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龍は私を守護してくれる ~神秘のお守りと、幼馴染との再会から始まる冒険譚  作者: 無海シロー
第二章 伝説 ~天地仁左編

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62/64

62.時の果てに見たものは

 凍てつくようなヒリヒリした感覚を味わいながら彼らは光に包まれる。

 三人は見知らぬ場所に立っていた。

 キョロキョロと三人は辺りを見回している。一瞬でピラミッドの中からこうして開けた場所に出たのである。唐突過ぎて思考が追い付かない。

 天音も『天』も早田健三も見当たらなかった。

 光が晴れると、頭上には青空が広がっている。

 周囲に人の気配はない。

「ここはどこだ?」一刀は呟く。

 それは彩と恵の気持ちも代弁していた。

 建物は見当たらない。荒れ野だ。一刀の右側には雑木林が広がり、左には百メートルほどの急峻な小山がある。

 足元は獣道だ。

「私たちが湖面に入ったのは夜だったよね?」

「腕時計の時間は一時間半ほどしかたっていません」大きめの不釣り合いな多機能時計を見ながら彩は言う。

 あのエネルギー暴走の中でも狂わないし壊れない優れものだ。

「スマホは……なんかGPSがおかしくなっている?」ポケットから取り出したスマホを見て恵は言う。

 位置情報が示されていないし、通話も出来なかった。電源は入っても通信機能は完全に失われている。

「壊れた訳ではありませんよね?」

「たぶんな」手元の通信機を見ながら一刀は頷く。

 彩は目印なるものが何か無いか周囲を見回していて、山の頂を見た瞬間、目を見張った。

「恵さん!」

「は、はい。なんでしょう?」

「カメラ機能はどう使えばいいのでしょう?」

 操作しようとして手が震えていた。

「この周辺を映せばいいんですか?」

 恵はスマホで動画撮影を始めている。ちゃんと撮れているようだ。平田が磁気嵐でも高熱の中でも機能は失われないと豪語していただけはある。

「お、お願いします……」

「何か気が付いたのか?」

「わ、分かりません。ですが確かめるために必要かもしれません」

「確かめる?」

「あの山に登ってみれば分かるかもしれません」

 彩は震える指先が小山の頂にある横にせり出した松をさしていた。

「まあ登ってみれば周囲を見渡せるだろうし、どこにいるか分かるかもしれないな」

 見晴らしは良さそうだった。

 登山道があるかどうか知らないが。

『やっぱりこうなってしまいましたか』

 三人の頭上で声がした。

「天音様?」空を見上げながら彩は問い掛ける。

『すいません。私は天です。取り急ぎあなた方を元の場所に戻しますね』

「どっかに飛ばされたってことか? ここはどこなんだよ」

『探すのに苦労しました。私のエネルギーも残り少ないのでギリギリです』

「天音様はどこへ?」

「早田健三はどうなった?」

『簡単な説明しかできません。時間もないので』天の声は弱々しいものになっていく。『天音は本来の時間へと至りました。早田健三は消滅しています』

「本来の時間ってなに?」恵は質問しているが無視された。

『朧一刀。あの光が見えますか? 見えるなら無双霞で切って下さい。時間がない。戻れなくなる前に、早く!』

「分かった」

 命令されるのはむかつくが、それでも大局は見失わない。

『恵さんも彩も一刀さんから離れないでください』

「行くぞ」

「で、ですが……」彩は躊躇した。

 立ち去りがたい未練がこの場にはありすぎた。

『あなたも先へ進みなさい。わたしも生きます。これが天音からの託けです』

「彩さん」恵が彩の手を引く。

「ババア、生きているのは今なんだそ、過去なんぞ思い出にしとけ! この先がまだまだ続くんだからな。生きろって言われたんだろうが」

 一刀は叫ぶように言う。

 その言葉を聞くと「胸に染みますね」彩は流れだしていた涙を拭く。

 一刀は恵と彩がすぐ近くにいるのを確認すると、指示された明滅しかけている光点を思いっ切り叩き斬った。

『新たな時間の流れの中で会いましょう』

 そんな声が聞こえたような気がする。

 三人は再び白い闇に包まれた。今度は肌を刺すようなものではなく温かな光だった。


 気が付くと、そこは夜だった。

 三人のスマートフォンが一斉に音を立てている。

 立て続けにメッセージが届き、着信音が響いていた。

「戻ってきた?」

 スマホを見るとGPS機能も復活している。

 瀬羅湖でキャンプしていた場所に近い。

「心配かけたみたいね」恵はメッセージを見ながら言う。

「これで終わりでしょうか?」

 彩は呟く。

 どこかしら遠くを見つめているようだった。

「終わりにしてくれ」

 あちこち切り傷だらけだったし、青あざが出来ていた。服もボロボロである。

 一歩間違えば浮浪者だ。

「まだ分からねぇところはあるけれど、それでもだいたいの謎は解けたし、早田健三の野望も打ち砕いた」

 これ以上、調べることは難しいだろう。

「天音さんも正しい時間の流れに戻ったって言っていましたものね」恵も頷く。

「そこがどこだか分からねぇけれどな」一刀は言う。「まあそういうのは平田さんに任せようぜ」

「そうだね。私たちには分からない理論もありそうだし」

「そういうことだ」一刀は砂地に座り込む。「それで納得した方がいいんじゃないかババアもさ」

「相変わらず一刀クンは彩さんに失礼だ」

「年寄りなのは本当だろうが」

「そうですね」彩は振り返ると微笑んでいた。「今は温かなお茶が飲みたいですね。私たちも先へ進みましょうか」

 もう一度天を見上げ、彩は祈った。

 幸多からんことを。


 こうして天地仁左を巡る一連の事件は終息を迎えるのだった。


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