表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍は私を守護してくれる ~神秘のお守りと、幼馴染との再会から始まる冒険譚  作者: 無海シロー
第二章 伝説 ~天地仁左編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

51/64

51.悪魔の実験室

「当麻の里や岩鋼山の時もですが、こうして乗り物によって移動するのは新鮮ですね」

 移ろいゆく景色を眺めながら彩は楽し気に恵に言う。

 二人は後部座席に並んで座っている。

「ワクワクするものがありますね」

 子供の頃の凄惨な思い出があったが、それでも友達や仲間と移動していると心が弾むものがあるのも事実だった。

 季節は晩秋に入ろうとしている。

 紅葉に彩られたが山々が目に眩しい。

 今年は雨が少なくこの日も晴天の日だった。

 瀬羅湖へは主要幹線道路を使い取材車両に偽装した特殊車両で現地へと向かう。出雲の運転によって。

 襲撃にも合わずに特殊車両は湖畔に点在する別荘地に着いていた。

「どれっすか?」

 ハンディタイプのカメラを構えながら一刀は出雲に聞く。

「奥のあのデカい奴だ」

 出雲は湖畔にせり出したバルコニーを持つ二階建ての豪邸を示す。

「リッチだな」一刀は率直な感想を漏らす。「大企業の研究者って儲かるんか?」

「そうかもしれんな」素っ気なく出雲は答えている。

「一刀さんはあのような家に住みたいのですか?」

「そうなんだね」恵は納得したように頷いている。「私たちの地区って古い家が多いものね」

「そう言うんじゃねぇよ。オレは住みたいなんてひと言も言ってねぇぞ」

「私は洋館に憧れたことあるよ」

「オレは稼ぎの話をしていたんだが」

 相変わらず恵との会話はズレると思ってしまう。

 彩は生温かい目で見ているようだし、出雲の肩は小刻みに揺れていた。

「で、これからどうすんのさ?」

「直接突入する。あそこが今も使われていないことは調査済みだ。管理会社から鍵も入手済みだ」

 別荘の脇に車を停めると、鍵を見せて出雲は言う。

「居たらどうするんだよ」

「その時は強硬捜査だよ」

「脳筋のやることだよ」

 一刀が言うと出雲は突っ込んでくる。

「何かアイディアがあるなら聞くが?」

「ないです……」

 素直に一刀は答えていた。

 一刀は周囲を警戒しながら車を降りる。

「どうした一刀? 何か感じたか?」

 一刀は長めの三脚入れを肩にかけている。その中には無双霞が入っていた。

「そう言うんじゃないけれど、なんか変な空気を感じてさ」

「そうなんだ」

 不思議そうな顔で恵は見ている。

「何も感じないお前が羨ましいよ」

「ありがとう」

 相変わらずかみ合わない。

「それじゃあ行くぞ」

 出雲が先頭を歩き別荘へと向かうと玄関口に立つ。

 一応チャイムを鳴らしているのは律儀だった。

 返答がないのと別荘からも人のいる気配が無いのを確認して鍵を開けて突入している。

「なにこれ?」

 今に入ると部屋は散乱している。

 衣類だけでなく書類らしいものとか物色されたように散らばっていた。

「女の子の服がある」恵は驚いたように言う。「あっ、この服はあの時、零ちゃんが買っていた服に似ている」

「勝手に触るな」一刀が窘める。

「こうして土足で上がり込んでいる時点で、科学捜査に支障をきたしているような気がします」彩は言う。

 一刀はため息をつく。そういう突っ込みはいらない。

「もしかすると零さんはここに住んでいたのかもしれませんね」

「ここが潜伏先?」恵は考え込む。

「そうだとしたらここからJESを襲撃したってこと?」

「分からんが、とにかくここで何がおこなわれていたのか、調べてみる必要があるな。この荒らされ具合も気に掛かる」

 さらに異常が無いか調べてみることにする。

 その上で出雲は二階を恵と彩に任せ、一刀とともに一階部分を調べていく。

「了解」


 二階は使われていたような形跡はなかった。

 五つ部屋があったが、生活感はまるでない。部屋は整然としていた。タンスなどを開けて調べてみるもほとんど何もなく収穫となるものはなかった。

 それを踏まえて一階に二人が戻り、出雲らの姿を探すとキッチンとリビングのある部屋で彼らは待っていた。

「どうですか? 何か分かりましたか?」

「地下室への入口があった」

「収納庫とかじゃなくて?」

 恵が覗き込むと階段が闇の奥まで続いている。

「これから侵入するが、二人はどうする?」

「行きます」恵が言うと彩もニッコリと笑い頷いている。

「一刀、先頭を任せるぞ。俺はしんがりを行くから」

 出雲にそう言われて一刀は無双霞を腰に差してライトをつける。

 その先には扉が見えた。五十段ほどあり意外と深い。

 階段は一人が進めるくらいの幅しかない。

 罠の危険もあるので一刀は刀を抜いて入口に辿り着くと、誘うように自然に扉は開くのだった。

 一刀が侵入すると天井が明るくともされる。

 それとともに実験施設が浮かび上がる。

「何だよこれ?」

 何かが浮かぶ培養液が十基以上並び、明るくても異様な雰囲気を醸し出している。

 出雲は通信が出来ることを確認すると支部へと映像を送信し始める。

 平田の指示により、システムへと端末を繋げた。

「何の実験をしていたんだよ?」

「平田さんの話だと、データからは改人の研究をここで行っていたようだ」

「なんであの施設でやっていないんだよ?」

「ここで秘密裏に早田健三も独自に研究を進めていたんじゃないか? 生命について」

「独自に行えるなんてどれだけ金を掛けているんだ?」

「そうだな。これだけの施設を個人的にというには無理がある。協力者が他にもいた可能性もあるな」

「スポンサーがいる?」

「FBトリガーとは別の組織が絡んでいるか?」

「そんなこと議論したくないな」

「一刀が言い出したんだろう?」

「実験内容が知りたいのに、これだけの施設を見ると不思議に思えてくるんですよ。だってそうじゃないですか。無から有を作れないようにこれだけの部屋を作るのに資金はいるし人の手は借りなければいけない。これだけの機材が秘密裏に誰にも知られずに持ち込めるわけもない。JESならすぐに分かりそうなものなのに、最近になって分かったって、どう考えてもおかしいじゃないですか?」

「そうだな」出雲は頷く。「平田さんの話しだと資金は表に出せないような犯罪組織からいただいていたみたいだ」

 そう言う資料が出てきたという。

「マネーロンダリングしていたり、詐欺グループから?」

「そういうこと。機材はFBトリガーから気付かれないようにくすねていたらしい」

「意外とせこいな」

「バレないんだから、凄いと思うよ。こういう犯罪っていつかばれるだろうって言われているじゃない」

「地下自体はかなり昔から掘られていたようだ」

「早田健三一人で?」

「そのようだな。まず掘削用の機械を造り、溶かしながら掘り進んで行ったようというのが、平田さんの説」

「何気にそれを理解する、平田さんも名探偵並みに凄くないですか?」

「平田さんだからな」出雲は肩を竦める。「早田健三は人工の生命が細胞から生み出せないか独自に研究していたのだろう。組織に隠れてな」

「利用するだけ利用して、お宝盗んだら、離反する気満々だったのかよ」

「そういうところだろうな」

「理由は分かりませんが、理想の人間を生み出したかったのかもしれませんね」

 彩は囁くように言う。

「例えそうだとしても、ここを放棄したんだろう? 目的が達成されたっていうのかよ」

「そうかもしれない」

「零ちゃんを手に入れたから?」

「そうでしょうね」彩は恵に頷く。「私には命を弄んでいるようにも思えますが」

「まったく分からん」一刀は言う。

「調査班がこちらに向かっている」出雲が言う。「彼らと交代したら、この周辺を聞き込みするぞ」

 早田健三や零がここにいる痕跡が無いか調べることにするのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ