表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら白ねこでした。お菓子魔法で異世界の心を癒やします。――もふもふカフェから始まる甘くてやさしい異世界生活――  作者: 明石竜


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/28

第二十三章 失われた王国のレシピ

 砂漠の王国を後にして、さらに南へ進んだ。

 地図によれば、このあたりに古代の都市の遺跡があるという。

「何か面白いものが見つかるかもしれない」

レイが言う。

「古代のお菓子レシピとか?」

「そういう話が、砂漠の商人たちの間に伝わっているらしい」

遺跡は、砂漠のはずれにあった。

砂に半分埋もれた石造りの建物が、いくつも連なっている。

「大きい……」

かつて、ここには都市があったのだ。

慎重に遺跡の中を進む。

「ここ、何かある」

レイが一か所で立ち止まった。

石壁に、絵が刻まれている。

人々が集まって何かを食べている絵。笑顔で、楽しそうに。

「これ、お菓子を食べている場面じゃないですか?」

「そうかもしれないな」

絵の周囲に、細かい文字が刻まれていた。

ノエルから学んだ古代文字の知識が、少し役立つ。

「これは……材料の名前と、作り方みたいです」

「レシピか?」

「ええ。砂漠の植物と、果実と……これは蜂蜜の意味かな。それに、あの砂漠にしか育たない特殊な草が入っています」

「作れるか?」

「材料が揃えば、できるかもしれない」

翌日、材料を探して砂漠へ出た。

砂漠の植物は、見かけによらず豊かだった。

サボテンの実、砂漠の蜂蜜、夜露を集める葉、不思議な香りのする草。

材料を全て集めるのに三日かかった。

野営しながら、レイと火を囲む夜。

「ねえ、レイ」

「何だ?」

「この旅、後悔してますか?」

「何でそんなことを聞く」

「騎士を辞めて、各地を転々として、私のついでみたいな旅で……」

「ついでじゃないぞ」

レイが笑う。

「オレは、お前の旅に連れて行ってもらっている。それが本望だ」

「本当に?」

「ああ。俺は長いこと、何のために戦えばいいのかわからなかった。お前と旅をするようになって、初めて、守りたいものができた気がする」

「守りたいもの?」

「お前のお菓子が作り出す、あの笑顔だ。初めて食べた人の、あの表情。オレは、あれを守りたい」

星空を見上げる。

「私も、同じです。あの笑顔が見たくて、続けてきた」

「だから、オレたちは合うんだな」

レイが手を伸ばし、私の手を握る。

温かい。

「これからも、一緒にいますか?」

「当然だろ。聞くな、そんなこと」

「でも、聞きたかったんです」

「一緒にいる。ずっと」

砂漠の夜は、静かで美しかった。

材料が揃い、調理を始める。

古代のレシピ通りに作ると、不思議なことが起きた。

菓子が出来上がっていく過程で、かすかに光を発し始めたのだ。

「これは……」

「魔法か?」

「古代のお菓子魔法……まだ生きてたんです」

完成した菓子は、七色に輝いていた。

「食べてみます」

一口。

「これは……」

不思議な感覚だった。

懐かしい。何かを思い出しそうで、でも思い出せない。

前世の記憶?

いや、もっと遠い、もっと古いもの。

「人の記憶の奥底にある、原始の喜びみたいな……」

「何だそれ」

「上手く説明できないんですが、なんか、すごく根源的な幸せを感じる、というか」

レイも食べてみた。

「……確かに。変な感じだ。でも、温かい」

「この菓子が作られた時代の人たちも、こんな気持ちで食べてたんでしょうか」

「そうかもしれないな」

遺跡の夜、私たちはこの発見を記録した。

古代の菓子レシピ、失われた王国の甘味文化。

「これを研究すれば、お菓子魔法の歴史が、もっとわかるかもしれない」

「ノエルに見せたら、喜ぶだろうな」

「手紙を出しましょう。この記録を送ります」

翌朝、私は再びその古代の菓子を少し作り、二人で食べた。

「昨夜より、味が変わった気がする」

レイが不思議そうに言う。

「そうですね。同じ材料で作ったのに」

「なぜだろう」

「状態が違うから、じゃないでしょうか」

「状態?」

「昨夜は驚いていたから、その気持ちが菓子に混じっていたかもしれない。今朝は落ち着いている。心が違えば、味も変わる。それがお菓子魔法の不思議です」

「なるほど……」

レイは、空を見上げた。

「ココ、オレは剣一筋で生きてきた。心で戦う、なんて考えたことがなかった。でも、お前を見ていると、心の力が一番強いんじゃないかと思えてくる」

「剣も心です。武器を持つ手の後ろには、必ず何かを守ろうとする心がある」

「……そうだな」

「レイさんも、ずっと心で戦ってきたんですよ。それが今も、私を守ってくれている」

彼は少し照れたように、視線を逸らした。

「お前、最近口が上手くなったな」

「旅のおかげです」

砂漠の遺跡で見つけた古代の知恵。

それは、過去と現在を繋ぐ橋のようだった。

お菓子は、時代を超える。

言葉が失われても、文明が滅んでも、甘さへの記憶は残る。

「やっぱり、お菓子って素晴らしいな」

レイが呟く。

「そうでしょう?」

「お前を笑ったりしなくてよかった。お菓子魔法なんてと思ってた時期もあったけど」

「あったんですか、そんな時期が」

「正直にな。でも、今は心から思う。お菓子は、魔法だ」

「ありがとうございます」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ