静かな月夜、一夜のふたごねこ
奇跡の出会いがあったあの日からずいぶんと経ったある日の出来事。
※自身の作品をGrok(AI)に取り込み、そこから生成しています。
ここはケモノみの森。
ヨモヨミの森で今日もひとりの猫耳の少女が暮らしている。
彼女の名はもこ。
――
あの日からどれくらいの季節が流れたのだろう。
流星群の夜に会ったふたごねこ。私の大切な人、ニコ。
夢で会うことはもうほとんどなくなった。
だけど、湖のほとりで撮った一枚のシャシンは、今もわたしの部屋の隅に飾ってある。
「今日も大好きだよ、ニコ」
毎朝そう声をかけてから森へ出る。
それが、いつしか習慣になっていた。
今夜は月がとても近い。
森の空気が少しだけ甘い匂いをまとっている。
わたしはなぜか、今日はイメージャの湖へ行かないといけないって思っていた。
湖面は静かに月を映している。
星を独り占めした夜とは違う、やわらかな光。
座り込んで水面を眺めているとふわりと風が吹いた。
「……もこ?」
聞き覚えのある声。
振り返るとそこにいた。
ニコ。
少しだけ背が伸びて髪が少し長くなって、でも瞳の色はあの夜のまま。
「……嘘」
わたしは立ち上がれなくて、ただその場に座ったまま手を伸ばした。
ニコも同じようにゆっくりと膝をついて、わたしの手に触れてくる。
温かい。
ちゃんと温かい。
「また会えたね」
ニコが小さな声で笑う。
「どうして……?」
「わかんない。ただ、今夜はもこのこと、すごく考えてたんだ。そしたら湖の匂いがした」
わたしも同じだった。
理由なんていらないのかもしれない。
しばらくただ手を握っていた。
風が二人の猫耳をくすぐる。
「ヒロカさんは?」
「元気だよ。でも最近、にこがぼーっとしてるって怒られる。もこのこと考えてるからかも」
「わたしも、森のみんなに『また湖に行ってる』ってからかわれる」
二人で、くすっと笑った。
「ねぇあのシャシンって、まだある?」
「うん。毎日見てる」
「わたしも。ひろかの家の棚にちゃんと飾ってあるんだ」
「……え?」
わたしは思わず顔を上げた。
「え……でも、あの時……ニコはシャシンを受け取る前に、帰っちゃったよね? わたし、渡せなかったのに」
ニコは少し困ったように、でも嬉しそうに目を細めた。
「うん。でもね目が覚めたら、枕元にそれが置いてあったんだ。なんでかはわからないけど……にこもびっくりしたよ」
「……そう、だったんだ」
不思議で、でもなんだか救われたような気持ちになる。
わたしたちはちゃんと繋がっていたんだ。
月の光が湖面をゆっくりと揺らす。
言葉はいらない時間もあった。
でも、少しだけ話したかった。
「ねえ、ニコ」
「ん?」
「また、何十年も会えなくても……」
ニコは何も言わずにそっと立ち上がった。
そして後ろからわたしを優しく抱きしめてくる。
温かい胸が、背中にぴったりと寄り添う。
猫耳がふわりとわたしの髪に触れた。
「会えるよ。だってわたしたち、ふたごねこだもん」
「……うん」
涙が出そうになるのをこらえた。
泣いたらすぐに溶けてしまいそうで。
ニコの尻尾がゆっくりとわたしの尻尾に絡まる。
ほんの少しだけ、ぎゅっと。
「もこ」
「なに?」
「大好きだよ」
「わたしも……大好き」
それだけ言ってニコは静かに目を閉じた。
月の光が少しずつ薄れていくように、ニコの体温も、抱きしめる腕の感触も、ゆるやかに遠のいていく。
最後に聞こえたのはとても小さな声。
「また、湖で」
――
気がつくとわたしはひとりで湖のほとりに座っていた。
月はさっきと同じ場所にある。
でも、背中に残る微かな温もりは、確かに本物だった。
わたしは立ち上がり、森の方へ歩き出す。
風が優しく背中を押してくれる。
「また会おうね、ニコ」
家に帰ったらまたあのシャシンに話しかけよう。
わたしは静かにヨモヨミの森の家へと足を向けた。




