月影の怪盗と騎士団長
十二歳のリゼットは、肩を揺さぶられて目を覚ました。驚いて声を出そうとすると、母は唇の前に人差し指を立てた。いつもなら寝台のそばに侍女がいる時間だったが、今夜は誰もいない。
燭台さえ持たずにやってきた母は寝間着の上から薄い上着を羽織っただけで、長い髪もほどけたままだった。廊下の遠くで、何かが倒れた。続いて、男の怒鳴り声がした。リゼットは寝台の上で身を固くした。
「お母様……?」
「静かに。起きられる?」
母は囁くように尋ねた。リゼットが頷くと、母はその手を強く握った。
「行くわよ。足音を立てないで」
母は笑わなかった。それが怖かった。手を引かれて廊下へ出る。普段なら夜でも灯りが絶えない屋敷なのに、いくつもの燭台が消えていた。
階下から足音が響き、誰かが短く叫んだ。母が足を速める。向かった先は、母の衣装部屋だった。扉を閉めると、母はリゼットの手を離し、鏡台の前へ駆け寄った。
そこには七つのアクセサリーが並べられていた。青い石の髪飾り、真珠の耳飾り、翡翠の指輪、銀の腕輪、黒曜石のブローチ、琥珀の指輪。そして、母が一番大切にしていた赤い石の首飾り。
どれもリゼットには見覚えがある。以前、母が七つを円形に並べて、不思議な映像を見せてくれたことがあった。そこに映っていたのは、赤ん坊だった頃のリゼットだ。父に抱かれ、泣き、母が隣で笑っていた。
『これはね、大切なものを忘れないための宝石なの』
そう教えてくれた。七つ揃った状態で起動すると、七つが同じ場所にある間の光景を記録し、あとから映し出すことができる。母は震える指で七つを台座へ置いた。
「お母様、何をしてるの?」
「覚えておいて。七つは、必ず一緒に使うの」
母の答えに、リゼットは続けて尋ねた。
「今、使うの?」
「ええ」
赤い首飾りの留め具へ指を添える。小さな音がして、七つの石が淡く光った。母はそれを確かめると、今度は鏡台の横へ移動した。
壁の装飾に指を入れる。見慣れた壁の一部が開いた。奥に、人ひとりがようやく座れるほどの空間がある。
「入って」
「嫌」
リゼットは首を振った。
「お母様も一緒に入るなら入る」
「お母様は行かなくちゃいけないの」
リゼットが問い返す。
「どこに?」
「お父様のところ」
それでもリゼットは食い下がった。
「じゃあ私も行く」
「駄目」
母が膝をつき、両肩をつかんだ。声が震えていた。
「リゼット。よく聞いて。ここに隠れていなさい。絶対に出てきては駄目」
「でも……」
母はリゼットの両肩をつかんだまま、言い聞かせる。
「何が聞こえても、誰が呼んでも、お母様の声が聞こえても出てきては駄目よ」
「怖い」
「うん。お母様も怖いわ」
母は初めて、怖くないとは言わなかった。
「だったら一緒にいて」
「ごめんね」
抱きしめられた。いつもと同じ母の匂いがした。リゼットは上着をつかんだ。
「嫌。行かないで」
「リゼット」
「嫌!」
母はしばらく何も言わなかった。やがて身体を離し、リゼットの頬を撫でた。
「あなたが大好きよ」
「私も。だから――」
「生きて」
母はリゼットを隠し部屋へ押し入れた。
「お母様!」
「約束して。朝になるまで出ないって」
「嫌!」
「リゼット。お願い」
叱る声ではなかった。泣いている声だった。リゼットは泣きながら頷いた。
「……約束する」
「ありがとう」
母が笑った。それが、リゼットが直接見た母の最後の顔になった。扉が閉まる。暗闇。
すぐに外で何かが動く音がして、隠し扉の前に家具でも置かれたのか、それきり光は入らなくなった。
リゼットは膝を抱えた。外へ出てはいけない。母と約束した。しばらくすると、衣装部屋の扉が乱暴に開いた。知らない男の声。何人もいる。
何を話しているのかは聞き取れなかった。物が壊れる。母の声がした。リゼットは立ち上がりかけたが、母との約束を思い出し、慌てて座り直して両手で耳を塞いだ。それでも音は聞こえた。
父の声もした。短い叫びと大きな音が続き、誰かの泣き声まで聞こえてくる。それが自分だと気づくまで、少しかかった。
どれほど時間が経ったのか分からない。やがて何も聞こえなくなった。母が呼びに来るかもしれない。
けれど、母は言った。自分の声が聞こえても出るな、と。だから待った。暗い場所で、ひたすら朝を待った。いつの間にか眠っていたらしい。
目を覚ましても暗かった。それでも屋敷の外から鳥の声が聞こえた。朝だ。約束を守った。リゼットは隠し扉を押した。
動かない。何度も押すと、外側で何かが倒れ、細い隙間ができた。身体をねじ込んで外へ出る。
「お母様?」
返事はなかった。衣装部屋はめちゃくちゃだった。鏡は割れ、引き出しは開けられ、服が床へ散らばっている。
七つのアクセサリーを置いていた台座だけが、鏡台の上に残されていた。七つとも、なくなっていた。
「お母様?」
廊下へ出る。そこから先のことを、リゼットは長い間うまく思い出せなかった。ただ、母は二度と返事をしなかった。
父も。家族の誰も。そして七つのアクセサリーも、その夜を境に消えた。
◇
七年後。
「見つけた」
リゼットは金庫の中にある青い髪飾りを見て、小さく息を吐いた。母の《宵の星》――七つのうち、四つ目だ。
裏返すと、七つ並んだ小さな月の刻印があり、その四番目だけに点がある。間違いない。リゼットは髪飾りを懐へ入れた。
金庫には金貨も宝石も入っているが、そちらには触れない。今夜忍び込んだローデン伯爵が、七年前の襲撃に関わった一人だということは調べてある。
母のアクセサリーを所有しているから犯人だと決めつけたわけではない。リゼットは何年もかけて、一人ずつ調べた。襲撃の直後に不自然な金を得た者。ヴァレリー家の使用人と接触していた者。
あの夜、王都にいたはずなのに所在の記録を消した者。そして、母のアクセサリーを人目につかない場所で所有している者。
最初の一人を突き止めるまでに、数年かかった。二人目からは早かった。彼らは互いにつながっていたからだ。
世間は、そんなリゼットを怪盗ノクターンと呼んでいる。本人は一度もそう名乗ったことがない。予告状も出さない。金品も盗まない。母のものを取り戻しているだけだ。
とはいえ、他人の屋敷へ忍び込んで金庫を開けている以上、騎士団に説明して理解してもらえるとも思っていなかった。
金庫を閉めたところで、廊下から足音がした。足音は一人分で、迷いなくこちらへ近づいてくる。
(伯爵は夜会のはず)
窓へ向かう。しかし、先に扉が開いた。入ってきた男と目が合った。黒い騎士服。腰には剣を佩き、胸元には銀章と青い飾緒がある。リゼットは顔をしかめた。
「……騎士団長」
「ご存じでしたか」
レオン・アルヴェールは扉を閉めた。
「有名人だから」
「光栄です」
リゼットはレオンを見返した。
「握手でもする?」
「その前に、右手を見せてもらえます?」
「嫌」
「でしょうね」
レオンは笑った。新聞ではもう少し堅そうな男に見えたのだが、実物は違うらしい。
「ここ、ローデン伯爵の私室ですよ」
「知ってる」
「招待されました?」
「窓から」
「それは招待とは言いません」
「変わった家なのよ」
「なるほど」
レオンは金庫へ視線を向けた。
「何を取りました?」
「何も」
レオンはリゼットの懐へ視線を向けた。
「今、懐に入れたでしょう」
「見てたの?」
「扉を開ける前から」
「趣味が悪い」
「泥棒に言われるとは」
リゼットは窓の留め金を外した。
「待ちなさい」
「嫌よ」
レオンは逃がすつもりがないらしい。
「まだ話の途中です」
「私は終わった」
「こちらは始まったばかりなんですが」
レオンが一歩近づく。リゼットは窓枠へ足をかけた。
「そこ二階ですよ」
「知ってる」
「怪我しますよ」
「心配してくれるの?」
「目の前で容疑者に死なれると後始末が面倒なので」
「優しいのかと思った」
「残念でした」
「本当にね」
リゼットは飛んだ。庭木の太い枝へ着地し、そのまま地面へ降りる。上からレオンが顔を出した。
「待て!」
「待つ泥棒がいる?」
「次は捕まえます!」
「頑張って!」
リゼットは夜の庭を走り抜けた。
◇
翌日の昼。宝飾工房で銀の指輪を磨いていたリゼットは、扉の鈴が鳴っても顔を上げなかった。
「いらっしゃいませ。修理でしたら受付票に――」
「王弟殿下の勲章を受け取りに来ました」
聞き覚えのある声だった。顔を上げると、昨日の騎士団長が制服姿で立っていた。腰には剣もある。間違いない。
(なんで来るのよ)
王弟の勲章を預かっているのは知っている。だが騎士団長本人が受け取りに来るとは聞いていない。
「少々お待ちください」
リゼットは平静を装い、奥へ向かった。昨夜は顔の半分を布で隠していた。髪もまとめて帽子へ入れていた。分かるはずがない。勲章を持って戻る。
「留め具を交換しています。銀部分の歪みも修正しました。石には触れていません」
「あなたが?」
「はい」
「器用ですね」
「仕事ですから」
「お名前は?」
「受け取りに必要ですか?」
「個人的に、聞いておきたいだけです」
「でしたら必要ありません」
「手厳しいな」
レオンは笑った。昨夜と同じ笑い方だ。
「確認をお願いします」
「任せます」
リゼットはその返事に顔を上げた。
「初対面の職人を信用するんですか?」
リゼットが尋ねると、レオンは勲章ではなく彼女の顔を見た。
「初対面?」
昨夜のことを言っているのか。リゼットは表情を変えないようにして、レオンを見返す。
「違いました?」
探るような問いに、リゼットは肩をすくめた。
「……さあ」
レオンはしばらく彼女を見てから、わずかに笑った。
「どこかで会った気がする」
「騎士団長ともなると、いろいろな女性にそう言うんですね」
「口説いてませんよ」
「それなら安心しました」
「安心、というのは?」
「今は仕事中なので、余計なことは考えません」
工房の主人が奥から戻ってきた。
「おお、アルヴェール団長。リゼット、終わったか?」
「はい」
名前を呼ばれた。レオンが繰り返す。
「リゼット」
名前を確かめるように呼ばれ、リゼットはレオンを見る。
「何です?」
「名前、覚えました」
「忘れてください」
「難しい注文だな」
勲章を受け取ったレオンは、帰り際に一度振り返った。
「また来ます」
「修理品があるときに」
「修理品がなくても、来てはいけませんか?」
「来ないでください」
「残念」
扉が閉まる。リゼットは大きく息を吐いた。
◇
数日後、レオンが工房を訪れたとき、リゼットは古い銀のロケットを修復していた。石も入っていない。銀そのものにも大した値打ちはなく、蝶番は曲がり、表面には細かな傷が残っている。
「ずいぶん古い品ですね」
「勝手に覗かないで」
「すみません」
そう言いながら、レオンは作業台から離れない。
「新品を買った方が安そうですが」
「そうね」
「では、なぜ修理を?」
「依頼人のお母様の形見だから」
リゼットは細い工具で蝶番を調整した。傷をすべて消してしまわないよう、磨く場所も選ぶ。
「高価かどうかなんて関係ないでしょう。返ってこない人の物なら、なおさら」
レオンが黙った。
「何?」
「いえ」
「言いたいことがあるなら言って」
「あなたらしいと思っただけです」
「私の何を知ってるのよ」
「まだ、あまり知りません」
レオンは少し笑った。
「だから知りたいんでしょうね」
「今日は、何のお仕事で?」
「今日は修理品を持ってきてません」
「じゃあ帰って」
「はいはい」
素直に扉へ向かったので、リゼットは逆に調子を狂わされた。レオンは扉を開けてから振り返る。
「そのロケット、直るといいですね」
「直すわよ。そのために預かったんだから」
「そうでした」
今度はからかうことなく、レオンは帰っていった。
◇
それからレオンは、本当に何度も工房へ来た。最初は騎士団の徽章。次は剣帯の飾り金具。その次は「部下が壊した」と言って銀の留め具を持ってきた。
「騎士団って、そんなに物を壊すの?」
「荒っぽい連中が多いので」
リゼットは手元の作業を続けたまま、レオンへ返す。
「団長が一番壊してるんじゃない?」
「失礼な」
「毎週来てるでしょう」
「仕事です」
「暇なのね」
「怪盗を追っているので忙しいですよ」
リゼットは作業台から顔を上げなかった。
「捕まらないの?」
「なかなか」
リゼットは手を動かしたまま尋ねる。
「騎士団長なのに?」
「傷つくなあ」
「どんな怪盗?」
「女性です」
レオンの答えに、リゼットは興味のないふりをした。
「へえ」
「相変わらず、口の悪い人だ」
「お気の毒」
レオンは気にした様子もなく、怪盗の評を続ける。
「人の話を聞かない」
「大変ね」
「あと、俺を馬鹿にする」
「それはあなたに原因があるんじゃない?」
「やっぱりそう思います?」
レオンは笑った。リゼットは銀細工を磨きながら、彼が何を知っているのか考える。四つ目を盗んでから一か月。五つ目の所在はすでに分かっていた。
今度の持ち主はベランジェ男爵。母の真珠の耳飾りを、妻に与えている。男爵も七年前の事件関係者だ。今夜、夫妻は王宮の舞踏会へ出る。屋敷へ入るなら今日しかない。
「ところで、ベランジェ男爵夫人の真珠の耳飾りを知っています?」
レオンは何気ない調子で話題を変えた。磨いていた布が止まった。
「どうして私に聞くの」
「宝飾職人だから」
「王都中の宝石を知ってるわけじゃない」
「そうですか」
「何なの?」
「怪盗ノクターンが次に狙うんじゃないかと思って」
リゼットは顔を上げた。
「どうして?」
「今まで盗まれた四つを調べました」
四つ。レオンは同一犯だと判断している。
「共通点があるんです。盗まれた家から、他の金品はなくなっていない」
「変な泥棒ね」
「でしょう?」
「欲がないんじゃない?」
「それだけならいいんですが」
レオンが机へ肘をついた。
「盗まれた四つは、意匠がよく似ている」
まずい。
「同じ職人が作ったとか?」
「古い宝石商に聞きました。七つ一組の品だったそうです」
リゼットは黙った。
「残り三つ」
「それで?」
「次にどこへ現れるのか、楽しみです」
「仕事を楽しんでるのね」
「ええ」
レオンが立ち上がる。
「今夜は家にいた方がいいですよ」
「どうして?」
「雨が降るかもしれない」
窓の外は快晴だった。
「天気予報では晴れよ」
「外れることもあります」
「変なの」
「では、また」
扉が閉まった。リゼットはしばらく動かなかった。
「……性格悪い」
聞こえるようには言わなかった。
◇
その夜、雨は降らなかった。代わりにベランジェ男爵邸には、騎士がいた。リゼットは屋根の上から庭を見下ろした。
「やっぱり」
先回りされている。レオンが騎士を配置したのだろう。帰るという選択肢もあった。だが、耳飾りが今夜も屋敷にある保証はない。
リゼットは予定を変更し、使用人用の搬入口へ回った。十五分後、男爵夫人の寝室に入る。化粧台の奥。小さな宝石箱を開けると、真珠の耳飾りがあった。裏側には五番目の印。
「五つ目」
「やっぱり、それか」
背後から声がした。リゼットは目を閉じた。
「……こんばんは」
「こんばんは」
振り返る。レオンが扉の前に立っている。
「待ち伏せなんて趣味が悪い」
「泥棒に言われるの、二回目です」
「覚えてるの?」
「あなたとの会話は大体」
「気持ち悪い」
「ひどいな」
リゼットは耳飾りを懐へ入れた。
「返してください」
「嫌」
レオンは予想していたように返した。
「でしょうね」
「じゃあ、さようなら」
「待て」
窓へ走る。レオンが先に動いた。腕をつかまれる。リゼットは身体をひねって抜けようとする。
「離して!」
「嫌です」
リゼットは腕を振りほどこうとしながら叫んだ。
「痴漢!」
「泥棒!」
「騎士団長!」
「それは悪口じゃない!」
リゼットはレオンの足を踏んだ。
「痛っ!」
力が緩んだ隙に腕を抜き、廊下へ出る。階段には騎士がいたため、反対へ走って客間へ入り、窓を開けた。
「また窓か!」
「便利なのよ!」
「ここ三階ですよ!」
「前も聞いた!」
用意していた縄を窓枠へ引っかける。外套をつかまれた。
「今度こそ捕まえた」
「残念」
留め具を外す。外套だけをレオンの手に残し、窓から降りた。庭へ着地する。見上げると、レオンが外套を持って窓からこちらを見ていた。
「ノクターン!」
「何?」
「次は逃がさない!」
「三回目も楽しみにしてる!」
走りながら、リゼットは笑った。なぜ笑っているのか、自分でも分からなかった。
◇
六つ目を取り戻したのは、それから二か月後だった。持ち主は年老いた元商人だった。侵入した寝室で、男は起きていた。
「ヴァレリーの娘か」
その一言で、リゼットは短剣へ手をかけた。
「どうして分かったの」
「それを集めている人間が他にいるとは思えん」
老人の枕元には、母の銀の腕輪があった。
「あなたは、あの夜にいた?」
「いた」
初めてだった。これまでの持ち主は、捕まえて問い詰めても何も話さなかった。
「誰が家族を殺したの」
「知ってどうする」
リゼットは問いを重ねた。
「答えて」
「復讐するのか?」
「答えて!」
老人は長く息を吐いた。
「私は屋敷の外にいた。逃げる者がいれば捕らえろと言われていた」
「誰に?」
「名前を言えば、お前は行く」
「行くわ」
「死ぬぞ」
「七年前から、そのために生きてきた」
老人がリゼットを見る。
「……七つ目は、オスカー・メルヴィンが持っている」
知っている名前だった。王国宰相だ。
「オスカーが黒幕?」
「本人に聞け」
「七つを分けたのも?」
「そうだ。あの夜、屋敷から持ち出した。七人に一つずつ持たせた」
「どうして?」
「知らん。捨てろとも売れとも言われなかった。ただ、持っていろと」
老人は腕輪を手に取った。
「私はずっと怖かった。捨てれば殺される気がした」
差し出される。
「持っていけ」
リゼットは受け取った。
「なぜ今さら話すの」
「もう長くない」
「そんな理由で?」
「そんな理由だ」
老人は目を閉じた。
「人間が最後に喋る理由なんて、大抵くだらない」
リゼットは腕輪を握った。これで六つ。あと一つだ。
◇
「行くな」
翌日の夕方。工房の裏口を出たところで、レオンが待っていた。
「何の話?」
「オスカー・メルヴィン」
リゼットは黙った。
「昨日、元商人の屋敷へ入りましたね」
「証拠は?」
「ありません」
リゼットは即座に返した。
「じゃあ人違い」
「右手」
「何?」
「見せて」
「嫌」
「昨日、窓から降りるとき擦ったでしょう」
反射的に袖口を押さえた。レオンがため息をつく。
「分かりやすいな」
「……いつから?」
「何が?」
「私が、ノクターンだって」
「二回目の翌日には」
「嘘」
「本当です」
「なんで捕まえなかったの」
「最初は確信がなかった。その後は、何を集めているのか知りたくなった」
「騎士団長が職務放棄?」
「頭が痛いので言わないでください」
「じゃあ今から逮捕する?」
両手を差し出す。レオンは見下ろした。
「それより聞きたい」
「何を」
「七つ揃えると、何が起きる?」
リゼットはしばらく黙った。もう隠す必要もないのかもしれない。
「過去が見られる」
「……過去?」
聞き返したレオンに、リゼットは説明した。
「七つ一緒に使うと、記録した光景をあとから映せるの」
「だから集めてたのか」
「お母様は、あの夜に七つを起動した」
「見たんですか?」
「台座が残ってた。七つは全部なくなってたけど」
レオンから笑みが消えた。
「あなたは、あの夜を見ていない」
「隠されてたから」
「だから七つを集めて、自分で確かめるつもりだった」
「そうよ」
「七年?」
「そう」
「……馬鹿だな」
リゼットは睨んだ。
「何よ」
「一人で七年も抱えて、最後まで一人で行くつもりなのが」
「あなたには関係ない」
「あります」
「どうして」
「好きだから」
リゼットは固まった。
「……は?」
「聞こえませんでした?」
「聞こえたけど、意味が分からない」
「俺も困ってるんですよ」
レオンは額を押さえた。
「怪盗を追ってたはずなのに、昼間はその怪盗の工房へ通ってる。正体が同じだと分かったあとなんて最悪です」
「最悪って何よ」
「騎士団長としては最悪でしょう」
「じゃあ来なきゃいいじゃない」
「会いたかったので」
「……馬鹿じゃないの」
「それは否定できません」
リゼットは目を逸らした。
「とにかく私は行く」
「駄目です」
「止めても行く」
「知ってます」
「なら退いて」
「一人では行かせない」
「騎士団長が怪盗に協力するの?」
「協力とは言ってません。あなたを止めに行く」
「同じじゃない」
「全然違います」
「邪魔したら蹴るわよ」
「それも知ってます」
「しつこい」
「あなたが無茶をするからでしょう」
「レオン――」
続きは言えなかった。レオンが一歩近づき、唇を重ねたからだ。一瞬だった。離れた彼を、リゼットは呆然と見た。
「……何したの」
「口を塞ぎました」
リゼットはレオンを睨んだ。
「普通は手で塞ぐでしょう!」
「噛まれそうなので」
「キスなら噛まないと思った?」
「そこまでは考えてなかった」
リゼットは彼の足を踏んだ。
「痛い!」
「最低!」
「すみません」
「謝るならするな!」
「それは難しい」
「なんでよ!」
「したかったので」
「もっと最低!」
リゼットは顔を背けた。腹が立つ。勝手すぎる。それなのに、嫌悪だけならもっと簡単に突き飛ばせたはずだと思ってしまう自分にも腹が立った。
「……もう知らない」
「行くんですか?」
「行く」
「では俺も」
「勝手にすれば!」
「はい」
本当に腹の立つ男だった。
◇
オスカー・メルヴィンの離宮へ入ったのは、その夜だった。リゼットは一人で二階の書斎へ忍び込んだ。レオンとは別行動である。ついてくると言った男を撒いたつもりはない。
ただ、怪盗には怪盗の入り方がある。書斎へ入った瞬間、罠だと分かった。机の上。何も隠さず、赤い石の首飾りが置かれている。母の《夜明けの雫》――七つ目だ。
「待っていたよ」
背後で扉が閉まった。オスカーがいた。六十を過ぎた男。新聞で何度も見た顔。その両脇には護衛がいる。
「私を?」
「六つも集めれば、最後にここへ来る」
「あなたが七つを分けたのね」
「そうだ」
リゼットは問いを重ねた。
「どうして?」
「戦利品だ」
「戦利品?」
「あの女が大切にしていた宝飾品だった。だから持ち出し、あの夜に働いた者たちへ分けた。それだけだ」
「七つ一組だってことは?」
「知っていた。だが、何のための品かまでは知らん」
「……本当に、それだけ?」
「宝石にどんな意味がある」
オスカーが首飾りを持ち上げる。
「まさか十二歳の子供が生き残って、七年もかけて集め直すとは思わなかった」
「私が生きてるって知らなかったの?」
「知ったのは数年前だ」
「それでも放っておいた」
「何もできないと思っていたからな」
リゼットは短剣を抜いた。
「返して」
「これが欲しいか?」
「母のものよ」
「なら取りに来い」
護衛が剣を抜く。リゼットは床を蹴って一人目の剣を避ける。二人目が横から来たため、机を蹴って方向を変えた。それでもオスカーまでは届かず、剣先が頬をかすめた。
「っ……!」
「だから一人で行くなと言ったでしょう!」
窓が開いた。レオンが入ってくる。
「窓から!?」
「誰かさんの真似です!」
「二階よ!」
「知ってます!」
護衛の一人がレオンへ向かう。剣がぶつかる。
「遅い!」
「あなたが勝手に先へ入ったんでしょう!」
「騎士団長ならもっと早く来て!」
「無茶を言う!」
リゼットはもう一人をかわし、机へ飛びついてオスカーの腕をつかんだ。伸ばした指が首飾りへ届き、そのまま奪い取る。
「取った!」
「下がれ!」
レオンの声。リゼットは床を転がる。レオンが護衛の剣を弾き飛ばした。残った男も距離を取る。
「リゼット!」
「少し時間を稼いで!」
「何をする気です?」
「七つ揃える!」
「ここで!?」
「今しかない!」
「本当に無茶苦茶だな!」
「知ってる!」
リゼットは革袋を開き、幼い頃に見た順番で一つずつ床へ置いた。髪飾り、耳飾り、二つの指輪、腕輪、ブローチ。そして最後に、赤い首飾り。七つすべてが揃ったが、何も起きない。
「……どうして」
母の動きを思い出す。赤い首飾りの留め具にある小さな突起を押すと、七つの石が光った。書斎の中に七年前の母の衣装部屋が半透明に重なり、リゼットは息を止める。
母がいる。七つを台座へ並べている。赤い首飾りへ触れる。光る。記録が始まった。そして、幼いリゼットを隠し部屋へ入れる。
『お母様!』
十二歳の自分の声。
『約束して。朝になるまで出ないって』
『嫌!』
『リゼット』
『……約束する』
『ありがとう』
母が扉を閉める。その直後、衣装部屋へ父が入ってきた。
『隠したか』
『ええ』
『君も逃げろ』
『あなたを置いて?』
『時間がない――』
扉が破られた。男たちが入ってくる。リゼットは立ち尽くした。見たくない。けれど、これを見るために七年生きてきた。
父が倒れる。母が叫ぶ。知らない男たち。その後ろから、若いオスカーが入ってきた。リゼットは現在のオスカーを見る。本人だった。
『どこへやった』
若いオスカーが母へ尋ねる。
『何を?』
『娘だ』
『知らないわ』
『嘘をつくな』
母は答えない。男たちは鏡台や衣装棚を探す。隠し扉の前には大きな棚が倒されていた。母がやったのだ。
『もういい』
オスカーが言った。
『火をつけろ』
母が彼へ飛びかかる。しかし止められ、床へ倒される。そのあとを、リゼットは目を逸らさずに見た。母が動かなくなる。男たちは七つのアクセサリーを見つける。
『これは?』
『ヴァレリー夫人の宝飾品だろう。持っていけ』
一つずつ台座から外される。映像が乱れる。最後に赤い首飾りが外される直前、床に倒れた母がわずかに顔を動かした。
『リゼット……』
小さな声。
『生きて』
赤い首飾りが持ち上げられる。映像が消えた。リゼットは動けなかった。七年間、聞きたかった。
母が最後に何をしたのか。自分を呼んだのか。助けを求めたのか。隠し部屋から出なかった自分を恨んだのか。違った。母は最後まで、自分に生きろと言った。
「……リゼット」
レオンの声がした。リゼットは七つを拾った。それからオスカーを見る。
「聞きたいことがある」
護衛たちは動かなかった。映像を見ていた。オスカーだけが顔をしかめている。
「何だ」
「どうして?」
「何が」
リゼットはオスカーを見据えた。
「どうして、私の家族は殺されなきゃいけなかったの?」
オスカーは答えない。
「何をしたの? お父様があなたに何かした? お母様が何か知ってた? 家に何かあった?」
「……」
「答えて!」
七年間。ずっと理由があると思っていた。一家全員を殺すほどの何か。自分だけが知らない秘密。
オスカーはしばらく黙り、やがて吐き捨てるように言った。
「お前の母親が、私を選ばなかった」
リゼットは意味が分からなかった。
「……何?」
「若い頃、何度も誘った。贈り物もした。妻にするとまで言った。それなのに、あの女は私を相手にしなかった」
「それで?」
「別の男と結婚した」
リゼットはもう一度尋ねた。
「それで?」
「私を笑った」
「お母様が?」
オスカーは声を荒らげた。
「断ったんだ! 私よりあんな男を選んだ!」
リゼットは呆然とした。本当に、それだけだった。
「そんなことで?」
「そんなこと?」
「そんなことで、家族を殺したの?」
「私がどれほど――」
「知らない」
リゼットは遮った。
「そんなの、知らない」
リゼットは短剣を抜いた。オスカーは黙っている。今なら殺せる。
七年間、家族を奪った人間を見つけたら自分の手で殺すと決め、この瞬間を想像してきた。リゼットが一歩、さらにもう一歩と近づいて短剣を持ち上げても、レオンは止めなかった。オスカーがこちらを見る。
「殺せ」
その言葉で、リゼットは止まった。
「お前はそのために生きてきたんだろう」
確かにそうだった。母のアクセサリーを探し、犯人を見つけ、復讐する。それが終わったあと、自分が何をするのか考えたことはなかった。
けれど、母が最後に残した言葉を知った。復讐して、ではない。仇を討って、でもない。生きて。たったそれだけだ。リゼットは短剣を下ろした。
「嫌」
オスカーが眉を寄せる。
「何?」
「あなたのために殺人者になるなんて嫌」
「臆病者が」
「そうかもね」
リゼットは短剣を鞘へ戻した。
「でも、お母様は私に生きろって言ったから」
レオンが剣を向ける。
「オスカー・メルヴィン。七年前のヴァレリー家襲撃について、騎士団で話を聞かせてもらいます」
「こんな魔法の映像だけで私を裁けると思うか?」
「それを決めるのは俺じゃない」
レオンは笑わなかった。
「ただ、あなたの護衛二人も今の映像と会話を見ています。俺もね」
オスカーが護衛を見る。二人とも目を逸らした。
「それに、俺は騎士団長です。七年前の一家惨殺事件について、当時の関係者本人からこれだけ聞けば、何もしないわけにはいかない」
「貴様――」
「話は騎士団で」
レオンは護衛へ目を向けた。
「あなたたちも剣を置いてください。今夜の件について事情を聞きます」
一人が先に剣を置いた。もう一人も続く。オスカーは何も言わなくなった。
◇
離宮を出たとき、空が白み始めていた。リゼットは庭の石段へ座った。七つのアクセサリーは膝の上にある。全部戻ってきた。七年かかった。
「大丈夫?」
レオンが隣へ来て、リゼットの顔をのぞき込んだ。
「大丈夫」
「それ、信用できない言葉ですね」
リゼットは膝の上のアクセサリーを指先で撫でた。
「お母様も言ってた」
レオンは困ったようにリゼットを見る。
「では、なおさら」
リゼットは少し笑った。泣いたあとだったので、うまく笑えたかは分からない。レオンはそれ以上、大丈夫かとは聞かなかった。
「レオン。私、捕まる?」
レオンはすぐには答えなかった。
「難しい質問ですね」
「不法侵入、何件だっけ」
「少なくとも七件」
数まで把握しているらしい。リゼットは思わず顔を上げた。
「数えてたの?」
「騎士団長なので」
リゼットは膝の上のアクセサリーへ視線を戻した。
「盗んだのは全部お母様のものよ」
「そこは確認します。元の所有者があなたの母上で、現在の所持者が襲撃時に持ち去ったのなら、単純な窃盗として扱える話でもない」
少しだけ期待したが、まだ問題は残っている。
「不法侵入は?」
「それは消えません」
「やっぱり」
「事情聴取には来てもらいます」
リゼットは七つのアクセサリーを膝から落とさないように抱え直した。素直についていくと答えるのも癪だった。
「逃げたら?」
「追います」
「捕まえられる?」
レオンが眉を寄せる。
「今まで何回逃げられたと思ってるんです?」
「四回?」
「腹立つな」
そう言いながら、レオンが隣へ座った。肩が触れない程度の距離を空けている。
「でも、もうノクターンをやる理由はないでしょう」
「そうね」
「怪盗は引退?」
「たぶん」
レオンは息を吐いた。安心したらしい。
「安心しました」
「寂しい?」
「少し」
思わぬ返事に、リゼットは隣を見る。
「どっちよ」
「昼間のあなたに会う口実が減るので」
「普通に来ればいいじゃない」
「前は来るなと言われました」
そんなことを言った記憶はあるような、ないような。リゼットは目を逸らす。
「……そうだっけ」
「言いました」
「忘れた」
「都合がいいな」
レオンが笑う。いつもの顔だった。その横顔を見ているうちに、リゼットは昨夜のことを思い出した。
「そういえば、昨日のあれ」
「昨日?」
とぼけるつもりなら許さない。リゼットはレオンを見据える。
「忘れたとは言わせない」
「ああ」
レオンが少しだけ気まずそうな顔をした。リゼットは逃げ道を塞ぐようにはっきり言う。
「キス」
「……すみませんでした」
「本当に反省してる?」
「勝手にしたことは」
妙な言い方だった。
「勝手にしたことは?」
「キスしたこと自体は、あまり」
リゼットは呆れてレオンを睨む。
「最低」
「知ってます」
「じゃあ」
リゼットは立ち上がった。レオンも顔を上げる。
「何です?」
「少し黙って」
「まだ何も――」
リゼットはレオンの襟をつかんで引き寄せ、自分から唇を重ねた。ほんの一瞬で離れる。さっきまでよく喋っていたレオンが、今度は本当に黙った。
「……何をするんです?」
「口を塞いだの」
「俺、何も言ってませんでしたが」
「これから言いそうだったから」
レオンは納得していないらしい。
「普通は手で塞ぐんじゃ?」
「噛みそうだから」
「キスなら噛まないと思った?」
「そこまでは考えてなかった」
レオンはしばらく黙った。それから片手で顔を覆う。
「……参ったな」
その反応を見て、リゼットは少し気分がよくなった。
「私の勝ち」
「何の勝負ですか」
「知らない」
リゼットは七つのアクセサリーを抱え、石段から離れる。
「帰る」
「待ってください」
呼び止められて振り返った。
「事情聴取?」
「それもありますが」
「何?」
レオンは笑わずにリゼットを見ていた。
「今のは、どういう意味です?」
「口を塞いだだけ」
「それ以外は?」
「ない」
即答しても、レオンは引き下がらない。
「本当に?」
「しつこい」
「重要なので」
リゼットは呆れて肩をすくめた。
「騎士団長って暇なの?」
「好きな女性にキスされた男として聞いてます」
「知らない」
「リゼット」
「知らないってば」
これ以上答える気はない。リゼットが歩き出すと、レオンも当然のようについてきた。
「では食事は?」
「何が?」
「事情聴取が終わったあと」
リゼットは歩いたままレオンを見る。
「どうして」
「口説きます」
あまりにも堂々と言うので、リゼットは呆れた。
「堂々と言うのね」
「もう隠す理由がないので」
「私、犯罪者かもしれないけど」
「頭が痛いところです」
リゼットは隣を歩く騎士団長を見上げる。
「騎士団長なのに?」
「本当にね」
本人も困っているらしい。それがおかしくて、リゼットは笑った。
「食事くらいならいいわよ」
レオンが足を止める。
「本当に?」
「嫌ならいい」
「行きます」
あまりの即答に、リゼットも足を止めた。
「即答」
「逃げられる前に約束を取ります」
「怪盗を信用してないの?」
「まったく」
リゼットは眉をひそめる。
「失礼ね」
「では約束してください」
「分かった。行く」
「よし」
満足そうな返事に、リゼットは釘を刺しておくことにした。
「ただし、私を捕まえたつもりにならないで」
レオンは一瞬考え、それから笑った。
「それは今後の努力次第ですね」
「頑張って、騎士団長様」
「ええ。今度こそ」
七年前、母に隠された夜から、リゼットはずっと同じ場所にいるような気がしていた。朝になって隠し部屋から出ても、本当の意味ではあの暗闇から出られていなかったのかもしれない。
けれど今は、母が最後に何を願ったのか知っている。復讐のためでも、誰かの恨みのためでもなく、自分のために生きること。屋敷の向こうから朝日が差した。
リゼットは七つのアクセサリーを抱え直し、歩き出す。隣には、頼んでもいないのについてくる騎士団長がいる。
「ところでリゼット。工房には今後も行っていいですか?」
「仕事があるなら」
レオンは少し間を置いた。
「なくても?」
「考える」
「前進しましたね」
「うるさい」
レオンはまだ笑っている。
「また口を塞ぎます?」
リゼットは足を止めた。レオンも止まる。
「調子に乗らないで。次やったら蹴る」
「昨日も蹴られました」
それを覚えているなら話は早い。
「じゃあ学習して」
「努力します」
「そこは努力じゃなくて、やめるの」
朝の王都へ向かって歩く。七年間追い続けた夜は、ようやく終わった。これから何をするのかは、まだ決めていない。怪盗を続ける理由もなくなった。
復讐だけを考えていた自分には、明日の予定さえ空白だった。けれど、まずは騎士団で事情聴取を受けなければならない。そのあとには食事の約束まである。少なくとも今日一日は忙しそうだ。
それでいい。何も決まっていない明日を迎えるのは少し怖いが、今度は隠れて待つ必要はない。リゼットは朝日の中へ、自分の足で歩いていった。
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