52.月の光に導かれ
零と早田健三の聞き込み調査は日が暮れて周辺に人気が無くなるまで続いた。
バンガローやキャンプ場にまで足を延ばして聞き込みをしたが、高校生の恵と一刀は年齢こそ訊ねられることはなかったが、胡散臭げな眼で見られてしまっている。
出雲や彩も収穫はない。
早田健三を見たことがあると答えた人は別荘地区に何人かいたが、親しくしていた人物はいなかったし、目撃されていただけだった。
「疲れたー」
一刀は愚痴をこぼしつつ背伸びする。
四人はキャンプ場に移動して、湖岸近くの区画で焚火をしながら夕食を取っていた。
彩と恵が簡単なキャンプ料理を披露する。
二人とも料理がうまく、疲れが癒されたような気がしてしまう。
「零ちゃんの情報は何も出ませんでしたね」
焚火の火で串に刺したマシュマロを焼きながら恵は言う。
「どこに行ってしまわれたのでしょう?」
彩は星空を見上げながら言う。
今日は満月で月が本当に丸かった。
「別荘の様子からするとここにいたことは確かだ」出雲は言う。
「もう『月』と接触した後かも知れないな」
ぶっきら棒に一刀は言う。
「瀬羅湖から移動して、羅帝山に向かわれているのかもしれませんね」
「羅帝山にも天地仁左の何かあるのかよ?」一刀が半眼で彩を見る。
「それは初耳だ」出雲は興味津々に彩を見ている。
「天地仁左様関連になるのかは分かりませんが、山の頂が光ったという噂があります」
「噴火ですか?」恵はギョッとする。
「羅帝山は断層が付近にあって隆起したものだ」出雲は言う。「瀬羅湖もカルデラではないからな」
「良かった」恵は胸を撫で下ろす。
もしも活火山だったら、もし何かあった時には火山噴火が起きるのではと危惧していたのである。
「噴火でないとしたら、なんで光ったとか伝承が残っているんだ?」
「天地仁左様が歴史に登場した時代と一致しているからです」
彩は一刀を見つめ言う。
「あそこで何か天地仁左がやっていたってことなのかよ?」
「今にして思うと、その可能性もあるかと」
自信なさげに彩は言った。
「これからどうしよう?」恵は呟いた。
「調査班の報告次第だな」出雲は言う。
「なにも出てこなかったら?」
「出てくるだろう?」一刀は言う。「わざわざ情報を流しているんだ。何かしらの思惑があるはずだ」
「そうであってほしいな。捜査のかく乱だとしたら、俺たちは振り回され過ぎているからな」
出雲は頷く。
「私は楽しいですよ。合宿や小旅行みたいで」恵が言う。
「そういう話をしているんじゃないんだがな」
一刀は話がかみ合わない恵に呆れる。
「そうですね。私もこう言った経験がないので新鮮ですよ」
「暢気すぎるだろう。基地が襲撃されているんだぞ。何かしら成果が欲しいだろうに」
「一刀君は気負い過ぎ」
「気負ってなんかいないぞ。素直な感想を言っただけだ」
「恵さん、そう言うことにしておきましょう」
彩は隣に座る恵の手を取り名がに言うのだった。
「分からないことだらけで困ります。出雲さんにもご迷惑をお掛けします」
「現場を任されていますけど、俺は大葉と違って面倒見は良くないですよ」
「確かに大場さんは引率の先生みたいになっていましたね」
「まあ、あいつは心配性なだけでしょう」
「出雲さんはいつも後ろに控えてくれていますから、安心していられますよ」
「それならよかったですよ」
出雲は微笑んだ。
元々、一刀を含めこの新人三人の捜査能力はまだあてに出来ない。
それならばなぜと思われそうだが、出雲は彩の知識が必要だと感じたし、一刀と恵が組むことで事件の方がこの二人かいずれかに寄ってくるのではないかと考えたからだ。
特に一刀は当たりを引きやすいと出雲は考えてしまう。
勘でしかないが。




