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龍は私を守護してくれる ~神秘のお守りと、幼馴染との再会から始まる冒険譚  作者: 無海シロー
第二章 伝説 ~天地仁左編

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46.それぞれの動き

 放課後に宇月恵が寄り道したのは実は人探しも目的に入っていた。

 まさか本当にすれ違うことになるとは当の本人も思ってもいなかったようだが……。

 その後、JESによってショッピングモールや周辺の防犯カメラなどのチェックが行われたが、早田と零の足取りは掴めなかった。周辺駐車場や地下鉄駅、バスプールなどに設置されたJESのカメラにも二人は写ってはいない。

 市内に潜伏している可能性は高かったが、彼らが捜査の網にかかることはなかった。


「零という名の女の子は何者だ?」

「早田健三さんを兄と呼んでいたとのこと。兄妹なのでは?」

「あいつは一人っ子だったはずだ。そう聞いている」

「隠し子とか?」

「出雲、それは行きすぎだ。平田さんと同級生だとしたら高校生くらいで生まれた子になってしまうぞ」

「異母兄弟とか、その線がないわけではないが、今のところありえない」

「回収できたグラスに付着していた唾液の成分、指紋などから見ても零とケンザンは遺伝子レベルでのつながりはなことは分かっている」

「彼女は外見や話をした印象からすると、同い年か年下のような感じがしました」

「もっとちゃんと話を聞いとけよ。学年とか、学校とかをよ」

「ごめん。そういう話をする前に写メを撮ってしまいました」

「向こうが素直に答えてくれたか分からないしな」

「ですよね。そうすると」

「彼女は人間なのか?」

「ロボットのようには見えませんでしたよ?」

「クローンにせよ人工受精にしても人かどうかの線引きは難しい」

「早田健三は後継者で間違いないでしょう」

「彼女が『天』?」

「そう見て間違いないと思います」

「やっぱり天音さんの名前から一文字取ったのかな?」

「さすがにそれは安直すぎるだろう」

「天音さんと似ていても?」

「天地仁左が絡んでいるんだ。零がそうだと見るべきだろう」

「天音の復活を考えていたんだろう?」

「やっぱり人造人間? クローン?」

「海嶺村の観音像の中に入っていたものが進化したとするなら、人工の生命と考えるべきなんだろうな」

「進化と言っていたよな。クローンとかそんなレベルじゃないんじゃないか?」

「恵の推測が正しかったんだとすると、アメーバのような単細胞生物から進化させたんだろう?」

「それが海嶺村から移動し、岩鋼山で人の姿を得た?」

「それを早田健三が引き継いだ?」

「私の友達が言っていたとおり、お嬢様のような浮世離れしていたところがありましたから、今の生活に馴染ませようとしたのかも?」

「あの子が秘宝?」

「早田健三の話からは『天』とは別に秘宝があると思われます。それに『天』は秘宝ではないと明言されています」

「そう言っていたよな。だが、秘宝じゃないものを押し付けられたって嬉しくないだろう。育成ゲームじゃないんだぞ」

「確かにケンザンは子育てを楽しむような男ではないな」

「その子が知っている何かがあるのか、その先があるかだな」

「萍、天の巻、そして『天』か」

「分からないことだらけですね」

「次に早田健三は、天地仁左が残した『月』と『陰』との接触を試みるでしょう」

「鍵となるのは歌鳥か」

「問題は歌鳥の頭部にある小さなブラックボックスだな」

「取り出して分析したいところだが、秘宝のありかへの案内人となるとそういう訳にもいかないか」

「狙ってくるでしょうか?」

「間違いない」

「どこか別の場所に移しますか?」

「ここはセキュリティ的にも厳重だ。移送途中に狙われる可能性もある」

「早田健三がどこにいるかも分かっていない」

「厄介ですね」

「先にもうひとつの問題を片付けた方がよさそうだな」

「FBトリガーですね」


 JESではフログレンスバイオテクノロジー社の内偵が急ピッチで行われる。

 早田健三の失踪を知った平田からの報告受けて番場が秘密裏に捜査を指示していたが、支部の総力を挙げての調査へと切り替わったのである。

 フログレンスバイオテクノロジー(FBT)社は五年程前に海外から南風市異流の工業団地に進出してきた製薬会社である。

 製薬会社としては中堅どころで、当たり障りのない会社でもあった。

 だが調査が進めば進むほど壁にぶち当たってしまう。

 表面上でしか実態が見えてこないのである。

「CEOだけじゃない。役員全てが架空の人物である可能性もある」

「グレーではあると思っていましたが、ここまでわざとらしく白く見せようとしていると、完全に真っ黒ですね」

「早田健三本人が行っていた通り、人体改造などが裏で行われているとみるべきだろう」

「阿義と繋がっていたのもFBTだろうな」

「確証はありませんがそう見て間違いはないでしょう」

「人体強化に狂戦士を生み出す薬か、厄介だな」

「それに改造人間もです」

「戦場での試験体となったのがキロウというか阿義達とはね」

「まだ出てくるでしょうか?」

「分からん。ランネルドとのつながりは?」

「見出せませんでしたが、ここまで来ると確実にあるとみるべきでしょう」

「ならば直接出向くしかあるまい」

 番場の号令の元、出撃準備が進められる。


 バンが一台JESのスロープを上っていく。

 ウィンカーを上げ、通りに出ると流れに乗り国道を北上する。

 十分程で現場に到着予定だった。

「調べるって言っていましたよね?」

 一刀は呆れながら番場に訊ねる。

「そのつもりだが?」

「どう見たって、これは殴り込みですよね。阿義道場に行く時みたいに。しかも今回は恵やばばあまでいる」

「淑女に向かって失礼だぞ」番場はニヒルに笑う。「向こうの戦力が判明しない以上、こちらは全戦力で向かうしかないだろう?」

「だから殴り込みじゃないかって言ってるんですよ!」

「我々は平和的解決を求めるが、向こうが非協力的であれば致し方ないだろう?」

「そりゃあそうですが、戦力過剰では?」

「確かに番場隊長一人だけでも事足りるかもしれないがな」

「用心に越したことはないということだ」

 番場は余裕の顔付きで言うのだった。

「なんかドキドキしてきました」

 恵の言葉に隣に座っていた彩が彼女の手を握る。

「試合の時だってそんなこと言ったことないだろうが」

 一刀はそんな恵を見て呟く。

「え~、緊張していたよ。それに一刀クンは二度目だけど私は初めてなんだよ~」

「オレより実践向きだ、こいつが前衛でも良いんじゃないですか?」

 恵を指さし番場に言う。

「そういう訳にも行くまい」

「男だろう」良い所を見せろと出雲は笑みを浮かべる。

「そんなの関係ないじゃん」

「フォーメーションは変えない」番場は宣言する。「俺と大場が最初に切り込む」

「それだけで済むじゃん」

「内部は広い。不明な部分も多いからな。二手に分かれる必要がある」

「それに今まで遭遇戦から見て大量の敵が出来る可能性もある」

 大場が頷く。

「また当たりを引いてくれよ」出雲は一刀の肩に手を置く。

「嫌です!」

 一刀は断固拒否するが、当人も大当たりを惹く可能性があったので、前に出たがらなかったのである。

「俺達が包囲されないよう、後方は恵ちゃんと彩さんにお任せします」

「頑張ります」

 恵は拳を握りしめ、彩は頷く。

「トーヤって奴は出てきますかね?」

「どうだろうな。奴は幹部だろう。末端に常駐しているようには思えんがな。一刀はどうだ?」

「刀は反応していないから、多分大丈夫かな」

「それで厄介ごとはひとつ減ったな」

「減っただけでなくなったりしていませんよ」

 あの可笑しな改造人間を生み出した組織である。もっとヤバい奴が出てきてもおかしくなかった。一刀は深いため息をつく。


 暗闇の中に一つの光点が明滅している。

「Oタイプ改造人間、完成しました」

「次こそは大丈夫であろうな」

「間違いなく萍を取り戻して見せましょう」

「ではH型改造人間とともに出撃させるのだ」

「目標はJES。なんとしても刀を取り戻して見せます」

「任せたぞ」

「FBトリガーの威信に変えても」


「さてこちらも動くとしますかね」

 萍を手に早田は立ち上がる。

「私も行く?」

 零は訊ねる。

「一人で大丈夫だよ」

「そう」

「戦力のほとんどがFBTに向かっている。侵入は容易いはずだ」

「恵さんに会いたかった」

「よほど気に行ったんだね」

「優しかった」

「彼女を傷つけることがなくてよかったよ」

「おとなしく留守番している」

「セキュリティ突破は容易いはずだ」

「がんばって」

「君のためにもね」

 早田健三は部屋をあとにする。


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