とりあえず町か村へ行きたいんだがどうすればいい?」
「はいわかりました調べてみますね」
と言うとローシェの体が輝き出した。さっきの閃光とは違い、とても優しい光だった。
「一番近いのでここから北へ20kmくらいの所に少し大きい町があります。南にも村がありますが小さすぎるので北の方がいいと思います」
「よしわかった。北の町に行こうか」
「わかりましたではまずはウルレキア街道へ行かなければなりませんね。こっちです」
と言うとローシェは人が歩くくらいの速度で空中を浮きながら移動を始めた。
それに着いていくと暫くしてやっと道らしい道が出てきた。
「ここがウルレキア街道です。さあ、北はこっちです。」
このウルレキア街道は、あたり一面の草原にちょっと道を整備しただけの道で、街道という言葉に、少し疑問を覚えるような道だ。
やがて野生動物がしっかりと住めるようなそこそこ大きい林が見えてきた。
「このあたりでは盗賊が多いので気をつけてくださいね」
「わかった」
すると俺たちの台詞を聞いていたかのようにタイミング良く、盗賊らしき人が少し離れた所に出てきた。
「ぐへへ、ここを通りたければ金全部出しな!」
テンプレートまったくその通りなんの捻りもない敵が出てきた。後ろを振り返ってら何故かそこにも数人の盗賊がいた。回り込まれていたようだ。
「よし。俺の実力見せてやんよ」
そう大きく啖呵を切った。
私事ですが今日誕生日でした