毘売の憧憬
駄文です。
注意して下さい。
月代 毘売は天上界を統べる王の娘である。
髪は腰まで伸ばされた長髪の烏羽色、陶磁器のように白く透き通った肌、柳の葉を連想させる整った眉、強い意志を秘めた一双の明眸、花弁のように愛らしくも可憐な唇。
光り輝く美しい満月さえも霞んでしまう少女の美貌は、この世の者とは思えない程に秀でており、絶世の美女と世間から謳われる毘売だが、困った事に天上界に生きる者として禁忌とされている地上界に対して憧れの情を抱いていた。
切っ掛けは彼女の世話をする女官が、うっかり口を滑らせて地上界の話をしてしまったのが原因である。
天上界にはない自然、地上界に生きる人々が持つ特有の感情、興味をそそられる話。
好奇心旺盛の毘売が地上界に、地上に生きる人間を憧憬するのは必然であった。
そして、現在。
毘売は己が野望を果たす為、地上界の話をした女官を問い詰めていた。
「何故、地上界に降りては駄目なのでしょうか?」
「毘売様、恐れながら申しますと彼の地は、穢らわしい心を持つ者や醜い心を持つ者が住まう地であります。そんな地にどうして、毘売様を行かせる事ができましょうか?」
間髪いれず淡々とした声で問いを返した女官は、意志の強い瞳で毘売を射抜くように睥睨した。
うっ、と言葉が詰まる毘売だが諦めきれない気持ちが勝るのか、論破するべく思慮するが、中々言葉出てこないらしく、口を閉じて沈黙してしまった。
すると、二人の攻防を横から見ていたもう一人の女官が意地悪そうな顔をして口を開く。
「まあ、事の発端は君が口を滑らせてしまった事だけどね」
「姉さんは黙っててください。それに毘売様に余計な入れ知恵したのは姉さんの方でしょう?私の知らない所で地上界の話を沢山していたそうじゃないですか?」
姉と呼ばれた女官は堪えきれていない笑い声を洩らし、そんな姿を見た女官はご立腹と言った表情をして笑い続ける女官を睨みつけるが、睥睨しても無意味だと分かると盛大な溜息を洩らした。
「全く。ほら、姉さんも笑っていないで毘売様を説得してください」
「僕は毘売様が地上界に降りても良いと思うけどな〜」
「なっ!?」
「そうですよね!」
妹の女官は驚愕した表情をして姉の女官を見つめ、毘売は喜々とした表情で姉の女官に詰め寄るが、二人の動揺とは対照的に姉の女官は、先程のような穏やかな笑みと打って変わって、罪人に刑罰を宣告する裁判官のような冷酷な瞳を宿し毘売に問うた。
「うん。でもね、毘売様は地上界で何がしたいの?もし、安易な発想で行きたいと言ってるなら、其れは止めておいた方が良いよ。貴方様は天上界を統べる王の娘なのですから」
「そうですね、私は地上界に降りて天上界にないものを見て回りたいの。それで、私がこの目で見てきた素晴らしい風景や出来事や御話を絵や文字に残して、天上界にある歪んだ地上界への感情を払拭する。だから、私は地上界に降りたい」
恋する乙女のように頬を淡紅色に染める毘売を見た姉の女官は、安心したような笑みを浮かべて何度も頷く。
だが、妹の女官は姉の女官とは対照的に冷めた瞳で毘売を見つめていた。
その瞳には、地上界への嫌悪感と奇妙奇天烈な思考を有する毘売への困惑が窺える。
「うんうん、毘売様なりの考えがあるなら一安心だ。まあ、それでも月代様の説得は協力しませんけどね」
「そんなぁ…」
予想外の言葉に毘売は悲痛な声を出して落胆する。そんな彼女に妹の女官は顔に手を当てながら盛大に溜息を溢し、姉の女官は上品に笑い続けた。
因みに姉妹の女官達には、名前がありませんが、姉の女官だけモデルとなった人物はいます。
それは、type mo…おっと、誰か来たようだ。




