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龍は私を守護してくれる ~神秘のお守りと、幼馴染との再会から始まる冒険譚  作者: 無海シロー
第二章 伝説 ~天地仁左編

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47.改人オイルダラー男

 先ず平田らによる情報戦と電子戦が行われることになる。

 FTBの目や耳を奪い、さらにはそこからコンピューターに侵入し敷地内全ての機能を掌握することが目的だった。

 サイバー攻撃によって敷地内への侵入を速やかに行えるようにし、建物内への突入もFTBに悟られることなく行えるようにする。

 難しいのはその先だという。

 メインコンピューターのガードは固いはずだ。相手に知られては突入班を危険にさらすことなる。

 最終的な目的はメインコンピューターをすべてハッキングし押さえること。

 そこからランネルドとのつながりを見出そうとする。

「証拠を見つけたら、警察に任せてそれで終わりにできるんじゃね?」一刀は言う。

「そう簡単に行かないだろう。彼らに扱えるような犯罪組織じゃない」

「向こうさんの反撃能力も相当のものだ。正体を暴かれて素直に捕まってくると思うか?」

「無理っすよね。言ってみただけです」

「彼らの持つ戦力は潰しておきたい」

「また変な改人さん、出てくるかな?」恵が訊ねてくる。

「期待しても良いんじゃないか」投げやりに一刀は言うのだった。

「期待なんかしていよ。むしろ何事もなく終わってほしい」

 棍を両手で握りしめて恵は言った。彩も同意している。

「合図だ」番場が声を掛ける。「行くぞ」

 バンがフログレンスバイオテクノロジー社ゲート前に止まると数秒後彼らを招き入れる様に重々しくゲートが開いていく。

 番場が守衛室へ行くと何事も無かったように戻って来るのだった。

 車は正面入口へと乗り付ける。

 セキュリティは解除されているのか自動ドアが開き彼らは無事社屋へと侵入を果たす。

 恵は動きやすい格好で来るように言われていたので、アンダーウェアの上にジャージを着て行こうかと思っていたら、見透かされた一刀に止められる。

「学校の生徒だとすぐにバレるだろうが」

 怒られたし、彩にも笑われる。

 濃い目の色のスウェットにジーンズ姿に落ち着く。

 一刀も彩もラフな格好だったが、番場と出雲はテンガロンハットを被り黒とこげ茶色の革ジャン姿だ。日中に訪問したら受付に場違いな目で見られていたことだろう。

 その受付もいないひっそりとしたロビーを足早に通り過ぎていく。

「うまく行きすぎて逆に怖くなるな」一刀は呟く。

「平田さんが事前にセキュリティに侵入してくれたおかげだ」出雲は言う。「感謝しろ」

「事前準備は大切ということだよ」大場が同意する。

「物語や映画などでは見たことがありますが」彩は感心したように言う。「凄いですね。私も勉強してみたいです」

 彩の暗躍するような笑みが想像できて一刀はげんなりする。

「ますます存在が怪しくなるから止めてくれ」

「格好いいよ」恵は嬉しそうだった。

「胡散臭さが増すだけだろうが」

 はしゃぐ恵に一刀は頭を抱えたくなる。


 なぜ人は秘密を地下に隠すのだろう?

 それは秘密基地への憧れだろうか?

 穴倉を作るのが面倒ではないだろうか?

 確かに根府屋や岩鋼山で地下施設を見ているが、簡単に作れるものではないだろう。

 欺瞞工作?

 地上に建物を建てればその外観だけで内部の状況は推測されやすいのは分かる。

 抜け穴や隠し部屋、秘密から得られる背徳感や冒険心。そういったものに憧憬の念を抱くのも分かる。子供の頃にヒーロー番組を見て憧れた頃が特にそうだったような気かする。

 秘密の基地は憧れだ。

 一刀自身、龍玄寺の山林に秘密の場所を作ったことがある。

 すぐに神玄住職にバレたが、それでも自分だけの秘密基地を作るのは楽しかった。

 だが「実際に探すとなると面倒だ」うんざりする。「作るのも面倒だよな」

「シェルターのように頑丈だし、それに目が届かないからな。確かに広げるのに労力は掛かるが」

「探すのが大変なんだよ」一刀は文句を言う。

 いくら技術が進歩しても、それを上回る様に欺瞞工作を仕掛けてきて、鼬ごっこだった。

「サクッと終わらせたいもの分かるが。敵も一刀のように単純じゃないんだよ」出雲が突っ込んでくる。

「オレはそんなに単純じゃないと思っていますが?」

「そうか?」大場も突っ込んできた。「分かりやすいぞ」

「ええ」彩も同意していた。

「そういう事にしておこう」

 一刀が何か言ってくる前に出雲は苦笑して場をまとめた。


 事務棟一階の制圧は簡単に終わる。

 研究棟も同様だった。夜間にもかかわらず残っていた人間は拘束されている。

 出雲の話ではここにいる研究者や事務員のほとんどは犯罪組織と無関係に雇用された人々だという。

 彼らは後から駆け付けたJES隊員によって聴取が取られることになっている。

 犯罪組織にどこまで関わっていたかはそこで判断されるだろう。

 二階も制圧が終わる。

 やはり地上部分にFBトリガーの痕跡はない。平田からの情報から社長室に地下へのエレベーターが存在しているらしい。

 すぐに隠し扉は見つかった。

 侵入口は他にない。

「さて鬼が出るか邪が出るか」


 番場と大場が先鋒でエレベーターに乗り込み下に下りる。

 十分後に何もなければ出雲ら四人がエレベーターで地下に向かうことになっていた。

 無事合流する。

 通路は二つに分かれている。

 番場はグループを二つに分けて行動することにした。ひとつは番場と大場、出雲。もうひとつは一刀、恵に彩だった。

「いいんですか?」

 大場はライトをかざしながら暗闇の中を進んで行く三人の背を見つめる。

「あの三人が新人なのは分かるけれどね。それでも前回の一件もあって息もあっていると僕は思うんだよ。出雲は?」

 番場は出雲に訊ねている。

「一刀は強いです。恵ちゃんと彩さんはの実力はよく分かりませんが、三人で乗り越えていることもあるから、大丈夫じゃないか」

 出雲は大場の肩を叩く。

「さて、僕たちも行こうじゃないか」番場は歩いていく。「何が出るか楽しみだ」


「なにも出なければいいね」恵は先頭でライトを左手に棍を右手に持って進んで行く。

 隊列は先頭に恵、彩を挟んでしんがりに一刀だった。

「無理だと思いますよ」彩はにこやかに言う。「一刀さんは当たりを引くと出雲さんも申しおりましたから」

「おい」小声で言ったつもりだが、意外と通路に響いていた。「俺はそんなに引きがいいわけじゃないぞ」

「それならばよろしいですね」

「くそっ」

 いくつかの扉を開いてみたが、訳の分からない実験器具とかが並んでいる部屋はあったが、無人で誰もいない。

「誰もいないのかな?」

「その方がいい」

 どこまで続く分からない通路を進んで行くと通路を照らしていたライトに足元が映しだされる。

 暗がりに目立たない黒い服を着た誰かがそこに立っていた。

「よくここまできたもんだ」大柄で腹だけがかなり出ている男がへらへらした口調で声を掛けてくる。「遊んでいかないか」

「その先へ行きたいだけだ。どけよ。おっさん」躊躇なく一刀は答えていた。

「いいじゃないか。遊んでいこうよ。ギャンブルとか好きでしょう」

「まだ未成年ですので」恵も即答だった。

「そういう情報はいいんだよ」一刀が突っ込む。

「えっ、ダメ?」

「そうですね。敵に情報を与えるのはどうかと」彩も残念そうだった。

「気を付けます」恵は彩に謝ってから棍棒を構える。「すいませんが通してください」

「いいじゃない遊んでいこうよ」

 中年の男はゆっくりと進んでくる。

 ライトを向けると顔が妙にてらてらしている。しかもガソリンのような臭いが微かにしてくる。

 その胸元目掛けて彩が手裏剣を放った。恵を思っての動きだった。

「えっ?」

 ワイシャツを刻んだだけでその手裏剣は滑るように後方に勢い無く転がってく。

「恵!」

 一刀が言うのと同時に恵は踏み込んでいき、その胸元に棍を突き立てた。

 しかし、手応えが無く棍棒の先が滑るように勢いがそがれてしまう。何が起きているのだろうか。

 その感触に違和感を覚える。

「なにやってんだ?」

「手応えがおかしいのよ。一刀君もやってみてよ」

「やりたくねぇ。そんなの切りたくない」一刀はキッパリとった。

「人を切りたくないのは分かりますけれど、あの身体は異常ですよ」彩は一刀に言った。

「だったら、恵、あれを使えよ」

 事態を悪化させるとも思わないまま一刀は恵に指示していた。

「まずいかも」彩は呟いたが遅かった。

 彼女はライトの光に顔がヌルッと光っていることに違和感を持っていた。油じみていたのである。

「分かった」

 さらに近づいてきた男に向かって、棍を突き立てると同時にスイッチを押した。

 輝きとともに雷撃が走る。

 その刹那、男の身体が燃え上がる。

「僕はオイルダラー男」

 身体が燃え上がりながら炎の奥で、その瞳が笑っていた。

「先にそれを言え!」

「聞かなかったお前が悪い。それより遊ぼうぜ」

 男は燃え上がりながら駆け寄ってくる。

「あぶねぇだろうが!」

 壁に張り付くように恵と彩は避けた。燃え盛る炎の熱さが伝わってきた。

 一刀は大上段に無双霞を構えると、肩口に向かって振り下ろした。斜めからだったのがいけなかった、刃が滑り切れない。

 オイルダラー男の動きが鈍かったのでなんとか交わしたが「熱いだろうが!」

 一刀は吠える。

 あの時の火傷の感覚が蘇ってくる。

「遊ぼうって言ってるだろう」

 意に介さず男は自分自身が燃えていても気にならないようだった。一刀に触れようと手を伸ばしてきた。

 彩が再びその背に向けて手裏剣を放つも刃が滑るようズレていき刺さることはない。

「どうすればいいのかな」

「無限に燃える訳では無いのでしょうが、いつ燃え尽きるか分かりません」

「ローソクみたいに終わりがあるの?」

 ウロウロと恵や一刀の間を行き来する燃える男を見ながら言う。

 男が纏う炎はさらに勢いを増しているような気がしてしまう。熱い。

「その前にこっちが焼かれてしまうかもしれませんね」冷静に彩は言う。

 男の周りだけだったのが、壁にまで届くほど炎が燃え上がっている。最終的には通路全体を覆い端から端まで燃え上がりそうな勢いだった。

 それがいつまで続くのか分からない。

「面倒臭いな」

 腰だめに一刀は居合の構えをとる。

「一刀君?」

「恵さん一刀さんにお任せしましょう」

 彩は恵をかばうようしながら言う。

 近づいてくるオイルダラー男は熱かったが、一刀は男が間合いに入ってくるまで、その力をため続けている。

 髪が焦げる臭いがする。

 その刹那に踏み込んで無双霞を抜いた。

 無双霞の刃は油で覆われコーティングされた肌を打ち破り胴から真っ二つに切り裂いていた。

 それはオイルダラー男の体内に蓄積されていた油をさらに燃え上がらせることになり周囲を焼き払う勢いだった。

「あっちー!」

 その炎を避けるように後退したが、腕で顔を覆っても髪の毛が少しばかり燃えて焦げ臭い臭いがした。

 オイルダラー男、恐るべし。


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